独自マーケット拓いた旅行会社の事例-2000万人時代への課題

  • 2012年10月18日

ニーズに対応できる商品作り
市場拡大への課題-商材確保の視点

ミキ・ツーリスト 代表取締役社長 檀原徹典氏  旅行商品の造成にはランドオペレーターの役割が重要で、特にこだわりの強い旅行にはその傾向が強い。朝日旅行の鹿野氏が事例発表で、商品作りには企画者の想いを伝える重要性を語ったが、その際に「キーとなるのはランドオペレーターの存在。企画を理解して綿密に調べ上げ、確実な手配をしていただくことが大切」(鹿野氏)と強調している。

 ミキ・ツーリスト代表取締役社長の檀原徹典氏は、「ますます責任が重大になっている」と受けとめた上で、「ターゲットごとの情報を探し、対応する手間や難しさもあるが、逆にニーズが明確化されているのでやりやすい部分もあるかと思う」とも話す。そのため、「現地で形にするランドオペレーターと旅行会社とのギャップを埋めることが大切」とし、「旅行会社側からも情報を従来以上に発信してほしい。相互にスキルをあげ、的確な対応をしたい」と、双方のコミュニケーションを密にして、商材とマーケットを合致させるプロダクト・マーケット・マッチングを呼びかけた。

 一方、壇原氏は商材確保を課題として提示した。「仕入環境は国際競争が激化しており、商材確保が難しくなってきている」という。文化財や環境保護を目的とした入場制限、LCCや直販が引き起こした需要増加による供給数の減少、新興市場の台頭で、「これまでの数の論理が通じなくなっており、従来のスタイルのままでは日本市場のプライオリティを下げることになる」と警鐘を鳴らす。

 ただし、壇原氏は日本市場について「他市場に比べた優位性がある」こともアピール。例えば時期に左右されない安定的な送客や知識欲が深い旅行者が生み出すデスティネーションの多様性、緻密な商品造成などは「日本市場の得意なところ」とし、「このスキルをいかし、十分なリードタイムを持った販売計画に即した責任ある仕入れに結び付ければ、仕入れ面での優位性を出していける」と紹介した。


まとめ

トップツアー 代表取締役社長 石川邦大氏  今回のシンポジウムは、海外旅行2000万人超をめざし、マーケット自体を拡大させる視点で、市場拡大の可能性と旅行会社の取り組むべき方向性と役割を探った。

 ファシリテーターを務めたトップツアー代表取締役社長の石川邦大氏は、新市場の可能性について「社会環境や価値観の変化に伴いニーズが多様化しているが、対応できていない部分がある」とし、「市場拡大の可能性は十分ある」と確認。事例発表した各社がターゲットを明確化していることから「新たな顧客層を出すには明確なイメージが重要。ニーズを具現化することでユーザにとって魅力的な商品を造成できる」とし、そのためには個人に着目したライフスタイルマーケティングの導入が大切とした。

 一方、旅行会社の役割としては、「発想を転換し、多様なニーズにマッチした商品開発をして、これがあってよかったと思われる商品を出すことが我々の使命」とまとめた。そのために、旅行会社とオペレーターの双方に一定以上の知識が必要となり、さらなる連携強化が重要となる。このほか、商品をヒットさせるために、参加しやすい価格設定や日程調整など、従来以上の知識と手間が必要となっていることを指摘。ネット販売にシフトしつつある現状では、「それが旅行会社に望まれる役割である」とまとめた。