LCCを業務渡航に活用、コスト削減効果訴え-定時運航率など課題も
業務渡航でのキーワードは「定時運航率」
LCCと業務渡航が“水と油”のように考えられる理由の一つは定時運航率で、日系LCCの就航当初の遅延や欠航が大きく報道されたことも記憶に新しいところだ。
定時運航率には、出発予定時刻からの遅れが15分以内の便の割合を表す定時出発率と、到着予定時刻からの遅れが15分位内の定時到着率があるが、鳥海氏は日系LCC各社の定時出発率が就航当初は6割から7割程度であったと説明。その上で、こうした定時運航率こそ「LCCを出張で使う上でのキーワード」であり、この改善が課題と主張する。
FSCの定時出発率の例として日系2社の数値を引用すると、2012年10月の運航実績で日本航空(JL)グループは国際線が93.9%、国内線が96.6%、全日空(NH)は国際線が90.2%、国内線が95.7%となっている。
これに対してMMでは当初は遅れが目立ったものの、経験の蓄積により運航率が改善しており、就航から6ヶ月間の平均定時出発率は89%となっているという。取り組みとしては、ウェブチェックインを使わずにカウンターと自動チェックイン機のみで対応することで、利用者の現状をより把握しやすくしているほか、10月末に関空のLCC専用ターミナルが開業したことで利便性が向上。廣瀬氏は「近いうちにNHと並ぶレベルまでいけるのでは」と意気込みを示した。
また、9Cはスケジュールの調整やスタッフのスキルアップで定時運航率を改善していると説明。例えば茨城/上海線では、茨城空港が自衛隊との共用空港であるため時間の制約が厳しく、運航当初は頻繁に遅れが発生した。このため、上海の出発時間を30分早めたところ、定時運航率は大幅に改善したという。このほか、JWでは運航状況が確認できる社内ポータルサイトで全スタッフが情報を共有し、効率的に業務を進めることで定時運航率の向上に務めていることを紹介した。
キャンセル時の保証や運航スケジュール面での課題も
鳥海氏によると、定時運航率に加え欠航、遅延時の保証や運航スケジュール、路線網の少なさなども課題となるという。これに対してLCC3社は、キャンセル時の補償については、天候や自社都合による欠航、遅延の場合、自社便への振替や料金の払い戻しなどで対応していると説明。また、ソーシャルメディアやウェブサイトで最新情報を提供し、メールや電話で乗客に迅速に連絡するよう心がけているという。
一方、利用者の都合によるキャンセルは対応が異なり、払い戻しや変更が不可の場合や、払い戻しはポイントの充当のみとする場合もある。例えばMMは1時間前まで払い戻し可能な運賃「ハッピーピーチプラス」を設定しているが、手数料を差し引いた差額をポイントで付与しているという。こうした点は、出張がキャンセルになった場合にどのように対応すべきか検討が必要だろう。
また、運航スケジュールについて鳥海氏は、LCCは多頻度運航を重視したスケジュールを組むため、必ずしも出張に便利な時間帯に便があるわけではないと指摘。成田発の場合でみると、6時、7時、11時、15時台の出発が多く、特に早朝は成田までのアクセスが課題になるという。加えて、路線網も路線数、運航本数ともに脆弱で、今後のさらなる他頻度化や、地方路線の増加が期待されるとした。