ハワイ体験レポート−その7 ビショップ・ミュージアムのカルチャープログラム
博物館は“見学”から“体験”の場に
〜ビショップ・ミュージアムのカルチャープログラム〜
ビショップ博物館は、カメハメハ王家の土地と資産を相続したパウアヒ王女と結婚したビショップ氏が、妻の没後、ハワイ文化に関する遺産を受け継ぎ、1889年に誕生したもの。ハワイや太平洋の島々に受け継がれてきた文化と暮らしを物語る貴重な展示品120万点以上を所蔵する、ハワイとポリネシア文化の殿堂だ。展示品を見て回るだけでもこの地域の伝統や歴史に目を開かれるだろうが、実際にハワイの文化を体験すれば、理解と興味が深まるのは間違いない。フラのレッスンやレイ作りのワークショップなどは、リゾート・ホテルやショッピングモールでも体験できるが、由緒ある博物館という環境がひと味違う雰囲気を盛り上げてくれる。レッスン後はビショップ博物館から「修了証明書」が発行されるのも嬉しい。
(現地取材:宮田麻未、写真:神尾明朗)
◆おなじみの曲でウクレレレッスンスタート
ビショップ博物館は、広々とした芝生の周辺にハワイの自然をテーマにした科学館、プラネタリウム、ハワイの文化史的資料を中心に展示したハワイアン・ホールなどがある。椰子の木々が風に揺れて、敷地を散策するだけでもすがすがしい気分になる。
ワークショップ講師のN先生はとてもエレガントな雰囲気の女性。おだやかな口調で話すので、初心者でもリラックスしてレッスンが受けられそうだ。体験ツアーは10人以上のグループで、講師と日本語通訳がつく。レイ作りやフラ、ウクレレのレッスンなど、幾つかのプログラムを組み合わせることができ、一つのプログラムはだいたい30分。
私たちはウクレレとフラ、そしてレイ作りを体験することになった。博物館を訪れる前にウクレレの工場見学をしていた私たちは、「ウクレレを弾いてみたい!」という気分でかなり盛り上がっていた。この妙に熱い雰囲気に、先生はちょっと驚いているようだ。習ったのはおなじみの「ユーアー・マイ・サンシャイン」。使うコードは4つだけだが、小さなウクレレのネックで4本の弦をコード通り押さえるのはけっこう難しい。ウクレレはノミ(ウク)が跳ねる(レレ)という意味だそうで、細かくすばやい指の動きがポイント。コードが変わるごとに「えーと…」と、指をもたもた動かしているようでは、ノミのような動きには程遠い。それでも知っている歌なので、なんとなく弾けているような気分になってしまうのがおもしろい。先生が苦笑していたように見えたのは気のせいか。
▽関連情報
ハワイ体験レポート−その5 「コアロハ・ウクレレ」の工場見学ワークショップ(2008/01/25)
◆フラ体験で悲恋の主人公気分に
フラのレッスンでは、「アレコキ」と呼ばれる悲恋の歌に挑戦。滝や波のうねりなどに寄せて恋人を思う気持ちを踊りで表現したものだ。まずは基本のステップ。先生は裸足になって、スカートの裾を少し持ち上げて、足の動きを見せてくださる。次は手の動き。流れ落ちる水の動きを揺れる指で表現したり、心の痛みや涙などの感情を腕の動きで見せたり、歌われている詩の内容を体全体で表すのがフラの基本だ。
とはいえ、音楽のテンポはゆっくりしているが、手と足がいっしょに動いてくれない。足のステップは2種類だけ。頭にはしっかり入ったはずだ。手の動きも、先生がくわしく詩の内容を教えてくれたのだが、体が思うように動いてくれない。先生のように、流れるような優雅な動きにならず、体がポキポキと音をたてているような感じにしか動けない。これではせっかくの悲恋のムードも台無しだ。
