若者層の需要喚起、「具体性」と「基本の見直し」の視点も-観光庁研究会

  • 2011年11月22日

「旅をしたくない」ではなく、「仕方がわからない」
「前提を疑って」得られる若者旅行のヒント

 若者を旅行に誘引するための方法が画策される一方、「前提から疑っていく」をキーワードに雑誌編集をしている太田氏は、若者は旅行がしたくないのではなく、「旅行の仕方がわからないのでは」と指摘する。例えば、ファッション誌の編集者はごく基本的な事柄を扱うことは避ける傾向にあるが、「本当は、読者は知らないのではと疑ってみる」という発想で、着こなしを「一から教える」企画を打ち出したところ、反響が大きかったという。

 「いくらなんでもそれは知っているだろう」と思われるようなことに改めて向き合うことは、意外な突破口となるかもしれない。日本交通公社主任研究員の川口明子氏も「自分も若い頃は旅行の仕方がわからなかった」と共感する。「旅慣れていない頃は旅行会社の店舗に入るのも怖かったし、対応が冷たいと怖くてひるんでしまった」と話す。

 川口氏はまた、最近の旅行者の傾向自体の「前提」にも着目した。「日本人の大きな流れでいうと、旅慣れてきたので団体から個人へ、個人旅行のネット手配という認識があるが、若い人は旅行の仕方を知らない。知らないと動けない人が多いのでは」という。実際に、研究会に参加した学生からも「パッケージのプランの方が旅行に行きやすいというのはあると思う」という声が聞かれた。

 前提を疑い、改めて観光・旅行業界の基本的な部分を見直すことも、若者と向き合う上では大きなヒントとなり、若者層の需要喚起で重視すべき事項の1つとなりそうだ。