業界トップが語る「震災、現在、未来」-JATAシンポジウムから

  • 2011年10月5日

 9月29日と30日に開催されたJATA国際観光フォーラムの初日は、日本旅行代表取締役会長で日本旅行業協会(JATA)会長を務める金井耿氏が基調講演を実施したほか、ジェイティービー(JTB)、エイチ・アイ・エス(HIS)、阪急交通社の代表取締役社長である田川博己氏、平林朗氏、生井一郎氏が登壇したシンポジウムがおこなわれた。震災が旅行業界に与えた影響、そこからの回復と今後の見通し、そして旅行会社の進むべき道について、旅行業界を代表する企業の経営者はどう捉えているのか。講演とシンポジウムの内容から伝える。


震災からのスピード回復

(左から)JTB 田川氏、阪急交通社 生井氏、HIS平林氏

 金井氏は、東日本大震災による影響を、データを用いて1995年の阪神淡路大震災や2001年の9.11、2003年のイラク戦争/SARSと比較。これによると、阪神淡路大震災は国内旅行、9.11は海外旅行、SARSは海外旅行と訪日旅行がダメージを受けたが、東日本大震災では海外、国内、訪日のすべてが落ち込みを見せたという。生井氏も、震災後の1ヶ月間で海外で8万人、国内で26万人のキャンセルが発生したと報告している。

 一方で、8月の日本人出国者数が日本政府観光局(JNTO)による推計値で前年比9.1%増の179万2000人となり、8月としては過去最高を記録するなど、海外旅行は順調な回復を見せているところ。金井氏は、「ビジネス需要が先に回復し、レジャーが追いかけている」と分析。こうした回復のスピードについて田川氏は、「SARSや9.11のように海外の旅行先に危険や懸念材料がなかった」と要因を分析。金井氏や田川氏は、観光庁長官や被災地自治体の首長による「自粛の自粛」を求めるメッセージも追い風になったと指摘した。

 生井氏は、得意とするシニア層が金銭的、時間的余裕があり、「いつでもキャンセルできるけどいつでも行ける」ため、「6月にはほとんど回復した」と言及。平林氏も「個人でレジャーに行くお客様は比較的影響を受けなかったのでは」とし、早い段階で自粛を脱したと分析する。