先生は根気良く、何度も繰り返して教えてくださるが、私の手の動きがなんとなく盆踊りのようになってしまうのが情けない。クラスの仲間も自分の姿に笑い出してしまったが、目つきは真剣になっていく。相変わらずぎこちない動きだが、踊る本人は何回か踊ると、すっかり悲恋の主人公になったような気分になってしまうのだ。これがフラの魅力なのだろうか。日本にはフラに夢中になっている人がたくさんいるが、“はまって”しまうのもうなずける。フラ教室の生徒たちばかりでなく、一般の旅行者にとってもフラに関連したイベントへの参加はハワイらしい楽しみになることだろう。
◆レイ作りで思い出を編みこむ
ハワイから戻った私の机の前には、ティー・リーフの葉で作ったレイが飾られている。できたばかりときにはランの花が付いていたが、今は葉の部分だけしか残っていないシンプルなものだ。しかし、ティー・リーフを使ったレイは、心身を癒し、邪気を払う力があるそうだ。そのせいか、葉の緑色は少し色あせてきたが、それを見るたびにハワイのさまざまな思い出がよみがえってきて、穏やかな気持ちになれる。
このレイもビショップ博物館の体験プログラムで作ったもの。2枚のティー・リーフをねじっては交差させる単純な作業を繰り返す。しかし、教室の中はシーンと静まりかえるほど、集中していた。指先を見つめてしっかり手首をひねるようにしないと、うまく葉をねじれないからだ。
薫り高い花で作られたレイの美しさは、ハワイの風景と切り離せない。毎年5月1日の「レイ・ディ」には、街中にレイを身に着けた人があふれるそうだ。これは、1928年に制定された「ハワイの伝統文化を讃える日」の習慣で、レイ作りのコンテストなど、さまざまな記念行事が行われる。きっと、街中が優雅な香りと幸せそうな表情でいっぱいになることだろう。シンプルなティー・リーフにランの花を数個挿しただけの私のレイですら、たっぷりと満足感を味わせてくれたのだから。
〜ビショップ・ミュージアムのカルチャープログラム〜
ビショップ博物館は、カメハメハ王家の土地と資産を相続したパウアヒ王女と結婚したビショップ氏が、妻の没後、ハワイ文化に関する遺産を受け継ぎ、1889年に誕生したもの。ハワイや太平洋の島々に受け継がれてきた文化と暮らしを物語る貴重な展示品120万点以上を所蔵する、ハワイとポリネシア文化の殿堂だ。展示品を見て回るだけでもこの地域の伝統や歴史に目を開かれるだろうが、実際にハワイの文化を体験すれば、理解と興味が深まるのは間違いない。フラのレッスンやレイ作りのワークショップなどは、リゾート・ホテルやショッピングモールでも体験できるが、由緒ある博物館という環境がひと味違う雰囲気を盛り上げてくれる。レッスン後はビショップ博物館から「修了証明書」が発行されるのも嬉しい。
(現地取材:宮田麻未、写真:神尾明朗)
◆おなじみの曲でウクレレレッスンスタート
ビショップ博物館は、広々とした芝生の周辺にハワイの自然をテーマにした科学館、プラネタリウム、ハワイの文化史的資料を中心に展示したハワイアン・ホールなどがある。椰子の木々が風に揺れて、敷地を散策するだけでもすがすがしい気分になる。
ワークショップ講師のN先生はとてもエレガントな雰囲気の女性。おだやかな口調で話すので、初心者でもリラックスしてレッスンが受けられそうだ。体験ツアーは10人以上のグループで、講師と日本語通訳がつく。レイ作りやフラ、ウクレレのレッスンなど、幾つかのプログラムを組み合わせることができ、一つのプログラムはだいたい30分。
私たちはウクレレとフラ、そしてレイ作りを体験することになった。博物館を訪れる前にウクレレの工場見学をしていた私たちは、「ウクレレを弾いてみたい!」という気分でかなり盛り上がっていた。この妙に熱い雰囲気に、先生はちょっと驚いているようだ。習ったのはおなじみの「ユーアー・マイ・サンシャイン」。使うコードは4つだけだが、小さなウクレレのネックで4本の弦をコード通り押さえるのはけっこう難しい。ウクレレはノミ(ウク)が跳ねる(レレ)という意味だそうで、細かくすばやい指の動きがポイント。コードが変わるごとに「えーと…」と、指をもたもた動かしているようでは、ノミのような動きには程遠い。それでも知っている歌なので、なんとなく弾けているような気分になってしまうのがおもしろい。先生が苦笑していたように見えたのは気のせいか。
