求人情報

現地レポート:ノルウェー 周辺観光を充実させ、フィヨルド本来の魅力を増強

  • 2008年5月29日
周辺観光を充実させ、フィヨルド本来の魅力を増強
壮大な自然に包まれる、極上の休日で差別化を


最近のフィヨルド観光は、遠くから眺めるだけで氷河見学を済ますコースや、リゾートでは宿泊するだけのスケジュールが多くなっている。しかし、日本でフィヨルド観光をメジャーにしたシニア向けの高額商品では、氷河に立ち寄ったり、エリア内のリゾートで滞在するなど、フィヨルド周辺の観光も人気であった。せっかくなら、フィヨルドの近くをじっくりと楽しみたいと思う旅行者は多いはず。こうした体験を組み込むことで、商品の差別化をはかり、人気のフィヨルド旅行の提案にふくらみをもたせたい。(取材協力:スカンジナビア政府観光局)



フィヨルドを見下ろす高級リゾートでゆったりくつろぐ

 ハダンゲルフィヨルド・エリアの「ホテル・ウレンスヴァン」は、ノルウェー皇族の利用も多い老舗の高級リゾート。1846年の開業、使われてきたアンティークな家具は、今ではインテリアとして館内のあちこちを飾っており、館内を歩くだけでも見ごたえがある。また、ノルウェーの代表的な作曲家グリーグが愛し、毎年滞在していたことでも知られている。

 オーナーは一族に代々引き継がれ、伝統を守りながらも、革新的な改修も施してきた。08年5月には、客室を増やすため増築を開始。プール、スポーツ施設なども充実している。ホテルの目の前にフィヨルドが広がり、裏手にはハイキングコースがある山もある。日本人の滞在は1泊が一般的だが、ぜひもう少し延ばし、リゾート内やその周辺をじっくりと味わいたい。

 例えば、館内には明るい色彩で統一されたリラクゼーション・ルームがいくつもあり、まるで自宅のリビングのようにくつろげる。ワインセラーや図書館のほか、スカッシュ、ピンポン、室内テニス、プールなどインドアスポーツの設備も充実。休養を兼ねて、一日ホテルで過ごすのも旅先ならではの贅沢だ。18名程度まで入ることができるワインセラーでのディナーや、野外でのグリークのコンサートなど特殊手配も対応してくれる。

 さらに、リゾートの周辺は「ノルウェーの果樹園」とも呼ばれ、5月にはリンゴやナシ、サクランボ、プラムなどの花が咲きそろい、7月から9月には実りの季節を迎える。リゾートの裏手の斜面にも広大な果樹園が広がっており、散歩程度から本格的なハイキングまで、いくつものフルーツ・トレイルが整備されている。自然からエネルギーを得る生き方を、ノルウェーの人々は「Powered by nature」と呼んでいる。そんな素敵な時間の過ごし方を、商品造成で提案したい。

 なお、同ホテルにとって日本人はノルウェー人に継ぐ、2番目に大きなマーケットで、2007年はグループを中心に3100名の日本人が宿泊した。最近は、オフシーズンといえる4月に安いツアーを組む旅行会社もでてきており、今夏のベルゲン便の直行便増加に期待しつつ、今後も日本マーケットに力を入れていく予定だ。





鉄道ファンの憧れ、フロム鉄道、車窓から大自然を望む

 フロム/ミューダール間の約20キロを約1時間で結ぶフロム鉄道は、世界各国から旅行者が利用する人気の鉄道。2007年の乗客数は前年比10%増で、年々利用者が増加しているという。夏はヨーロッパ人、オフシーズンは日本人を中心としたアジアからの旅客がメイン。日本の旅行商品としてもフィヨルドを巡るコースで組み込まれる定番の素材だ。特に、男性には人気が高く、女性主流といわれる旅行市場のなかで、男性向けの商品として大自然と組み合わせた提案の可能性がある。

