LCCも旅行会社が不可欠、相互利益の追求を商機に-JATA経営フォーラム

  • 2013年3月19日

 2月26日に開催されたJATA経営フォーラム分科会Cのテーマは「LCC元年を経て旅行会社共存共栄の道は見えたか」。アジア太平洋地域の航空市場を踏まえつつ、LCCと旅行会社との関係構築の可能性を探った。ビジネスモデルの異なるLCCと旅行会社では相容れない一線がある。しかし、日本市場では旅行会社とLCCの両者ともに相互の協力が不可欠で、新しいビジネスモデルを構築するチャンスにあるとの認識も示された。

モデレーター
航空新聞社 取締役編集長 石原義郎氏
コメンテーター
エアアジア・ジャパン 代表取締役兼CFO 内山正明氏
航空経営研究所 取締役副所長 牛場春夫氏
ジェットスター・ジャパン 常務執行役員 西尾忠男氏
日本旅行業協会(JATA)航空・空港問題検討部会 副部会長 清水直樹氏


アジア太平洋地域の航空市場は独自進化
競争激化でLCCも生き残りに必死

航空経営研究所 取締役副所長 牛場春夫氏

 まずは航空経営研究所副所長の牛場春夫氏が、日本とアジア太平洋地域のLCC供給量について説明。日本発着の北東アジア路線では6.5%超で、2013年度中に10%近くに拡大するとの見通しを示した。また、東南アジア路線でのシェアは7.5%超。東南アジア路線では欧米のLCCで失敗した長距離モデルが進み、独自に進化しているという。

 日本発着航空座席のシェアはOAGのデータでは5.5%だが、GDSに入っていない席数を入れると「7%くらいあるのではないか」と示唆。政府は2020年までにLCCシェアを2、3割に広げる方針だが、牛場氏は「目標は控えめで、軽く達成する。日本発着のLCCはどんどん増えていく」との予想を披露した。

 一方で、日系LCCが厳しい環境に置かれていることも指摘した。一人当たりの運賃(平均)は、日本航空(JL)、全日空(NH)のフルサービスキャリア(FSA)の約半値となる8175円だが、海外のLCCと一人1キロ当たりの運賃(円換算)を比較すると、日系LCC3社は8.52円でエアアジア(AK)より2.45円高い。牛場氏は日本に本格的なローコーストエアポート(LCA)がなく、空港のインフラコストが高いなか、「赤字覚悟でやっているという印象だ」と語る。

 さらに、アジア太平洋地域においては「10年から12年かけてほぼ倍増。“汎アジアLCCビッグバンが起きる”」と説明。AKグループがリージョナル戦略で展開を加速する中、FSAが子会社のLCCを設立して対抗し、AKグループ対FSAの“2ブラ”の構図となっている。その上、新たにインドネシア資本のLCCが世界第4位を誇る自国の人口をベースに攻勢をかけてきており、「世界最大の航空市場であるアジア太平洋地域は激戦区になっている」として、日本に就航するLCCが厳しい環境にさらされていることを説明した。