「数の論理ではない」――欧州FITで成長するEssential Japan Travel 山田隆氏が語るDMCの勝ち筋
欧州FITを中心にインバウンド旅行を手掛けるEssential Japan Travel(EJT)。2023年に約5.7億円だった売上は、2025年には約12.7億円、2026年には17億円を超える規模まで成長した。取扱客数は年間約4000人。その95%をFITが占め、なかでもスイス、ベルギー、デンマークの3カ国が約7割を占める。一見すると決して大きくない市場から、なぜこれだけのビジネスが生まれるのか。
ソロ代表取締役でEJTを率いる山田隆氏に、欧州FIT市場の可能性、地方が海外市場を選ぶ際の考え方、DMCに求められる役割、そして旅行業の未来について聞いた。
半ば冗談で始めたインバウンド手配、見積スピードで成約率75%に
山田隆 氏(以下、敬称略) 22歳まではアマチュアでサッカーをやっていました。その後、姉夫婦が住んでいたイタリアへ行ったのが初めての海外です。帰国してサッカーコーチをしていたのですが、24歳になって、このままではまずいという危機感がありました。
その頃、たまたま本屋で留学関連の本を開いたら、「観光学を学べる」という文字が目に飛び込んできました。ピンと来てオーストラリアのビクトリア大学へ行くことを決め、観光を学びました。
帰国後は欧州系のランドオペレーターを経て、観光マーケティング会社に転職しました。そこで担当したのがパプアニューギニア政府観光局とアリラ・ホテル&リゾーツです。その後、クライアントから直接仕事を依頼されることになり、政府との契約では個人に支払えないので会社を作ってほしいと言われた。それが2010年1月に株式会社ソロを立ち上げたきっかけです。
山田 2017年頃、拡大するインバウンド市場を見て、アウトバウンドだけをやっていてもチャンスが限られるのではないかと感じ始めていました。ちょうどその頃、知人から長野県木曽町の新しいDMOについて相談され、「山田さんの持っている海外ネットワークを貸して欲しい」と言われたのが、インバウンドに関わる最初のきっかけです。
その後、大きな転機になったのがデンマークの旅行会社JYSK(ユスク)でした。知り合いの担当者から、日本で利用していたDMCの対応について相談を受けたんです。それで僕が半分冗談で、「じゃあ僕らがJYSKのためにトライアルでDMCをやってみましょうか」と言った。そうしたら1週間後に「社長の承認が取れた」と(笑)。「そんな簡単なら随分前からやってるよ」と思いましたが、とにかくExcelを使って見積もりを返すところから始めました。
当時、日本のDMCは見積もりの回答に2週間くらいかかることもあり、その間にお客様が離れてしまっていた。僕らはその日のうち、遅くても翌日には返しました。すると翌年1~2月頃にはコンバージョンが約75%になった。それまで他のDMCでは29%程度だったそうです。JYSKの売上も約2.5倍になり、「これだ」と思いました。
欧州FIT、「小さな市場」が売上の柱に
山田 2026年は約4000人で、そのうち95%、約3800人がFITです。団体は15人程度のツアーが年間10本くらい。FITはほぼすべてテイラーメイドで、ホテルやサービスもお客様に合わせて組み立てています。
中心となっているのがスイス、ベルギー、デンマークです。この3カ国でお客様の約70%を占め、売上でも12~13億円ほどになります。
欧州のお客様は平均14~15日ほど滞在します。一度予約が入ればキャンセル率は1%程度。長期滞在のため、1件の予約でも大きな売上や仕事量になります。
山田 一番上をA層と定義し、5つ星ホテルを中心にフルエスコートを付け、1人100万円以上を使うハイエンド層で10~15%。その下をB層と定義する4つ星ホテルを中心に、各都市でアクティビティなどを入れる60万円以上の層で20~25%。3つ星ホテルを中心とした45万円以上のC層が30%、さらに2~3つ星ホテルを中心とした35万円以上のD層が30~40%くらいです。EJTは意図的に後者の2つ、C・Dの顧客層にサービスを合わせています。
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