着地型観光を担う DMC経営の人材育成セミナー

 地域主導の集客交流サービスを担う人材育成のセミナーが各地で開かれている。日本観光協会が主催し、全国地域オペレーター創造ネットワーク(大社充代表世話人)が実施する「観光まちづくり事業体の事業運営人材研修」。1月下旬には大阪市内でも開かれた。

 セミナーは昨年11月から全国4会場で実施。着地型観光を推進するためには、地域内のヒトやモノをコーディネートし、地域外のリクエストに応じるランドオペレーター機能を持つデスティネーション・マネジメント・センター(DMC=観光まちづくり事業体)が不可欠という考えから、DMCを担う人材の育成を目的としている。将来的には、各地で起業したDMCをネットワーク化することも構想している。

 大阪会場には、当初予定していた20人を大きく上回り、地元近畿圏をはじめ、四国や北陸地方から市民団体、行政職員、旅行会社などの約50人が参加した。

 はじめに大社さんが基本的なDMCの役割について話した。「従来の観光事業者のポジションは外向きであった一方、暮らしの質を高めるまちづくりを行う市民活動は内向きでした。この2つを兼ね備えた『住んでよし、訪れてよし』が観光まちづくりであり、DMCが目指すところです」とし、DMCの機能は(1)観光商品をつくる(2)観光商品を売る(3)来訪者をもてなす−この3つに大別されると話した。

 また、着地型観光プログラムの実践に関して、大社さんは「誰でもどうぞは売れないのです。誰のために自分たちは何をしようとするのか、それを明確にしないと単なるお国自慢、提供者側の論理だけになってしまう」と強調した。その中で、例えば山は「登りたい人」「眺めたい人」「写真に撮りたい人」「興味のない人」がいて、それぞれが求めるものに応じた価値を提供しなければ商品にならないと述べた。

 提供する価値とは何か。大社さんは3千円のクマのぬいぐるみが10倍の値段で飛ぶように売れた事例を紹介した。あるメーカーでは、産まれたばかりの赤ん坊にぬいぐるみをプレゼントするケースが多いことに着目し、赤ん坊の出産時の体重と同じ重さになるようぬぐるみを改良したことがヒット商品につながったという。「誰のために、自分たちはどんな価値を提供するのか」。着地型観光のポイントも同様であるとした。

 セミナーではこの後、イデアパートナーズの井出修身さんが九州などで実績を上げているDMCの事例を紹介したほか、三重県鳥羽市でエコツーリズムに取り組む海島遊民くらぶの江崎貴久さんらが講師に就きDMCの事業化について語った。


情報提供:トラベルニュース社