現地レポート:MSCプレチオーサのベネツィア発着・東地中海クルーズ
イタリア客船のMSCクルーズで地中海旅行
カジュアル客船の受け皿の広さで新しいヨーロッパ商品としての取扱いを
これまでのクルーズ販売は、クルーズの枠にとらわれすぎていたのではないだろうか。船旅だからこそ組むことができる旅程は、すでにそのエリアを訪れたことのあるリピーターにも、新鮮で魅力的なコースに映る。今回参加したMSCプレチオーサの東地中海クルーズでは、そんな旅行者の姿を目の当たりにした。イタリアのカジュアル客船であるMSCクルーズは幅広い客層に受け入れやすく、地中海の雰囲気にもあっている。4月に就航したアリタリア-イタリア航空(AZ)のベネツィア線との利便性もよく、きっかけの一つにもなりそうだ。
「地中海」がデスティネーションになる魅力
MSCクルーズのなかでも、今回体験したMSCプレチオーサ(13万9072トン)のベネツィア発着東地中海クルーズ7泊8日は、一番人気のクルーズだ。乗船したのは今シーズン初クルーズにもかかわらず、全1751キャビン(乗客定員4345名)は満室。特に今年は集客が好調で、すでに10月までほぼ満室なのだという。
その理由はMSCプレチオーサが2013年就航のMSC最新の客船であること。そしてベネツィアから東地中海沿岸を訪れるコースの良さにある。MSCクルーズでは各寄港地で多様なツアーを設定しており、バーリ(イタリア)では歴史ある市内観光のほか、イタリアツアーで人気のアルベロベッロや洞窟住居の町マテーラの両世界遺産へ行くツアーも用意。
カタコロン(ギリシャ)ではオリンピアに加え、オーガニック農園で伝統料理とワインの軽食にオリーブオイル、手作りジャムなど、ギリシャの太陽の恵みを受けた産物を試食し、遺跡だけでないビビットな印象も受けた。
次のイズミール(トルコ)では、世界最大級といわれるエフェソス遺跡でダイナミックな古代都市散策を楽しみ、文明の交差点・イスタンブール(トルコ)、では喧騒が取り巻く刺激を肌で体感。最後は、城壁が現代と隔てる箱庭のような中世の街・ドブロブニク(クロアチア)――。変化に富む広範なデスティネーションを日替わりで回るインパクトは、“目覚めたら次の街”クルーズならではの醍醐味だ。
同乗の日本人客約60人は、メディア系ツアーの参加者が多い。話を聞いた人は海外旅行のハードリピーターがほとんどだったが、「“地中海、アドリア海に行く”というのがよかった」「こんなコースの旅行をしたことがない」と、旅程そのものに惹かれたという動機が多かった。特にクルーズ初心者にその傾向が強く、「添乗員がいるからまったく不安はなかった」と、初クルーズに躊躇もしなかったという。
感想も「毎日のパッキングがなくて楽」というポジティブな内容で、なかでも定年退職後に年2回の海外旅行をしているという夫婦の「実は本当は毎回、ツアーの最後の方は体がつらくて観光内容をあまり覚えてなかった。しかし今回は体が楽で、最後まで楽しめる」という感想が印象的だった。
消費者のクルーズに対する心の垣根が低くなった今、一般的なツアーと同じ選択肢の一つとしてクルーズをデスティネーションパンフレットの中に組み込み、積極的に扱う時期に来ているのかもしれない。