人材育成と付加価値商品が需要を生む−JATA経営フォーラム
JATA経営フォーラムの分科会C「海外から見た日本市場−ニッポンのポジショニングを考える−」において、アジア諸国の海外旅行者が増加するものの、日本の海外旅行市場は燃油サーチャージ額、若い世代の人口減少と海外旅行離れなど、大きな変化が到来しており、今後の対応について意見が交わされた。モデレーターにはジャルパック執行役員東京支店支店長の赤平成樹氏、コメンテーターに全米旅行産業協会(TIA)日本代表の井上嘉世子氏、玉川大学経営学部観光経営学科教授の折戸晴雄氏、マリオット・インターナショナル本部長の勝野邦男氏、日本旅行営業企画部海外旅行事業部担当部長の浜田輝明氏。
アメリカへの旅行を促進する活動を手がける井上氏は、アメリカから見た日本市場について、日本人の訪米旅行者数が2000年の500万人から減少を続け360万人となった理由について、9.11やSARSなどの外的環境に加え、「アメリカ」が国として統一したプロモーションが欠如していること、さらに航空座席数の減少をあげる。アメリカは政府としての観光促進活動を地域単位に委譲しており、世界中でアメリカ全体の観光を促進する活動を展開していた商務省観光局(USTTA)が閉鎖した余波について言及。ただし、旅行者数は減少する傾向にあるものの、日本人のアメリカでの消費額はトップの座にあり、日本人特有の行儀のよさは評価が高く、海外からの旅行者として現在も重要な存在として捉えられているという。
▽参考記事
◆米パウワウ開幕、商務省長官は「アメリカ=『移民の国』」のイメージ復活に向けた努力を示唆(2006/05/10)
◆エクスペディア調査、「日本人は世界最良の旅行客」−10項目中4項目で1位(2007/05/29)
▽ホテル業界の現状と課題−商習慣の見直しを
日本の旅行会社の信用力、旅行者の質は評価が高いものの、勝野氏は海外のホテルからの視点として、日本からの旅行者が減少、アジア諸国からの旅行客が増加しており、相対的に日本市場の優先順位が下がってしまっていると現状を語る。課題はアロットメントの有効活用と、グループの取扱い。「ホテルはイールドコントロールの視点が強まり、今後は日本の従来の商習慣の手法である客室を先に押さえ、後から様々な追加やキャンセルを依頼するといったことは難しくなる」と明言。「グループは何をしたいのか、だからこれが必要だ、と目的を明確に示し、希望は最初に伝えるようにしていかなければ」と旅行会社の仕事の流れを変えるポイントを指摘する。この点は、浜田氏も販売責任と仕入責任について「意識を考え直す必要がある」とし、従来の商習慣の見直しを強く示唆する。
▽参考記事
◆日本の旅行業界の商習慣、グローバル化に対応を−対等関係が原則(2007/09/18)
◆クローズアップ 「グローバル市場と日本の取引・商習慣」(2007/10/11)
▽若手の人材育成
課題を解決する方策の一つとして、若年層の人材育成の重要性がクローズアップされている。井上氏は若年層の取り込みのため、最前線で販売を担当する若い世代に期待感を表明。こうしたスタッフを対象としたファムツアーを実施し、実際に現地を訪れてもらうことで経験と知識をあわせもつ人材育成を図ることを方策として挙げる。
こうした考えに対し、旅行会社の立場から浜田氏は、人材育成という側面からは販売の時間を確保するため添乗が減っていること、ツアーコースそのものがコスト削減の観点から添乗員がガイドをすることも一部で見られること、社員では担えない時間的な余裕にくわえ、研修旅行が減少していることにも言及。そうした現状でありながらも、「旅行代理店」ではなく「旅行会社」として企画力と提案力で消費者からコンサルティング料を徴収できるほど、付加価値を高める必要があることと、そのための人材育成へ費用や時間を投資する重要性について認識を改めているという。
▽価格競争の脱却、価値の創造へ
コメンテーター全員が言及した価格競争からの脱却について井上氏は、テーマパークを組み込んだパッケージ商品が広く出まわったアメリカへの旅行市場はラスベガス、ハワイ、ロサンゼルスといった特定のデスティネーションに集中、かつ内容も同様の商品が並び価格競争へ突入した経緯を振り返る。訪問者数の伸びはあったものの、2000年後半からかげりがでたとし、今後の取り組みは新しいデスティネーションの創造と、そのプロモーションにメディアの積極的な活用により、特に女性誌で多く取り上げられ人気を集めているデスティネーションの例としてセドナの好例をあげる。浜田氏は、売り手の都合ではなく、顧客目線に立った付加価値の高い商品の開発により提案型への変貌が必須として、旅行会社というよりも、1グループ毎に細部にまでわたる企画・手配をする「インセンティブ・プランナー」のようなスタッフが活躍する可能性があるという。
