日韓観光交流、官民連携で復調へ-JATAも取り組み積極化
日本と韓国の国交問題や原発の汚染水問題などが二国間の観光交流に影響を与える中、各国の観光関連団体などは9月、議論の場を設け、課題の解決に向かい動きを強めている。9月25日、東京商工会議所観光委員会と大韓商工会議所観光産業委員会は都内で懇談会を開催し、観光交流の活性化方策についての議論をおこない、観光交流宣言を署名した。
観光交流宣言の署名は今回が初めて。宣言では、両委員会が「観光、文化、産業などの相互理解を深め、関係をより緊密にし、両国における観光交流の一層の発展に努めることを宣言する」としている。
東京商工会議所観光委員長でジェイティービー(JTB)会長の佐々木隆氏は、冒頭「懇談会が両国にとって、観光や文化、産業などでの相互理解を深めることに寄与すると確信している。とりわけ民間でのこうした交流が将来にとって大きな手助けになる」と意義を強調。2014年に仁川で開催される第17回アジア競技大会、2018年の平昌冬季オリンピック、2020年の東京夏季オリンピックと3つの大きな大会が続くとし、2国間で成功に向かい協力していきたいとした。
また、大韓商工会議所観光産業委員長で大韓航空(KE)社長の智昌薫氏(※薫は旧字)は、「日韓関係がぎくしゃくし、その影響で民間レベルの協力が萎縮しているのは残念」とコメント。2国間の歴史問題や領土問題、放射線汚染水問題、北朝鮮の核問題などは観光業界が解決できる問題ではないとしながらも、「対岸の火事を見ている」ようなまま時間がすぎるのは賢明でないとし、「観光交流を拡大することは、両国の対立緩和に貢献する重要な方法」であると述べた。
観光庁国際観光課外客誘致室室長の多田浩人氏によると、韓国は日本のインバウンド市場の4分の1を占める最大市場。日本政府観光局(JNTO)調べでは2013年7月までで前年比36.6%増の156万人と増加傾向にある。ただし、汚染水問題などの課題もあり、多田氏は正確な情報発信の必要性を強調。食品の安全性に関する資料を懇談会内でも配布し、韓国内での情報発信を求めた。
一方、韓国旅行業協会(KATA)会長の梁武承氏によると、2012年韓国に訪れた外国人のうち、日本人は第1位だが、日本発韓国のアウトバウンドは26.3%減の約134万人と減少傾向にあるとし「旅行業にとって大きな打撃」とした。
同氏は「政治的問題などで持続的に(観光客が)減れば、航空路線も縮小してしまう」と危機感を募らせる。とくに、修学旅行の減少については、両国の将来を担う若者の交流に影響することから「すみやかに改善されるべき」と主張。インセンティブ旅行についても、両国活性化のために関係各所でさらに努力すべきとした。
また、梁氏は東京オリンピックまで両国でスポーツの大型イベントが続くことを受け、日韓の交流促進に期待を示す。「2020年には(日韓合わせて)1000万人交流時代を開いていかないといけない」と意気込みを語り、「次回は具体的なプランをもって会議ができれば」と述べた。
このほか、質疑応答では大韓商工会議所観光産業委員会副委員長でハナツアー副会長の權喜錫氏が日本側に韓国ツアーのピーアール活動を継続するよう求めた。權氏は、韓国で日本への旅行需要が減少するなかでもウェブサイトや新聞広告などを継続し集客をはかってきたと説明。「日本の広告を見ると韓国の旅行商品は大きく出ていない」とし、「日本の旅行会社で今うまくいかなくても、プロモーションを継続してほしい」と呼びかけた。
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