平和産業という実感!和束と空をつなぐ現場から-KYOTOyui 近藤芳彦氏

  • 2026年4月10日

 KYOTOyui 代表の近藤芳彦です。私は現在和束町において、和束茶カフェの運営に理事兼事務局長として携わっております。この場所に立ちながら感じるのは、観光とは単に人が訪れることではなく「その土地との関わり方をどう設計するか」という営みであるということです。

 和束町は宇治茶の主産地として知られ、山の稜線に沿って広がる茶畑の景観は多くの方にとって印象的な風景として記憶に残っているのではないでしょうか。しかし運営の現場に身を置く立場から見ると、その価値は単なる視覚的な美しさにとどまりません。むしろ重要なのは、その風景の中にどのような営みがあり、誰がどのように関わっているのかを、いかに来訪者に伝えるかであると感じております。

 本年2月、和束茶カフェ主催のイベントにおいて農家の方々が直接お客様にお茶を淹れる機会を設けました。用意された一杯をただ味わうのではなく、生産者が何を大切にし、どのような想いでお茶づくりに向き合っているのかを語りながら一杯を淹れる。その過程を通じて、お茶への理解は自然と深まり、同時にこの土地への関心が芽生えていく場となったと感じております。

 一見すると小さな取り組みに見えるかもしれませんが、非常に本質的な意味を持つものです。人は作り手の想いに触れることで、より強い記憶と愛着を持ちます。単に「美味しかった」で終わるのではなく、長年にわたり和束の農業を支えてきた方々の信念や積み重ねがあるからこそ、この一杯が生まれているという理解につながる。そして和束町の美しい景観もまた、そうした農家の方々の営みによって守られてきたものであると気づくことで、その風景の見え方は大きく変わります。

 その結果、和束という場所は「訪れた場所」から「また訪れたい場所」へと変化します。この変化こそが私たちが提供している価値の核心であり、観光の本質的な力であると感じております。

 こうした体験の積み重ねは、すぐに数値として現れるものではありません。しかし再訪者や紹介といった形で確実に広がっていきます。一人の来訪者が次の来訪者を生み、その関係性が緩やかに広がっていく。この自然な連鎖こそが、地域にとって無理のない持続的な成長につながると考えております。

 一方で、これまで現場で強く感じてきた課題が「距離」です。昨年3月に鷲峰山トンネルが開通し国内観光客の来訪は明らかに増加しましたが、それでも京都市内からの移動には約1時間から1時間半を要します。この時間的制約は、特に時間価値を重視される富裕層の訪日客にとって大きな障壁となっていると感じておりました。

 この課題に対して現在取り組んでいるのが、ヘリコプターを活用した観光事業です。これは単なる移動手段の効率化ではなく、富裕層インバウンド戦略として位置付けている取り組みです。

 京都市内から和束町までを短時間で結び、移動そのものを体験価値へと転換する。空から茶畑を俯瞰し、その地形や広がりを体感した上で現地に降り立つことで、その後の体験の深さは大きく変わります。

 地上から眺める風景と空から俯瞰する風景は、同じ場所でありながら全く異なる認識をもたらします。その上で味わう一杯のお茶は、単なる飲食体験ではなく、記憶に残る特別な体験へと変わっていきます。

 特に富裕層の顧客においては、「どこへ行くか」以上に「どのような時間を過ごすか」が重視されると思っております。時間そのものに価値を見出す層に対して、移動時間の短縮と体験の質を同時に提供できるこの仕組みは極めて親和性が高いと考えております。

 また、この取り組みは地域にとっても大きな意義を持ちます。高付加価値であるがゆえに一人あたりの消費額は高く、地域への経済的な還元も大きい。結果として大量の来訪者に依存することなく、地域への負荷を抑えながら持続可能な運営が可能になります。