現地レポート:マイアミからのショートトリップ

  • 2009年6月12日
マイアミでアグリツーリズム&エコツーリズムが可能
レッドランド・トロピカル・トレイルでワインも堪能


 フロリダのワインと聞いても、ワイン通の人たちはあまり心を動かされないかもしれない。しかし、マイアミ郊外のレッドランドにはマンゴーやグァバ、パッションフルーツなどのトロピカルフルーツから生まれたワインがあるのだ。先住民のデザインをモチーフにした建物の周囲には珊瑚をふんだんに用いた庭園が広がり、ヨーロッパやカリフォルニアのワイナリーとはまったく違うユニークな雰囲気。このほか、レッドランドには地元の人に大人気のミルクシェイクスタンドから蘭の農園、エバーグレーズのエアボート・ツアーまで、立ち寄りポイントが点在するトレイルがある。マイアミからの日帰り小旅行、エバーグレーズやフロリダキーへの旅の休憩スポットとしてもぜひ取り入れたいエリアだ。


嬉しい驚きがいっぱいのトロピカル・トレイル

 マイアミとフロリダキーのほぼ中間点にあるレッドランドは、フロリダ南部らしいおおらかな農村地帯だ。マンゴーやスターフルーツなど、トロピカルフルーツの畑がどこまでも広がっている。この周辺には、世界中から珍しい猿を集めたモンキー・ジャングル、開拓時代の名残を伝える歴史的な村をショッピングモールに変身させたコーリー・スクエアまで、ユニークな観光スポットがたくさんある。これらを結んで作られているのが「レッドランド・トロピカル・トレイル」だ。このトレイルを周遊すれば、マイアミからの日帰り小旅行にぴったり。わかりやすい標識や地図も用意されている。

 このトレイルの中でも特に人気があるのは、「ロバートならここにいるよ!」(Robert Is Here Fruit Stand)という、一風変わった名前のフルーツスタンド。ひげが特徴のオーナー、ロバートさんが厳選する地元産フルーツや野菜が、広々とした店内にぎっしり並んでいる。この店に入ったら絶対、見逃せないのがミルクシェイク。新鮮なフルーツとミルクをたっぷり使ったリッチな味だ。ストロベリーやオレンジなど、一つの味でオーダーするのも美味しいが、常連は自分の好みで数種類のフルーツをブレンドするらしい。






エバーグレーズの大自然を体感

 フロリダの南部には、エバーグレーズと呼ばれる広大な湿地帯が広がり、その一部が国立公園となっており、世界遺産に指定されている。湿地帯はオキーチョビー湖から流れ出た水と雨水が石灰岩の岩盤の上を滑るように拡散し、300キロ以上の旅を続けて海に流れ込んでいるもので、厳密にいえばエバーグレーズは「幅80キロメートルにもおよぶ大河」なのだ。この世界一の大河は、ソーグラスと呼ばれる細長い葉の水生植物に覆われて、一見草原のように見える。

 トレイルでは、「エバーグレーズ・アリゲーター・ファーム」に立ち寄ることができる。エバーグレーズでは熱帯、亜熱帯の動植物が棲む特異な生態系が保たれており、ここはその頂点であるアリゲーターの動物園兼養殖所だ。一時は絶滅の危機に瀕していたアリゲーターを増やすために作られたのがはじまりで、フロリダで最も長い歴史を持つという。施設は素朴だが、入園料には湿地帯を進む巨大な扇風機のようなプロペラが付いたエアボートの乗船が含まれており、気軽にエバーグレーズの大自然に触れることができる。エアボートが行くのは国立公園ではないが、航行中はアリゲーターの群れが姿を現すかもしれないし、350種以上生息するといわれる野鳥に出会えるのも楽しみだ。


謎の男が作った珊瑚のお城

 ややマニアックな「不思議アトラクション」といえるのが、レッドランド・トロピカル・トレイルの中心近くにあるコーラルキャッスル。この「城と庭園」は、ラトビア生まれのエドワード・リードスカリンという身長150センチメートルほどの小柄な男性が、たった一人で造り上げたものだ。

 エドワードさんは26歳の時にアンガスという名の少女と婚約するが、結婚式の直前にふられてしまう。失意の彼は、アンガスへの愛を証明するために、地面から珊瑚の固まりを掘り出し、巨大なテーブルや椅子、不思議なオブジェのような噴水など、1930年代から20年も延々と築き続けた。作業のほとんどを夜やっていたらしく、彼が珊瑚を切り出したり積み上げたりしている姿を見た人はほとんどいなかった。大きな機械を使った形跡もなく、いったい彼がどうやって、この「愛の証拠」を築いたのかはまったくの謎のままだ。真っ青な空に輝く白い珊瑚の建物やオブジェを見ていると、彼の声が聞こえてくるようだ。少しかわいそうな気もするが、方向を失った情熱は妙なユーモアさえ感じさせる。

 情熱の証というなら、「RFオーキッド」の人々の蘭作りへの思いもかなり熱い。RFオーキッドは1970年にオープンしたフロリダ南部で最も歴史の長い蘭園。美しいトロピカル・ガーデンにあふれるように咲くさまざまな花は、全米蘭協会のコンクールで800回以上も受賞しており、見事だ。ガーデニングに特に興味のある人向けに、プライベートガーデンのツアーもアレンジできる。