今後、各種のキャンペーンのあり方についても、井上氏は数や収益性の観点から行う団塊世代だけでなく、業界全体で若年層の海外への興味を喚起しなければならない時期であるという。折戸氏は「win-win」をキーワードに、サプライヤーであるホテルや航空会社が旅行会社、そして現地ガイドと三者が協力し、知恵を絞って「行ってみたい」と思うマーケットを生み出す必要があるという。
アメリカへの旅行を促進する活動を手がける井上氏は、アメリカから見た日本市場について、日本人の訪米旅行者数が2000年の500万人から減少を続け360万人となった理由について、9.11やSARSなどの外的環境に加え、「アメリカ」が国として統一したプロモーションが欠如していること、さらに航空座席数の減少をあげる。アメリカは政府としての観光促進活動を地域単位に委譲しており、世界中でアメリカ全体の観光を促進する活動を展開していた商務省観光局(USTTA)が閉鎖した余波について言及。ただし、旅行者数は減少する傾向にあるものの、日本人のアメリカでの消費額はトップの座にあり、日本人特有の行儀のよさは評価が高く、海外からの旅行者として現在も重要な存在として捉えられているという。
▽参考記事
◆米パウワウ開幕、商務省長官は「アメリカ=『移民の国』」のイメージ復活に向けた努力を示唆(2006/05/10)
◆エクスペディア調査、「日本人は世界最良の旅行客」−10項目中4項目で1位(2007/05/29)
▽ホテル業界の現状と課題−商習慣の見直しを
日本の旅行会社の信用力、旅行者の質は評価が高いものの、勝野氏は海外のホテルからの視点として、日本からの旅行者が減少、アジア諸国からの旅行客が増加しており、相対的に日本市場の優先順位が下がってしまっていると現状を語る。課題はアロットメントの有効活用と、グループの取扱い。「ホテルはイールドコントロールの視点が強まり、今後は日本の従来の商習慣の手法である客室を先に押さえ、後から様々な追加やキャンセルを依頼するといったことは難しくなる」と明言。「グループは何をしたいのか、だからこれが必要だ、と目的を明確に示し、希望は最初に伝えるようにしていかなければ」と旅行会社の仕事の流れを変えるポイントを指摘する。この点は、浜田氏も販売責任と仕入責任について「意識を考え直す必要がある」とし、従来の商習慣の見直しを強く示唆する。
▽参考記事
◆日本の旅行業界の商習慣、グローバル化に対応を−対等関係が原則(2007/09/18)
◆クローズアップ 「グローバル市場と日本の取引・商習慣」(2007/10/11)
▽若手の人材育成
課題を解決する方策の一つとして、若年層の人材育成の重要性がクローズアップされている。井上氏は若年層の取り込みのため、最前線で販売を担当する若い世代に期待感を表明。こうしたスタッフを対象としたファムツアーを実施し、実際に現地を訪れてもらうことで経験と知識をあわせもつ人材育成を図ることを方策として挙げる。
こうした考えに対し、旅行会社の立場から浜田氏は、人材育成という側面からは販売の時間を確保するため添乗が減っていること、ツアーコースそのものがコスト削減の観点から添乗員がガイドをすることも一部で見られること、社員では担えない時間的な余裕にくわえ、研修旅行が減少していることにも言及。そうした現状でありながらも、「旅行代理店」ではなく「旅行会社」として企画力と提案力で消費者からコンサルティング料を徴収できるほど、付加価値を高める必要があることと、そのための人材育成へ費用や時間を投資する重要性について認識を改めているという。
▽価格競争の脱却、価値の創造へ
コメンテーター全員が言及した価格競争からの脱却について井上氏は、テーマパークを組み込んだパッケージ商品が広く出まわったアメリカへの旅行市場はラスベガス、ハワイ、ロサンゼルスといった特定のデスティネーションに集中、かつ内容も同様の商品が並び価格競争へ突入した経緯を振り返る。訪問者数の伸びはあったものの、2000年後半からかげりがでたとし、今後の取り組みは新しいデスティネーションの創造と、そのプロモーションにメディアの積極的な活用により、特に女性誌で多く取り上げられ人気を集めているデスティネーションの例としてセドナの好例をあげる。浜田氏は、売り手の都合ではなく、顧客目線に立った付加価値の高い商品の開発により提案型への変貌が必須として、旅行会社というよりも、1グループ毎に細部にまでわたる企画・手配をする「インセンティブ・プランナー」のようなスタッフが活躍する可能性があるという。
今後、各種のキャンペーンのあり方についても、井上氏は数や収益性の観点から行う団塊世代だけでなく、業界全体で若年層の海外への興味を喚起しなければならない時期であるという。折戸氏は「win-win」をキーワードに、サプライヤーであるホテルや航空会社が旅行会社、そして現地ガイドと三者が協力し、知恵を絞って「行ってみたい」と思うマーケットを生み出す必要があるという。