 フロム鉄道の魅力はなんといっても、フロム渓谷沿いを走る車窓からの壮大な風景の眺めだ。フロムを出発するとしばらく果樹や林の間を走り、谷が少し広くなった所では羊や山羊に出会う。しばらく進むと右手にリョウアンネの滝が現れる。そこから先は万年雪を頂く山々や切り立った絶壁、流れ落ちる滝などスケールの大きな風景の中、列車は右へ左へとカーブを切りながらひたすら高度を上げていく。できれば窓が開く席に座り、景色と共に頬に触れる風を味わいたい。

 途中のショス滝では、5分ほどのフォトタイムがある。春から夏にかけての雪解けシーズンは水量が多く、迫力満点。ふと目を上げると、かなた高くに行く手の線路が見え隠れして、「よくもこんな急勾配を走るものだ」と改めて感心する。フロム鉄道はフロム/ミューダール間には約864メートルもの標高差があるのだ。

 ちなみに、基点となるフロムは人口400人の小さな町だが、世界遺産のネーロイフィヨルド・クルーズとフロム鉄道を目的に、年間60万人の観光客が訪れる。山と海に囲まれたフロムならではのアクティビティも多い。ハイキングやサイクリング、ヨットやカヌーのほか、ボートでフィヨルドを走るフィヨルドサファリも希望に応じてアレンジ可能。また、フロム駅から徒歩1分の場所にある「フレトハイム・ホテル」からは、ガラス張りのフロントやレストラン、バーから美しいフィヨルドが目前に見渡せる。付近はノルウェーのオーガニックやスローフードの中心地としても知られており、レストランでは地元の野菜や果物、ヤギや牛の肉を使った創作料理を提供。フロムでの滞在もフィヨルドツアーに
変化を加える要素になりそうだ。





沿岸急行船「フッティルーテン」でカジュアルクルーズ

 「世界でもっとも美しい船旅」。そう絶賛されるのが、ベルゲンから北部のヒルケネスまで34の港に寄航しながら、11日かけて往復する沿岸急行船、フッティルーテンだ。クルーズは四季を通じて毎日運行され、夏は世界遺産のガイランゲルフィヨルドへ。雪を頂く1500メートルの山々とそれがフィヨルドに映り込むダイナミックな景観は、ただ息を飲むばかりだ。

 コースを組むメリットとしては、区間乗車ができることがあげられる。例えば、ベルゲンを夕方出発し、もうひとつのフィヨルドの起点となるオ―レスンには翌朝到着する、というルートに乗船も可能。移動手段だけでなく、移動中にも体験や感動を提供でき、旅の印象をより深めるはずだ。沿岸の人々の生活船としても活躍しているので、ローカルとの交流が生まれるのも特徴だ。

 日本からの予約も伸びが大きく、2007年は1500名、2008年は4月段階で既に予約数が前年実績の倍増の3000名に達した。今年末までには、さらなる数値の伸びを期待し、日本マーケットに対するプロモーションを強化していく方針。ただしシーズン中は非常に混むので、日本からの予約が必須だ。





フィヨルドに欠かせない氷河、仕組みを知ればさらに強い印象に


 グレイシャーブルーと呼ばれる氷河の独特の色は、光の屈
折によって生まれるもの。この青の美しさが、氷河観光の魅
力の一つだ。しかし、単に表面をみるだけでなく、その仕組
みを知れば、よりその美しさが心に染み入るに違いない。

 ぜひ訪れたいのが、ヨーステダール地方の氷河博物館。ヨ
ーステダール氷河の歴史や氷河の発生メカニズム、クレバス、
マンモスなどに関する様々な資料が展示されている。また、
巨大なスクリーンでは30分ごとにドキュメンタリータッチの
氷河の空撮映像を上映。男女4人が氷河を探検するというス
トーリーで、アイスクライミングやテレマークでの氷河下降、
氷上での幕営など、まるで氷河に飛び込んだようなスリリン
グな気持ちを味わえる。