JAMレポート、オーストラリア各州が独自の魅力再提案−回復に向けた施策も展開

  • 2008年2月29日
 オーストラリア政府観光局(TA)はこのほど、ジャパン・オーストラリア・ミッション(JAM)を開催、日本マーケットに期待する各州の観光局や現地のサプライヤーが多数来日し、積極的に商談を進めた。参加者はセラーが54社の62名、日本側のバイヤーが49社の53名で、このほか州からの観光局が7団体、航空会社は日本航空(JL)とカンタス航空(QF)とジェットスター(JQ)であった。日本からのオーストラリア旅行の盛り返しに向けて熱のこもった対話が進む会場で、各州観光局に2008年の方針を聞いた。


▽ノーザン・テリトリー政府観光局〜「本当にリラックスできる場所」

 ノーザン・テリトリーは2007年9月までの1年間、日本人訪問者数は前年比15.5%減の4万3000人と大きく減少した。ノーザン・テリトリー政府観光局日本局長のリチャード・ドイル氏は、「我々の魅力は文化と自然」と改めて強調。ダーウィンやアリススプリングスをゲートウェイとして、「ウルル−カタ・ジュタ国立公園」と「カカドゥ国立公園」の2つの世界遺産を前面に打ち出す方針は変わらない。

 その中で今年は特に、「本当にリラックスできるデスティネーション」としてもアピールしたい考えだ。オーストラリア国内ではすでに、「Mojo(元気を意味するオーストラリアのスラング)」をテーマにプロモーションを展開しており、日本でも「あなたの元気を見つけてください」といったテーマを打ち出す考えだ。ドイル氏は、「ノーザン・テリトリーは、雄大な大自然に囲まれて『リラックスせざるを得ない』ような場所。忙しい日本人にぴったり」と語り、早ければ、2008年後半に開始する方針だ。



▽ニュー・サウス・ウェールズ州観光局〜世界遺産・オペラハウスツアーが人気

 ニュー・サウス・ウェールズ州観光局局長の寺本彬氏は2008年の方針について、「世界遺産と富裕層、学生旅行の3本柱」で誘致を促進するという。世界遺産では、TAの世界遺産キャンペーンの効果もあり、オペラハウスの日本語館内ツアーの利用が増え、英語も含めた全ての言語で日本語ツアーの参加者が最多となった。オペラハウス内でのコンサートも、旅行会社が旅行者の希望に応じて手配している。また、ブルー・マウンテンやロード・ハウ島などの自然も前面に打ち出す考えで、「ブルー・マウンテンに2009年に完成を予定しているエミレーツ航空(EK)グループの高級リゾートをはじめ、富裕層へのアピールを強める」(寺本氏)としている。

 2007年9月まで1年間の日本人訪問者数は、9.8%減の23万4000人となった。ただし、グループやパッケージが減少した中で、修学旅行や語学研修旅行、技術視察旅行などの教育旅行需要は強いという。日本からの学校受入数は、2005年から3年連続で全世界の都市別では首位を獲得しており、「学生マーケットは死守したい」という。



▽ビクトリア州観光局 〜体験型の商品づくり進め、人数の前年維持ねらう

 2006/2007年度(06年10月〜07年9月)の日本人訪問者数は、前年比3.5%減の6万1000人。ビクトリア州観光局日本地区局長の永井泉氏は、「オーストラリア全体の9.3%減と比べ、減少幅は少ない」とし、航空座席減少の影響が他州に比べて抑えられたと説明する。メディア露出に力を入れたこと、旅行会社の商品の見直しを進め、消費者のニーズにあった体験型の商品造成も促進している。

 体験型商品では、例えば、動物園で動物の健康チェックや餌付けなどの体験ができる「動物園飼育員体験」プログラムの人気が高まってきている。FAMツアー参加者の反応も良く、今後はグループだけでなく、FITの対応も可能にしたいという。このほか、メルボルンの街歩きを紹介する散歩マップも作成。これら施策は、メルボルンとビクトリア州のファンを増やすことを目的としており、課題であるリピーター獲得につなげていく。また、「教育旅行も大事なマーケット」で、教員を対象にした研修などにより、「質を求める学校を誘致していきたい」という。



