若者層の需要喚起、「具体性」と「基本の見直し」の視点も-観光庁研究会
写真だけでは「刺さらない」若者
動画サイト活用で新たなチャンスが生まれるか
このほか、若年層に訴求していくためには何が鍵となるのだろうか。研究会ではメンズファッション誌の販売部数ナンバー1を誇り、10代から20代の若者から支持を得ている雑誌「smart」の編集長を務める太田智之氏を迎え、ヒントを探っている。太田氏は、かつては街のおしゃれな人を撮って掲載するファッションスナップが人気企画だったものの、今は人気が落ちてしまったという。ファッションスナップは、読者が自分ならどのような着こなしをするかといった「写真と読者の対話」に楽しさがあったというが、太田氏は「(今の)若者は写真を見たときに情報の相互やりとりをしなくなったのでは」と推測している。つまり、旅行系の本に置き換えて考えると、若者が旅行先の風景写真を見ただけでは「刺さらない」かもしれないというのだ。
同様に、ダイアモンド・ビッグ副本部長の奥健氏は、2003年から学生を対象とした海外ボランティアツアーを卒業旅行の商品として企画してきたが、学生が納得感を得るためには「リアルなところを完璧に見せることが重要」だという。ボランティアツアーの募集パンフレットには風景写真だけでなく、日程表に沿って参加者や現地の人の表情を写した写真も交えながら、具体的に何をするのかを詳細に示すことで、初めての旅行となる学生でも参加できるように誘引している。
「見せ方」という意味では、第一期の研究会でも取り上げられたように、若年層の用いるコミュニケーションツールの活用もポイントとなる。楽天トラベルの執行役員で事業推進第二部長の上山康博氏は、楽天会員の15歳から26歳の高校生、大学生を対象とした「若年層のコミュニケーションに関する調査」の結果を発表。それによると旅行、レジャーの情報収集には「インターネットやパソコンに数字が偏っている」という。
また、調査では他の人と情報交換にはmixi、facebook、TwitterなどSNSが使われることが示されたが、Youtubeが74.5%、ニコニコ動画が59.0%と動画サイトも「思った以上に使われている」。その一方、上山氏は動画サイトには「観光、旅行、ツアーに関わるヒットコンテンツはほとんどない」と指摘する。こうした現状に対し、上山氏は「アニメと旅行商品の合体」など、閲覧者の興味をひくような動画を作成し、誘客をするという方法にチャンスがあるのではないかと見ている。