取材ノート:アジア大旅行時代、日本の海外旅行市場が生き残るためには

▽デスティネーションとソースマーケットの2面性をもつアジア諸国
太平洋アジア観光協会(PATA)ジョン・コルドフスキ氏は世界観光機関(UNWTO)のデータを用いて、およびアジア各国の現状を伝えた。UNWTOが発表した2008年の海外旅行者数の成長率予測によると、世界平均が前年比3%増から4%増(2007年は6.1%増)であるのに対し、アジア太平洋地域は8%増から10%増(2007年は10.2%増)で、全世界的に成長が減速傾向にあるなかで、アジア太平洋地域はほぼ前年並みの増加が見込まれている。また、アジア諸国はデスティネーションであると同時にソースマーケットであることを指摘し、PATAでは2010年までの3年間、アジアのインバウンドは毎年8%増加し、3億5000万人に達すると予測している。
特に実数では中国、シンガポール、マレーシアの伸びが顕著で、上位10位以内には韓国やタイ、香港も入る。一方で日本人旅行者数の割合は縮小しており、コドルフスキ氏は、交渉力の低下をキーワードに挙げた。アジア諸国の市場が成長するなかで、「デスティネーション側は、減少した日本人旅行者を増加させるよりも、中国などから旅行者を獲得することに注力する」とし、「日本人が望まれていないわけではなく、他に成長の早い市場があるからだということ、そしてデスティネーションとして単一のマーケットが破綻するのを防がなければならないことを理解しなくてはならない」と伝えた。
さらに、コルドフスキ氏は今後、航空会社のM&Aが進むと予想。現在は利益をあげなくとも政府の援助がある安心感から非効率な運営をする航空会社があり、そうした企業は淘汰されていくだろうと述べた。
▽新たな休暇制度の導入で更なる成長が予想される中国海外旅行市場

2006年の旅行者の構成は女性が54.8%、男性が45.2%で、年齢層では18歳から30歳までが45.9%、31歳から50歳までが35.1%で、若い世代が積極的に海外旅行をしている。また、一世帯あたりの1ヶ月あたりの収入は1万元(約15万5000円)以下が44%で最も多く、1万元以上3万元(約46万5000円)未満が38%。海外旅行をする理由は、「見識を深めたい」(27.9%)、「心身のリラックスのため」(22%)など、経済成長が著しい背景が反映されているという。
旅行形態は周遊型のパッケージ商品の利用が主流で、訪問地の数に比例して見識が広がるという考え方があるようだ。また、移動やビザのコストから一度の旅行で可能な限り多くの土地を訪問したいという意見が多い。一方で、ロングステイやテーマ性の強いツアー、ラグジュアリー商品の需要も富裕層を中心に注目されはじめている。そのほか、MICE市場も堅調に推移している。
現在の課題として、旅行会社間の価格競争、渡航先での中国人旅行者の素行、旅行会社に対する法規制の不完全性などが挙げられる。これに対し、政府は旅行関連の法制度の整備などに努めており、少しずつ健全な市場へと変化してきているという。
▽日本市場の仕入環境の変化と今後の展望

▽日中韓の連携で相乗効果をはかり、海外旅行市場の活性化を

ハナツアー代表理事兼社長のクォン・ヒーソク氏は「日本、中国、韓国の3国が連携して相乗効果をはかることが大切だ」と言及。今後の展望として、オープンスカイ政策によるLCCビジネスの拡大で旅行費用が減少し、燃油価格の高騰により近距離旅行が増加する。日本と韓国の高齢化で余暇が拡大し、アウトバウンド市場はさらに伸びるとした。
▽コンチネンタル航空の中国、インド、日本における戦略

中国はビジネスとレジャーの双方でアメリカへの需要が高く、10日間で多くの都市を周遊する30年前の日本の旅行スタイルと同じ傾向がみられる。太平洋路線はニューヨークにベースとする戦略で、この10年間で中国/ニューヨーク間の市場は2.5倍に拡大した。成田、北京、上海で比較すると、依然として成田が圧倒的に供給量は多いが、2003年のSARS以降は北京がとくに伸びている。CO日本支社長のチャールズ・ダンカン氏は「今後もニューヨークをハブにしながら、中国でグアム線を開設したい」と語る。インドでは、05年11月にニューデリーに、07年10月にムンバイにそれぞれ直行便を就航。毎日1200人をインドからニューヨークに運んでおり、直行便の需要は現在も拡大しているという。
現在COは、ロタ島へのチャーター便やビジネスクラス商品などターゲットを絞り特化した商品と品質へのこだわりが奏功しているとみている。今後も、ニューヨーク、南米、ミクロネシアの3路線に重点をおいて展開する方針だ。またダンカン氏は、2010年の首都圏空港発着枠の拡大の際に、成田の集客力を失わないためには空港へのアクセス改善が必要と言及した。具体的な例として日本橋から30分で行けるように、とした。さらにLCCについてはマーケットへの参入により競争力が求められるようになり、全体が活性化すると前向きな姿勢を示し、LCCは機材の老朽化などの要因から相対的にみてそれほどローコストではなくなりつつあるのではないかとの見解を示した。
中国を中心にアジアの海外旅行市場は今後も拡大する見通しで、その影響を受け、成熟した日本市場の価値が低下してきている。しかし、これは新たな商機を生み出す機会でもある。この機会を上手く捉え、他国を意識し、競争だけではなく協力の姿勢で、これまでとは異なるビジネスモデルを構築しなければならない。