2010年の取扱高営業利益率-0.38%、01年以来のマイナスに-JATA経営分析

  • 2012年3月1日

 日本旅行業協会(JATA)が2月16日に発表した2010年(2010年1月~12月)の旅行業経営分析によると、調査に協力した第1種旅行業者180社の営業損益は7651万3000円の赤字で、取扱高営業利益率は-0.38%のマイナスとなった(全体平均)。赤字となったのは、01年以来のこと。01年はアメリカ同時多発テロが発生し、旅行業の経営に大きな影響を及ぼしたが、当時の営業損失は270万2000万円、取扱高営業利益率は-0.03%である。10年は、市場全体に影響を与えるほどの大きなイベントリスクは発生せず、リーマンショックの打撃から少しずつ回復基調にあったはずだが、そのなかでの旅行業の実績概況をまとめた。

2010年・JATA経営分析の注意点

同調査は第1種旅行業者684社(2010年4月1日現在)のうち、趣旨に同意した180社(うち、黒字社数:128社)の報告をもとにJATAが分析したもの。2009年分までは観光庁へ提出が義務付けられた旅行業取扱額報告書をもとにしていたが、2010年分から提出義務がなくなった。そのため、対象者数は09年分(社数:509社、黒字社数:254社)よりも大幅に減少。黒字社数の割合は71.1%と09年よりも高く、従来の分析結果と比較して対象社の内容が異なる。



規模が大きいほど取扱高利益率が低い傾向に

 取扱高営業利益率とは、取扱高(※総額)に対する営業利益の割合のこと。全体的に09年より0.66ポイント低下し、-0.38%(小数点3位以下は切り上げ)となった。簡単に言えば、1万円を売り上げるごとに、約38円の営業損失を出していることになる。

 会社規模ごとの傾向を見ると、いずれも1%を割り込んでいるのは変わらないが、最も数値が良かったEグループ(301人から500人)の0.81%を筆頭に、0.5%以上となったのが4グループある。09年はⅡグループのみ、08年以前は3グループのみが主流であることを考えると、過去と比較しても悪くない数値である。

 全体を押し下げたのは大規模旅行会社で、Fグループ(501人~1000人)が0.06%、Gグループ(1001人以上)は-0.95%とマイナスとなった。黒字計上の健全企業も、Fグループは0.39%、Gグループは0.47%で、他のグループが1%以上もしくは1%に近い数値を出しているのに比べると低い数値となっており、取扱高利益率は規模の大きい旅行会社の方が低い傾向になっている。営業収入(※純額)に対する営業利益の割合を示す「営業利益率」は-2.9%で、09年より5.6ポイント低下した。

 ちなみに、分析対象社の実績に占める海外旅行の割合(全体平均)は、取扱高が41.9%、営業収入は39.3%。また、海外旅行の内訳は、募集型企画旅行が49%、受注型企画旅行が8%、手配旅行が43%となっている。