トレイルめぐりの仕上げはフルーツワイン

 アボカドのワイン。・・・いったいどんな味なのかとグラスに顔を近づけてみると、かすかに洋梨のような香りがしてきた。口に含むと、予想に反して切れ味のよいドライ。最初の一口はグレープフルーツのような柑橘系の味がするが、ゆっくりと舌の上に広げていくと、アボカドの甘みも少し感じる気がしてくる。

 「シュネブリー・ワイナリー」のオーナー、ピーター・シュネブリーさんは、レッドランド周辺でトロピカルフルーツを栽培する果樹園を経営している。ニューヨーク州でワイナリーを経営している友人のすすめで、5年ほど前からワイン作りをはじめたという。「ワインの作り方はブドウでもトロピカルフルーツでもほぼ同じ。フランスやカリフォルニアの真似をしても仕方がないので、ワインの味はもちろん、試飲室やワイナリーの建物もフロリダらしいユニークなものにした」とピーターさんは胸を張る。

 ワイナリーの周辺は涼しげな水を湛えた池や滝、せせらぎに囲まれていて、ランチや一日の旅の終わりに一休みをするのにもぴったり。グループや大人数のレセプションなどにも対応できるように大小の別棟もある。試飲室は天井にトロピカルフラワーが描かれ、古き良き時代のフロリダの街並みを再現したユニークな雰囲気だ。試飲は5種類のテーブルワインが6ドル。スパークリングワインやデザートワインなどの試飲は7ドルで4種類。トロピカルフルーツの甘みを十分に生かしたマンゴーのデザートワインはオーナーのいちおしだ。

 マイアミはビーチと高級ブティックのショッピングなどが注目されがちだが、レッドランド・トロピカル・トレイルのような、おおらかな雰囲気のエコツーリズム、アグリツーリズムの雰囲気のある素材にも目を向けてみたい。また、この周辺なら、初心者のフライ&ドライブにもおすすめだ。


▽レッドランド・トロピカル・トレイル 
http://www.redlandtrail.com




コンチネンタル航空でマイアミへ楽々旅
新しいオンデマンド型エンターテイメントシステムで映画見放題

 コンチネンタル航空(CO)で成田からマイアミへ飛
ぶには、ヒューストンで乗り換えの便とニューヨーク
のニューアーク空港で乗り換えと大きく2つの選択肢
がある。今回利用したニューアーク空港はニュー
ジャージー州にあるが、ニューヨークの国際空港の
中ではマンハッタンへもっとも近く、マンハッタンへは
鉄道、ヘリコプターなどアクセスも良いので便利だ。
 

 今回は、COのボーイングB777型機の全機に導入されたばかりのAVOD
(オーディオ/ビデオ・オンデマンド)と呼ばれるエンターテイメントシステム
を体験できた。これは、各座席に設置されたスクリーンで、リモートコントロー
ルを使ったり、画面に軽くタッチしたりするだけで250本の映画、350本の短
編番組、3000曲の音楽、25ものTVゲームを自分の好きな時間に選んで楽
しむことができるシステム。旧来のものはリモートコントロールのみでの操作
であり、映画などは好きなタイミングで見ることができなかったが、今回の最
新AVODは、番組の選択、開始はもちろん、巻き戻しや早送りも非常にス
ムーズ。画面も見やすかった。


入国審査から乗り継ぎもスムーズ

 ニューアーク空港に到着して、入国審査を受けることになる。2001年以来、警戒
の強化や生体認証システムの導入で、アメリカの入国審査はかなり時間がかかる
ようになった。乗り継ぎ便を逃してしまったという話も良く聞く。しかし、ニュー
アーク空港ではCOの専用国際線ターミナルであるため、あちこちから到着したい
ろいろな航空会社の乗客が入国審査に殺到するという事態はほとんどなさそう。
今回も10本すべての指紋を採るというさらに面倒なシステムに変わっていたにも
かかわらず、待ち時間は15分ほどでスピーディに入国することができた。

 その後、荷物をいったん受け取って、乗り継ぎ便に載せてもらうように別の場所ま
で運ぶのだが、これもわかりやすく、安心して預けられた。乗り継ぎ便へのゲートま
で近い(国際線ターミナルから国内線へというように、別のターミナルに移動する必
要がない)のも嬉しい。


かわいいマフィンと笑顔で高ポイント 

 今、北米の航空会社は米国内線においては、機内食
などのサービスをカットしてしまっている。実は米国
の国内線で無料で機内食を提供しているのはCOだ
けだそうだ。ついうっかり食べ物を持たずに乗って、
3時間以上のフライトというのは少し辛い。今回の復
路は早朝のフライトだったので、空港内のお店はほ
とんど開いておらず、朝食抜きになるかと思っていた
ら、機内でマフィンと飲み物が配られたのでとても嬉
しかった。

 長時間の旅では、まだまだ機内食は重要なポイント。
おいしくて胃の負担にならない配慮を感じさせるメニューや、国際線の往路で「喉
が渇いた」と思う頃、見計らったように配られたアイスクリームも、スカイトラックス
の調査で「北米のベスト・キャビンスタッフ」と評価されるキャビンアテンダントの笑
顔が優しい心遣いとともに印象的だった。



取材協力:USトラベル・アソシエーション、グレーター・マイアミ・コンベンション・
ビジターズ・ビューロー、ヒストリック・レッドランド・トロピカル・トレイル、
コンチネンタル航空
取材:宮田麻未、写真:神尾明朗