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井手長官、旅行会社向け安全マネジメント検討へ-万里の長城事故で

  • 2012年11月17日

 観光庁長官の井手憲文氏は11月16日の定例記者会見で、旅行会社に対し、安全をはかるための仕組みづくりを検討したい考えを示した。これは、アミューズトラベル主催ツアーの万里の長城遭難事故を受けたもの。同社のツアーでは、2009年7月にも北海道大雪山系トムラウシ山で遭難事故が起きている。

 井出氏は「旅行会社は単なる斡旋事業ではない。特に募集型企画旅行は旅行会社が造成して呼び込むもの」とし、「安全への取り組みは、旅行業を強くし、質を高めていく上で避けて通れない問題」であると強調。今後は何らかの形での安全マネジメントの導入や、そのための課題について研究していきたい考えだ。9月から開始した観光産業政策検討会でも、安全をテーマに議論をしていきたいとした。

 事故を起こしたアミューズトラベルについては引き続き立入検査を実施し、事情聴取を続けていく。観光庁ではすでに11月9日と13日に立入検査をおこなっており、ツアー参加者や遺族に対する対応情報の聞き取りや、旅行業法関連書類や経営状況に関わる書類の提出を求めるとともに、遭難事故が発生したツアーの企画・実施状況について聴取した。

 2度の立入検査では、事故が発生したツアーの造成に関しては自社で下見せず、コース選定は現地の会社やガイドに一任していたことや、ツアーの実施のための気象情報の入手やツアーの催行判断は添乗員と現地ガイド任せで会社として管理不足だったことが明らかになった。また、ツアーの企画造成にかかわる書類の所在が不明だったため、書類の有無や現地にいる添乗員への照会を含め引き続き調査するよう指示したという。観光庁では立入検査で得た書類の内容の精査を進めるとともに、詳細な事実関係やトムラウシ山遭難事故後の対応を把握するため、再度立入検査を実施する予定だ。

 また、観光庁では、トムラウシ山の遭難事故に関し、当時の監督・指導体制や行政処分などが適切だったかを検証するため「検証チーム」を立ち上げた。井手氏がチーム長、観光庁次長の志村格氏が副チーム長を務める。トムラウシ山の遭難事故以来、観光庁ではアミューズトラベルに立入検査を実施し、2010年12月には業務停止命令を発出。その後も行政指導を実施していたが、そうした一連の対応について関係者から聞き取りをおこなっていく。事務局は公平を期すため行政指導などを担当する観光産業課ではなく観光庁総務課が担当。11月中に中間的な取りまとめをおこなう考えだ。