現地レポート:タイ−リピーター向け観光素材
リピーター向けバンコク近郊のデスティネーション
チャチュンサオ県とサムットプラーカーン県
年間120万人程度の日本人訪問者数を誇ったタイ。そのタイで昨年11月、反政府団体がスワンナプーム国際空港を占拠し、空港が閉鎖の事態になった事件の影響で、2008年の全世界からの訪問者数は1%増の1460万人と停滞し、日本人訪問者数は9%減の116万人に減少した。そこで人気デスティネーションとして再び需要を喚起するため、タイ国政府観光庁(TAT)とタイ国際航空(TG)は2月下旬、共同で全世界的なFAM「Amazing Thailand Amazing Value」を実施。そのセミナー前後に実施された視察ツアーでは、バンコク近郊の新しい観光地が紹介された。
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◆バンコクで世界的規模のFAM開催、TATはイメージ回復はかり需要喚起(2009/02/26)
第2の参拝客数を誇るワット・ソートン
TATが日本人メンバー向けに用意したFAMトリップの目的地は、チャチュンサオ県そしてサムットプラーカーン県だった。バンコクの東に広がる県だが、パタヤに代表される人気リゾートや日系企業が多数進出しているチョンブリ県のことを記したガイドブックはあっても、チャチュンサオ県やサムットプラーカーン県についてページを割いているものは皆無に近い。ここを訪れる日本人観光客も、ごく少数だ。だからこそ、「バンコク近郊で交通の便も良いチャチュンサオ県やサムットプラーカーン県。リピーターも多い日本人観光客は、ここに目を向けてはどうか」というタイ側からの提案なのだ。
バンコク市内のホテルを発ち、最初に向かったのはチャチュンサオ県にある「ワット・ソートン」という寺院。実はタイ第2位の参拝客数を誇るのだとか。ちなみに第1位はもちろん、バンコク市内にあるワット・プラ・ケオことエメラルド寺院だ。
そのワット・ソートンは、3年前に新しく造り替えた礼拝堂が、実にきらびやか。それもそのはずで、この礼拝堂には77キログラムもの純金が使用されているといわれ、中央部の尖塔の高さは84メートルにもおよぶ。建立には約28億バーツ(約77億円)もの費用がかかったが、すべて市民からの寄付でまかなっている。外国人旅行者には無名の寺院だが、タイ人にとっては誇るべき寺院なのだ。
素朴さこそが観光資源に
ワット・ソートンからの帰りは、寺院の裏手を流れるバンパコン川を利用してリバークルーズを楽しみたい。豪華なものではなく、天蓋付きの素朴なボートによるクルーズだが、左右の岸を交互に眺めていると、バスの車窓からは見かけることができない風景を見学できる。海老釣りの漁師の小舟、船宿が一体化した母屋を持つ民家、川面にテラスを張り出したレストラン――。これらもタイの文化のひとつだ。
30分後に到着したのが、本日のランチを取る水上レストラン「バーン・パ・ヌー」。このあたりのバンパコン川は海水と淡水が混じり合った汽水域のため、魚介類が豊富だという。一見すると地方のドライブイン程度の店としか想像できなかったが、実際に出された料理はどれもこれも絶品だった。
昼食をこのレストランにしたのには、料理が美味しい以外にもうひとつの理由がある。それは100年超の歴史を誇る「バーンマイ市場」の存在だ。入居している店は、ほかの地域でも見られるタイの一般的な店ばかりだが、建物自体はこの地方の1世紀前の建築様式を今に伝える。かなり巨大な市場で、100年も前にこれが建っていたとは驚きだ。その貴重さから、映画の撮影などもよく行なわれているという。
タイの文化、伝統を知る
チャオプラヤー川がタイ湾へと注ぐ河口付近に位置するサムットプラーカーン県。スワンナプーム国際空港が属する県といった方がわかりやすいかもしれない。次なる目的地は、この地にある「エラワン・ミュージアム」だ。