▽関連情報
ハワイ体験レポート−その5 「コアロハ・ウクレレ」の工場見学ワークショップ(2008/01/25)
◆フラ体験で悲恋の主人公気分に
フラのレッスンでは、「アレコキ」と呼ばれる悲恋の歌に挑戦。滝や波のうねりなどに寄せて恋人を思う気持ちを踊りで表現したものだ。まずは基本のステップ。先生は裸足になって、スカートの裾を少し持ち上げて、足の動きを見せてくださる。次は手の動き。流れ落ちる水の動きを揺れる指で表現したり、心の痛みや涙などの感情を腕の動きで見せたり、歌われている詩の内容を体全体で表すのがフラの基本だ。
とはいえ、音楽のテンポはゆっくりしているが、手と足がいっしょに動いてくれない。足のステップは2種類だけ。頭にはしっかり入ったはずだ。手の動きも、先生がくわしく詩の内容を教えてくれたのだが、体が思うように動いてくれない。先生のように、流れるような優雅な動きにならず、体がポキポキと音をたてているような感じにしか動けない。これではせっかくの悲恋のムードも台無しだ。
先生は根気良く、何度も繰り返して教えてくださるが、私の手の動きがなんとなく盆踊りのようになってしまうのが情けない。クラスの仲間も自分の姿に笑い出してしまったが、目つきは真剣になっていく。相変わらずぎこちない動きだが、踊る本人は何回か踊ると、すっかり悲恋の主人公になったような気分になってしまうのだ。これがフラの魅力なのだろうか。日本にはフラに夢中になっている人がたくさんいるが、“はまって”しまうのもうなずける。フラ教室の生徒たちばかりでなく、一般の旅行者にとってもフラに関連したイベントへの参加はハワイらしい楽しみになることだろう。
◆レイ作りで思い出を編みこむ
ハワイから戻った私の机の前には、ティー・リーフの葉で作ったレイが飾られている。できたばかりときにはランの花が付いていたが、今は葉の部分だけしか残っていないシンプルなものだ。しかし、ティー・リーフを使ったレイは、心身を癒し、邪気を払う力があるそうだ。そのせいか、葉の緑色は少し色あせてきたが、それを見るたびにハワイのさまざまな思い出がよみがえってきて、穏やかな気持ちになれる。
このレイもビショップ博物館の体験プログラムで作ったもの。2枚のティー・リーフをねじっては交差させる単純な作業を繰り返す。しかし、教室の中はシーンと静まりかえるほど、集中していた。指先を見つめてしっかり手首をひねるようにしないと、うまく葉をねじれないからだ。
薫り高い花で作られたレイの美しさは、ハワイの風景と切り離せない。毎年5月1日の「レイ・ディ」には、街中にレイを身に着けた人があふれるそうだ。これは、1928年に制定された「ハワイの伝統文化を讃える日」の習慣で、レイ作りのコンテストなど、さまざまな記念行事が行われる。きっと、街中が優雅な香りと幸せそうな表情でいっぱいになることだろう。シンプルなティー・リーフにランの花を数個挿しただけの私のレイですら、たっぷりと満足感を味わせてくれたのだから。
ハワイアン・ホールは2009年夏に再オープン予定
ビショップ博物館のハワイアン・ホールは、入り口から
右手部分の建物の改装工事中だ。3階まで吹き抜けになっ
たクラシカルな展示室は、ビクトリア王朝様式のレトロな
雰囲気を残したまま、近代的な展示スペースに生まれ変わ
る。再オープンは2009年夏の予定だ。広々としたスペース
を生かした新しい体験プログラムにも期待したい。
ビショップ博物館 http://www.bishopmuseum.jp