オンライン旅行会社台頭で法規制の見直しを-JATA経営フォーラム
旅行業法、OTAは適応外-競争力強化で改正を
分科会では、米国、豪州の現状を受け、モデレーターの原氏より「日本での旅行業法のあり方、特に日本国外に登記があるOTAへの適用についてどう考えたらいいか?」という問題定義がなされた。弁護士の三浦氏は「日本で法人登記をしておらず、支店も管理するサーバーも日本の領土内にないOTAに、日本の旅行業法を適用するのは結論からいうと難しい」との見解を示した。
理由として「日本での商売のあり方の解釈が重要になるが、実質的にどうかというのは曖昧で判断が難しい。結局は形式的な、法人登記やサーバー、支店等がどこにあるかといったことでしか判断ができない」と説明。また現在、そうした旅行サイトの利用者に大きな被害が発生しておらず、米国法人のエクスペディアを例にとっても、既に6年間にわたり日本での運営を継続している点、JTBと提携したことも踏まえると「このタイミングで規制するという動きは考えにくい」という。
原氏は、海外法人のOTAは日本と全く異なる約款を使用しており、手配旅行に値付けして販売するといった、日本の旅行業法では認められていないことを実施している例もあるとし、「これでは日本国内の旅行業者は太刀打ちできないし、消費者からみても混乱を招くのではないか」と指摘。これに対して志方氏は、欧米ではOTAは販売や予約サイトを提供する会社と捉えられており、日本の旅行業法で定められた旅行会社という認識はないとの考えを示した。その上で、「外国法人を規制するというよりも、必要に応じて規制を緩和し、日本の旅行会社が自由に動き競争力を高められるようにする方が大切」との考えを述べた。
また、三浦氏は、日本と海外でサービス取引の考え方が異なっているとコメントした。日本の旅行業法ではサービス取引について、サービスを最終的に供給するのはサプライヤーであり、間に旅行会社が入っても所有権は移らないという前提で考えられているため、手配旅行の場合は値付けできず、手数料という形でしか販売ができないと説明。「値付けと旅行条件は別であると考え、旅行業法を見直さないと海外のOTAに対抗はできないのではないか」と述べた。また、野村氏は豪州には標準旅行業約款はなく、連邦政府が消費者保護の観点から目安を示し、旅行会社はその中で、比較的自由に取引をしていると事例を語った。
原氏によると旅行業法については「宿泊や航空券などの単品については、旅行業法から外して自由競争にしてもいいのでは」「手配旅行でも値付けができるように法改正をした方がいい」という意見も多く寄せられているという。討論では、旅行業法はオンライン取引がない時代に国内取引を想定して作られているため、環境が大きく変わるなか、国際的な競争力をつけるために見直しは必須との声が共通の見解として示された。加えて、旅行業界や消費者を守る為の法律が足かせになっている可能性を示唆する声や、将来を見据え、制度にはある程度柔軟性を持たせるほうがいいという意見も挙がった。
こうした意見を踏まえ、原氏は「国内の旅行会社も海外へ出ていく時代にあり、ドメスティックな枠ではなく大きな枠で考える必要性を感じる」と示唆。「今までのやりかたに固執せず、グローバルな視野で競争できるように考えたい」と締めくくった。