エラワン象そのものはヒンドゥー教に由来し、33の頭を持つ象として神聖視されている。ここでは3つの頭を持つエラワンを、タイの古美術品を展示する美術館として使っている。その内部は地階部分が地下世界に、2階部分を人間界に、そして3階部分を天上界としてとらえ、それぞれにふさわしい意匠を凝らしている。グランドオープンは3年後の予定だが、すでに入場は可能だ。
実は同じオーナーによる、もうひとつの見どころが近くにある。128万平方メートルもの広さを持つ敷地内に、宮殿や寺院、歴史的建造物や文化的建造物など、タイ文化を象徴する建物のレプリカが点在する「アンシエント・シティ」(ムアン・ボラン)だ。あまりにも広すぎるため、園内はカートか自転車による移動が基本。例えばタイらしい光景のひとつ水上マーケットも再現されているが、単に船を並べただけでなく、レストランなどを設けてその地方の人々の食事までも再現している。ここを訪れることで、タイの社会や文化、宗教観についての理解を深められるようになっているのだ。
以前と同様に取り組むことが重要
最後に訪れたのは、海沿いのバンプーという街。シーサイド・リゾートとして知られているが、正直なところ、高級感はない。むしろ庶民的な素朴さが印象的だ。その分、夕刻に集まってくるカモメと、海に沈む夕日といったのどかさが、一際引き立つ。リゾート施設内にはレストランもあるので、シーフード料理を味わうこともできる。
なお、バンコク市内からバンプーまでは1時間弱という距離だ。バンコクとパンプーのあいだに空港を挟む道程なので、帰路のフライトが深夜便になった場合の観光スポットとしても利用できるかもしれない。
チャチュンサオ県とサムットプラーカーン県
年間120万人程度の日本人訪問者数を誇ったタイ。そのタイで昨年11月、反政府団体がスワンナプーム国際空港を占拠し、空港が閉鎖の事態になった事件の影響で、2008年の全世界からの訪問者数は1%増の1460万人と停滞し、日本人訪問者数は9%減の116万人に減少した。そこで人気デスティネーションとして再び需要を喚起するため、タイ国政府観光庁(TAT)とタイ国際航空(TG)は2月下旬、共同で全世界的なFAM「Amazing Thailand Amazing Value」を実施。そのセミナー前後に実施された視察ツアーでは、バンコク近郊の新しい観光地が紹介された。
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◆バンコクで世界的規模のFAM開催、TATはイメージ回復はかり需要喚起(2009/02/26)
第2の参拝客数を誇るワット・ソートン
TATが日本人メンバー向けに用意したFAMトリップの目的地は、チャチュンサオ県そしてサムットプラーカーン県だった。バンコクの東に広がる県だが、パタヤに代表される人気リゾートや日系企業が多数進出しているチョンブリ県のことを記したガイドブックはあっても、チャチュンサオ県やサムットプラーカーン県についてページを割いているものは皆無に近い。ここを訪れる日本人観光客も、ごく少数だ。だからこそ、「バンコク近郊で交通の便も良いチャチュンサオ県やサムットプラーカーン県。リピーターも多い日本人観光客は、ここに目を向けてはどうか」というタイ側からの提案なのだ。
バンコク市内のホテルを発ち、最初に向かったのはチャチュンサオ県にある「ワット・ソートン」という寺院。実はタイ第2位の参拝客数を誇るのだとか。ちなみに第1位はもちろん、バンコク市内にあるワット・プラ・ケオことエメラルド寺院だ。
そのワット・ソートンは、3年前に新しく造り替えた礼拝堂が、実にきらびやか。それもそのはずで、この礼拝堂には77キログラムもの純金が使用されているといわれ、中央部の尖塔の高さは84メートルにもおよぶ。建立には約28億バーツ(約77億円)もの費用がかかったが、すべて市民からの寄付でまかなっている。外国人旅行者には無名の寺院だが、タイ人にとっては誇るべき寺院なのだ。
素朴さこそが観光資源に
ワット・ソートンからの帰りは、寺院の裏手を流れるバンパコン川を利用してリバークルーズを楽しみたい。豪華なものではなく、天蓋付きの素朴なボートによるクルーズだが、左右の岸を交互に眺めていると、バスの車窓からは見かけることができない風景を見学できる。海老釣りの漁師の小舟、船宿が一体化した母屋を持つ民家、川面にテラスを張り出したレストラン――。これらもタイの文化のひとつだ。
