マリアナ、座席数増加で客数が盛り返し−ツーリズムアカデミーに同行

  • 2008年12月22日
マリアナ政府観光局は11月9日から14日にかけて、サイパンで「マリアナ・ツーリズム・アカデミー(MTA)2008」を開催。日本から札幌、仙台、新潟、東京、大阪、名古屋、岡山、広島、福岡の8都市の49名が参加した。今年は、前年比15%増と成長が予想されるアクティブシニアのほか、ウエディング、観光、団体・教育などの客層別や、来年開催されるサイパンマラソンのコースを中心に回るマラソン・ウォーキングといったテーマ別インスペクションを開催。テニアン島、ロタ島の日帰りツアーも用意し、多様なテーマ別の過ごし方の提案とともに販売促進や商品造成に向けた最新情報を提供した。(取材協力:マリアナ政府観光局、ノースウエスト航空)


航空座席数が大きく改善、次の課題は「いかに座席を埋めるか」

 マリアナ政府観光局は昨年から航空座席数の増加をめざし、各航空会社に働きかけてきた。その結果、昨年12月のノースウエスト航空(NW)の関空便復便、7月の成田便の夜便就航に加え、12月からアシアナ航空(OZ)の関空便が運航され、座席供給数は改善されつつある。直行便に限ると、昨年の10月は17万席程度だったが、今年は11月現在で30万席まで増加。年間来島者数は今年1月から10月までの累計では3.2%増の17万5243人となった。マリアナ政府観光局(MVA)日本事務所・旅行業界担当マネージャーの高久渉氏によると、観光局としては「航空座席数を確保するという第一段階としてクリアしたという認識。今後は旅行会社と協力しながら座席をいかに埋めていくか」と、今後の課題認識を示した。

 セミナーでは、各航空会社が現在のスケジュールやサービスを紹介。コンチネンタル航空(CO)は来年1月からの成田発グアム行きの増便を説明し、サイパンへの乗継便の更なる利用を提案した。また、近畿日本ツーリスト(KNT)の155席40本のロタへの直行チャーター便について触れるとともに、グアムからの経由便についても、新しいスケジュールでは乗継時間が短縮され、さらに便利になったことを紹介した。また、ノースウエスト航空(NW)は成田発の夜便をアピール。仕事帰りに利用でき、早朝帰国が可能という点でOL層に人気だという。NW中部営業部アカウントマネージャーの後藤徹氏によると、座席供給数については適正であるとしている。現在、NWのサイパン便の利用者は70%から80%が日本人、次いで韓国、中国、ロシアが続く。また、サイパン国際空港に2009年1月に新しくオープンする予定のラウンジについても紹介した。


消費者、旅行会社の双方へ働きかけを展開

 MVA局長のペリー・P・テノリオ氏はマリアナについて、「さまざまな客層が楽しめる観光地」とアピール。セミナーでも参加者に向けて「現地に来て、トロピカルな気候の中でリラックスすることを希望する家族や団体、FITといった、すべての客層に適した環境だと分かっていただけたのでは」と、多くの旅行会社のスタッフが実際に現地を訪れたことに期待を示す。

 セミナー後のインタビューでは「消費者の動向を確認しながら、旅行会社と密にコミュニケーションをとりながらプロモーションをしていく」と、今後の方針を明かした。日本マーケットはFITよりもパッケージを利用する消費者の方が多く、マリアナ観光局では旅行会社を重視している。そのため、消費者と旅行会社の双方に向けたマーケティング活動、さまざまなプロモーションにより、日本人の訪問者数の増加をめざす考えだ。

 日本以外のマーケットについては、アジア諸国の経済不況の現状を踏まえ、日本市場が最重要との考えは変わらないものの、今後はロシアや韓国などの他のマーケットにも力を入れていく。テニアン島には中国資本によるカジノが2軒建設されているほか、将来に中国からの直行便が飛ぶ可能性についても示唆する。また、日本サイパン旅行協会(JSTA)も韓国の中小の旅行会社による団体と協力し、共同でのビーチ清掃などの交流を開始しており、JSTA会長の酒井英紀氏によるとOZの就航などで空港が混雑する際、上手に運営できるような関係を深めていく予定だ。

 なお、サイパンでの電力供給問題については現在落ち着いており、各ホテルでは自家発電で対応。宿泊客には問題がない状態に回復している。


団体・教育旅行の5つのキーワード

  MVAは団体・教育旅行の販売キーワードとして、「高い満足感」「アクセスのよさ」「付加価値」「オリジナリティ」「離島活用」の5点をアピール。教育旅行は「マリアナ教育旅行ガイド」を作成し、需要喚起をしている。サイパンは日本からわずか3時間の距離で自然や環境、平和学習、学校交流といったさまざまなテーマで教育旅行が可能であり、アクセスのよさから修学旅行をはじめ、注目度が高い。

 修学旅行では、地元の学校との交流が可能。クラス単位の交流は私立校でもしているが、学年単位の交流は公立校が受け入れている。現在3校ある公立高校のうち、新規の受け入れをしているのは、教育目標にツーリズムを掲げるカグマン高校。希望が多いため、その他の2校はすでに実績のある学校に限っているという。ただし、交流の実施時期は6月上旬から8月上旬の夏休み、12月中旬から1月初旬までの冬休み、といった長期休暇や試験日程を考慮する必要がある。日本からの希望も多いが、受け入れ先が不足しているのが現状で、交流を希望する学校には相手校を探すことが課題だ。

 また、各ホテルでは団体旅行向けにさまざまなプランを展開している。パシフィック・アイランド・クラブ・サイパン(PIC)は7月にオープンしたバーベキューレストランに、12月には巨大テントを設置し、雨の日でも対応可能とする。修学旅行から会社のインセンティブにも対応しており、人気のプランだ。また、2週間前までに申し込むと、スポーツチャレンジ(20名以上)のプログラムを無料でアレンジし、カヤックレースやムカデ競争などチームビルディングに効果のある種目で楽しむことができるのが人気だ。今回のインスペクションでは千葉県の高等学校の修学旅行と偶然に出会った。

 このほか、マニャガハ島も団体旅行の受け入れに対応している。サイパンから船で15分程度という立地にあるサンゴ礁の無人島であり、スノーケリングをはじめとしたさまざまなマリンアクティビティができることが強みだ。島を貸し切る「プライベートナイトパーティプラン」があり、夕焼けを背景に、120人規模のビュッフェディナーが開催できる。マリアナでの団体・教育旅行の場合、座席やホテルの確保が課題だが、オフシーズンであれば定期便だけで同一ホテルで同一出発日の場合、100人規模の送客は可能だという。