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全日空、平成21年3月期は最終損失42億円計上−09年度経営計画で黒字化施策

  • 2009年5月7日
 全日空(NH)の平成21年3月期連結決算(平成20年4月1日〜平成21年3月31日)の最終損益は前年比684億円減の42億円の赤字となった。平成20年3月期には過去最高の純利益を記録していたものの、世界的な景気後退によるビジネス需要の減退や個人消費の落ち込みなどにより、特に夏場以降の国内線、国際線の旅客便収入が前期実績を下回った。コスト削減や運航効率の向上といった施策も収入の下落をカバーするには至らなかった。ただし、航空運送事業では運賃改定や機材の小型化など需要適合を進めるとともに、旅行事業では人件費や販売関連費を削減。これにより営業利益は前年比91%減と大きく減少したものの75億円を確保した。営業収入は6.4%減の1兆3925億円、営業費用は1.3%減の1兆3849億円、経常損益は0円。

 航空運送事業は、売上高が5.5%減の1兆2295億円、営業利益は93.9%減の47億円となった。このうち国内線旅客事業は、秋以降の景気後退による出張抑制のためビジネス需要が低下したことに加え、総需要が減退する中で主要路線における他社交通機関との競争が激化。売上高が5.4%減の6993億円、旅客数が6.2%減の4275万3000人となり、いずれも減少した。国際線旅客事業では、2008年夏以降に欧米を中心に需要が低迷。空席状況に応じて変動する運賃体系の導入や、一部路線の休止、減便および機材の小型化などの緊急措置を実施し、需給適合をはかったものの、四川大地震などによる中国線の需要落ち込み、ムンバイでのテロやバンコクの空港閉鎖などの影響により売上高は6.6%減の2910億円、旅客数は8.2%減の4432万人となった。また、利用率は国内線が63.5%、国際線は69.4%であった。


▽経営計画は緊急対策と2010年への準備

 平成22年3月期に関しては、急速な景気後退が現在も続き、不透明な状況で先を見通すのが難しいとしながらも当期純利益で30億円の黒字をめざす。中期経営方針に基づいて策定した2009年度経営計画では、2010年に予定される首都圏空港の容量拡大に向けて、増収施策およびコスト削減を実行していく。旅客事業では国内線、国際線ともに需給バランスの変化へ敏感に対応することをめざし、国内線では不採算路線の見直し、国際線では機材の小型化および欧米全路線でボーイングB777型機の導入を進めていく。このほか、運賃体制を柔軟に設定し、増収をはかる。

 一方、コスト面では、燃油費や燃油税だけで480億円を削減できる見込み。このほか、人件費で60億円、着陸料減免や事業計画の見直しによる空港使用料で70億円、国際線の販売手数料減少などによる販売関連費用の見直しで120億円、あわせて730億円の削減を実行する。また、設備投資では230億円の圧縮を予定しているが、2010年の準備として09年度にボーイングB787型機を3機、10年に8機導入する予定。平成22年3月期の業績予想は、売上高1兆3500億円、営業利益350億円、経常利益50億円、当期純利益30億円を見込む。取締役執行役員の竹村滋幸氏は、「08年度比では厳しいとの見方もあるかもしれない」と話す一方で、2007年度比では、収入面において国内線では96%、国際線で78%、国際線の貨物で97%の数値目標であることから、「07年度と比べれば無理ではない」と強調した。