▽南オーストラリア州政府観光局 〜素材の多様さを全面に

 南オーストラリア州政府観光局は2008年に、定番素材に加えて新素材を提案するなど、州の素材の多様さを前面に打ち出し、リピーターの獲得をめざす。ターゲットは、引き続きアクティブシニアと教育、学生旅行。新素材は、昨年度下期から商品化が始まっており、ワイナリー巡りの後に自分でワインをブレンドできるツアーや、車や船を自分で運転してオーストラリアの大きさを体感するツアーなどが発売されている。このうち、マレー川でのハウスボート・クルーズの商品は、90万円以上の価格設定ながら、特に反応がよかったという。同観光局の斉藤麻帆氏は、「ニーズにあった商品であれば、マーケットはすぐに動くということを実感した」と語る。

 今年は、富裕層マーケットに、例えばカンガルー島に3月に完成する高級リゾート「サザン・オーシャン・ロッジ」などもアピールする。ワインも引き続き提案する方針で、地元のワインを購入して持ち込むと、コンテスト受賞歴のあるシェフがワインにあった料理を調理してくれる宿泊施設なども紹介したいという。

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▽タスマニア州政府観光局 〜エコイメージ定着、異業種とも協力へ

 タスマニア州政府観光局日本地区局長のアダム・パイク氏によると、日本の消費者には、タスマニアが「クリーン」で「グリーン」、「エコ」なイメージが定着し、好まれているという。訪問者数は、2006/2007年度(06年10月〜07年9月)は8.7%増の1万人となっている。オーストラリア政府観光局(TA)による世界遺産キャンペーンも、「非常に助けになっている」という。さらに、カンタス航空(QF)が昨年、周遊型の航空券「オージーエアパス」で、ホバートを運賃の安い「ゾーン1」に組み入れたことから、FITが増加しているという。

 プロモーションでは、メディア露出を継続するほか、これまでもアシックスやモンベルなど、タスマニアのイメージを販売促進に利用したい企業とタイアップしており、今年も異業種との協力の機会を探る考えだ。



▽西オーストラリア州政府観光局〜5万人規模をコンスタントに

 西オーストラリア州政府観光局日本局長の吉澤英樹氏は、2006/2007年度(06年10月〜07年9月)の日本人訪問者数は5.7%増の4万6000人と好調に推移したことをあげ、「今後も5万人規模をコンスタントにねらう」と目標を語った。この好調さを受け、JAMには過去最多となる10社12名が参加。ただし、好調なオーストラリア経済から豪ドル高に為替相場が推移しており、「4月1日以降の地上費が2割から3割高騰しそう」だ。しかし、「日本に期待してくれるサプライヤーがいるうちは、彼らに利益をもたらしたい。数を諦めることは絶対にない」と語り、約5万人を必達目標と位置づけた。

 08年度の方針としては、既に「点から線への展開」を掲げている。これは、パースとコーラルコースト、ロットネスト島などの周遊コースとすることで推進する考え。ロットネスト島は、パースの海岸から沖合い19キロメートルの位置にあり、A級自然保護指定国立公園として手付かずの自然が残っている。ロットネスト島へのフェリーや日帰りツアーを展開するロットネストエクスプレスによると、現在は約3万人の日本人が訪れており、同社主導で日本語で観光案内の小冊子を作成、更なる集客をめざしているところだ。

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▽クイーンズランド州観光公社〜地方でセミナーやFAMツアー強化

 クイーンズランド州観光公社は、航空座席減の影響に直面し、前年度11.4%減の36万3000人となった。このため、JAM終了後には地方発の需要喚起をねらい、ケアンズ観光局とともに鹿児島や熊本、広島など6都市でセミナーを開催する。また、大阪、名古屋地区のカウンタースタッフ合計約70名を対象として、ジェットスター(JQ)と共同で、ケアンズのFAMツアーを計画中だ。このほか、コンチネンタル航空(CO)と4月17日に広島、仙台、福岡から20名規模のプレスツアーを実施する予定。COの仙台、福岡、広島線はグアム経由ケアンズだが、相当数の利用があり、クイーンズランド観光公社のポール・サマーズ氏によると、グアム/ケアンズ線の座席利用率は「80%くらい」という。COが燃油サーチャージ額を、ケアンズとグアムで同額に設定していることも、旅行費用の総額の観点からメリットだという。

 そのほか、カンタス航空(QF)と共同で、エイビーロードでケアンズ特集を実施するほか、オールアバウトでも2月末にゴールドコーストを紹介するなど、メディア露出を継続している。また、「クイーンズランド州」としての認知向上をねらい、州の「色」を切り口としたウェブサイト、「queensland-colors.jp」を開設。「総天然色、クイーンズランド」として130色それぞれに画像や説明を付け、いろんな人に見てもらえるようにしたという。

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