現地レポート:オーストラリア、ビクトリア州、メルボルン郊外の体験型素材

  • 2010年4月23日
体験型アクティビティでメルボルン観光の魅力増加
郊外の変化に富んだ自然と野生動物に出会う


 庭園都市メルボルンはショッピングや食、スポーツ観戦など都市型観光の素材が豊富だ。しかし市街から1、2時間ほど足を伸ばすだけで、豊かな自然のなかで多様な体験型の観光が楽しめる。各スポットへ行くには交通手段が限られているので、パッケージツアーには積極的に組み込みたい。また、メルボルン滞在のスケルトンツアーや個人旅行ではメルボルンからの現地ツアーやレンタカー利用をすすめたい。

               
       
ヤラバレーでスパークリングワインを味わい、
ダンデノン丘陵のSLで童心に返る


 市内から車で1時間30分ほど走ると、周りを山で囲まれたヤラバレーに到着する。オーストラリアを代表するワインの産地で、大小50以上のワイナリーが点在している。代表的なのがフランスのシャンパン会社「モエ・エ・シャンドン」が造った「ドメイン・シャンドン」だ。ここではワインの製造過程が見学できるほか、軽食とテイスティングも楽しめる。極上のスパークリングワインに、オーストラリアで人気のワサビチーズやくせの少ないブルーチーズがよくあう。

 ヤラバレーの中心にある「シャトーイェリング」は、ヨーロッパのマナーハウスを思わせるホテル&レストラン。日本びいきのオーナー、スーさんの温かいもてなしと32のスイートルームがある豪華な館内は、ハネムーンや記念旅行などワンランクアップの旅におすすめだ。ワイナリーツアーと組みあわせてランチや宿泊に利用したい。

 また、ヤラバレーの南にあるダンデノン丘では、オーストラリア最古の蒸気機関車「パッフィン・ビリー」が運行している。1900年代初頭に遠隔地開拓のために運行が開始され、1953年に廃止となった鉄道を、600人のボランティアが運営している。機関車はベルグレイブからジェムブルックまでの24キロメートルを約1時間で走行。ユーカリの森やシダ渓谷、農地に沿って走りぬけ、大人も子供も童心に返って楽しめる。



フィリップ島で野生動物に出会う
間近に歩くペンギンに感動


 フィリップ島はメルボルンの南東約140キロメートルに位置する島。ハイライトはサマーランドビーチの「ペンギン・パレード」だ。日没のころ、漁から戻ったリトルペンギンが隊列を成してヨチヨチと巣穴に戻る様子はなんとも愛らしく感動的で、ここが南極と近い場所であることを実感する。昨年から、ペンギンの習性や生態を解説した日本語音声ガイドのレンタルサービスが開始されたので、より興味深く楽しめるだろう。島の最西端ノビーロックの散策路付近にも野生ペンギンの巣穴があり、目を凝らすと穴に潜むペンギン達を観察できる。また、天気の良い日には付近の大岩の上にオットセイが姿を現すという。

 「コアラ保護センター」ではユーカリの森で暮らすコアラの姿を観察できる。10数年前は島のあちこちにコアラが生息していたというが、現在は姿が見られるのはここだけだ。

 フィリップ島の入り口サンレモの町に新しくオープンしたのが「シルバーウォーター・リゾート」だ。アパートメントタイプとホテルタイプの部屋が204室あり、ベランダからポートフィリップ湾を見下ろす景色が絶景だ。キッチンや洗濯機が完備しているので、長期滞在や家族連れにおすすめだ。


モーニントン半島はアクティビティの宝庫
今の人気スポットは温泉


 モーニントン半島は、メルボルン市民が休日に訪れる観光地として人気が高い。半島にある「ペニンシュラ・ホットスプリングス」は、世界30ヶ国のスパを研究したオーナーが、2005年にオープンした温泉施設だ。広大な敷地には趣向を凝らした45種類の小さな風呂や流れ湯の露天風呂があり、温泉ホッピングを楽しむ人々のリラックスした笑顔が印象的。日本と一味違った温泉が楽しめる。アボリジニのヒーリング&マッサージテクニックを取り入れたデイスパ施設も充実し、現在は敷地内にアコモデーションを建設中だ。