30分後に到着したのが、本日のランチを取る水上レストラン「バーン・パ・ヌー」。このあたりのバンパコン川は海水と淡水が混じり合った汽水域のため、魚介類が豊富だという。一見すると地方のドライブイン程度の店としか想像できなかったが、実際に出された料理はどれもこれも絶品だった。
昼食をこのレストランにしたのには、料理が美味しい以外にもうひとつの理由がある。それは100年超の歴史を誇る「バーンマイ市場」の存在だ。入居している店は、ほかの地域でも見られるタイの一般的な店ばかりだが、建物自体はこの地方の1世紀前の建築様式を今に伝える。かなり巨大な市場で、100年も前にこれが建っていたとは驚きだ。その貴重さから、映画の撮影などもよく行なわれているという。
タイの文化、伝統を知る
チャオプラヤー川がタイ湾へと注ぐ河口付近に位置するサムットプラーカーン県。スワンナプーム国際空港が属する県といった方がわかりやすいかもしれない。次なる目的地は、この地にある「エラワン・ミュージアム」だ。
エラワン象そのものはヒンドゥー教に由来し、33の頭を持つ象として神聖視されている。ここでは3つの頭を持つエラワンを、タイの古美術品を展示する美術館として使っている。その内部は地階部分が地下世界に、2階部分を人間界に、そして3階部分を天上界としてとらえ、それぞれにふさわしい意匠を凝らしている。グランドオープンは3年後の予定だが、すでに入場は可能だ。
実は同じオーナーによる、もうひとつの見どころが近くにある。128万平方メートルもの広さを持つ敷地内に、宮殿や寺院、歴史的建造物や文化的建造物など、タイ文化を象徴する建物のレプリカが点在する「アンシエント・シティ」(ムアン・ボラン)だ。あまりにも広すぎるため、園内はカートか自転車による移動が基本。例えばタイらしい光景のひとつ水上マーケットも再現されているが、単に船を並べただけでなく、レストランなどを設けてその地方の人々の食事までも再現している。ここを訪れることで、タイの社会や文化、宗教観についての理解を深められるようになっているのだ。
以前と同様に取り組むことが重要
最後に訪れたのは、海沿いのバンプーという街。シーサイド・リゾートとして知られているが、正直なところ、高級感はない。むしろ庶民的な素朴さが印象的だ。その分、夕刻に集まってくるカモメと、海に沈む夕日といったのどかさが、一際引き立つ。リゾート施設内にはレストランもあるので、シーフード料理を味わうこともできる。
なお、バンコク市内からバンプーまでは1時間弱という距離だ。バンコクとパンプーのあいだに空港を挟む道程なので、帰路のフライトが深夜便になった場合の観光スポットとしても利用できるかもしれない。
スワンナプーム国際空港とバンコク市内の様子
スワンナプーム国際空港は、反政府団体による占拠と
いっても平和的におこなわれていたため、現在は事件を
想像させるような痕跡はまったく見あたらない。空港内は
多くの観光客であふれていた。特に欧米の観光客は、す
でにあの事件が一過性のことだと理解し、タイへの観光
は回復基調にある。むしろ世界的な景気低迷による影響
の方が大きいという。
空港内で陽気に写真を撮っている若者や、両手いっぱい
にショッピングバッグを持ち、免税店をはしごする年配の
夫婦などを見ていると、その姿こそ平和の証だと感じる。
また、往復のタイ国際航空(TG)は満席状態だった。
それだけ日本人旅行者も帰ってきているといえる。
一方、バンコク市内についても滞在中、治安が悪化する
ようなデモやテロ行為は皆無だった。バンコク市内で目に
するのは、普段と変わらぬ市民の姿である。もはや、
アピシット・ウェチャチワ首相がセミナー中に語ったように、
「再びバリューのある休暇をタイで過ごしてもらいたい」と
いう時期に来ているといえるだろう。何といっても日本人
渡航者数が100万人を超えるマーケット。早い対応ほど、
得られるメリットが大きくなるはずだ。
取材協力:タイ国政府観光庁、タイ国際航空
取材:竹井智