 モーニントン半島にはレストランを併設したワイナリーや、イチゴが収穫できる農園「サニー・リッジ」、オーストラリア固有の植物を集めた「ロイヤルボタニカルガーデン」、迷路やバラ園、ラベンダー畑などが美しい「アッシュコム・メイズ&ラベンダー・ガーデン」など隠れた名所が多くある。ドライブの途中、キョトンとした風情で道路脇に立つワラビーに出くわすのも、郊外ならではの魅力だ。




メルボルンの食を堪能する

 メルボルン名物「ザ・コロニアル・トラムカー・レス
トラン」は一見普通のトラムだが、内部は豪華列車のレ
ストラン並み。車窓の景色を楽しみながらいただく料理
は、前菜からメインコース、デザートに至るまで本格的
だ。オージービーフのジューシーさと厚さに感激。飲み
放題もうれしい。車内には各国の音楽が流れ、名物車掌
のリードでたちまち大合唱となる。当日は誕生祝いのグ
ループが利用しており、車内は大いに盛り上がった。コ
ースは「ランチ」(82.50豪ドル)、「アーリー・ディ
ナー」(77.00豪ドル)、「ディナー」(121.00豪ドル
〜)の3種類。現地の人々にも人気があるので、早めの
予約が必要だ。

 また、街の中心フェデレーションスクエアの一角には、
「タクシー・ダイニング・ルーム」という一風変わった
名前のレストランがある。ここの得意はオーストラリア
とアジアのフュージョン料理。地元の新鮮な肉や魚・牡
蠣などの素材に、醤油や柚子ドレッシング、豆腐、パク
チョイなどアジアのテイストをたっぷり使った料理は、
見た目も味も新鮮だ。窓から見える夜景が美しく、ウェ
イターのサービスにも好感がもてる。



ビクトリア州とタスマニア州の連携で新たな商品開発を

 世界的な不況の影響を受けて観光需要が低迷するなか、
オーストラリアのなかでいち早く回復したのがビクトリ
ア州だと、ビクトリア州政府観光局日本地区局長のアダ
ム・パイク氏はいう。同州を訪れた観光客は2009年9月
の3万9000人が下げ止まりとなり、同年12月には4万人に
回復した。パイク氏はもともとタスマニア州政府観光局
の日本地区局長を勤めており、昨年からはビクトリア州
政府観光局日本地区局長も兼任。「タスマニアとそのゲ
ートウェイであるメルボルンを一緒にプロモーションす
ることで成果があがったと感じる」と話す。

 ビクトリア州はメルボルンの都市型観光に加え郊外の
新素材があり、さらにタスマニアと連携することで「都
市・郊外・大自然」の魅力をアピールした新商品開発が
可能となる。今年は熟年層、20代・30代の女性、教育旅
行、SIT(サイエンス・テクノロジー関連)をフォーカ
スする意向だ。

 一方、タスマニア州の魅力について、パイク氏は「世
界一澄んだ空気とその香り」と語る。確かに島の30%以
上が世界自然遺産に登録されている緑豊かな島を巡ると、いたるところで木々の香りに
癒される。その大自然に生息する野生動物、クリーンな大地から育まれる食材やワイン
は、タスマニアの大きな観光資源だ。タスマニア州も熟年層とSIT(農業・再生可能エ
ネルギー関連)に注力する。また、両州ともこれまで以上に、各州のイベントをアピー
ルしていく考え。2010年の主なイベントは以下の通り。

▽ビクトリア州 イベント
オーストラリアオープンテニス/メルボルンF1レース/メルボルンカップ150周年

▽タスマニア州
ホバート・サマーフェスティバル(食とワイン)/ロレックス シドニー〜ホバート間
ヨットレース/ロンセストン食とワインのフェスティバル/ターガ・タスマニア(カー
ラリー)



取材協力:ビクトリア州政府観光局、タスマニア州政府観光局
取材:戸谷美津子