日本ホスピタリティ観光学会が設立、持続的発展を目指す新たな産学連携の場 JTB田川氏が顧問に

観光産業とアカデミアの真の連携を掲げる「日本ホスピタリティ観光学会」が4月20日に発足した。会長には神奈川大学国際日本学部教授の島川崇氏が就任し、「幸福」に資する観光の未来像と、現場との連携を意識した新たな学会の在り方を提示した。
同日開催された設立総会において、島川会長は「観光立国を掲げながら、現場に携わる人々が必ずしも幸福になっていない現実がある」とし、持続可能な観光の実現には、研究者だけでなく地域や産業界の多様なプレイヤーが参加できる開かれた学会が必要と説いた。学会の目的には、ホスピタリティ・観光従事者や地元住民、さらには国民全体の幸福に資する観光の推進が掲げられている。
学会の大きな特徴の一つが、年会費を研究会員6000円、一般会員2000円と安価に設定したこと。これにより、研究費を持たない産業界や非正規雇用の研究者にも門戸を開くとともに、広範な視点からの議論を可能とする。また、運営コスト削減のため印刷物の配布を原則廃止し、ペーパーレスを基本とした持続可能な学会運営を打ち出している。
学際的なアプローチも重視されており、人文学・社会科学・自然科学のいずれにも偏らず、観光を「人」を中心とした総合的な学問と位置付けている。これに対応する論文査読体制の整備や、未成熟な論文への伴走型支援など、従来型の学会とは一線を画す取り組みも進められる。
さらに、観光教育の実践支援も学会の重要な柱の一つであり、大学のみならず短大・専門学校・職業訓練校まで対象とした幅広い教育支援策が構想されている。
この日の総会では、顧問としてJTB相談役の田川博己氏が就任したことも発表された。田川氏は「ホスピタリティマインドを持った次世代の観光人材の育成と教育プログラムの開発や普及に、大きな役割を果たされることを期待しております」とメッセージを寄せ、新学会の理念に賛同を示した。
今後の活動としては、論文集の発行、地方例会の開催に加え、2025年6月には「観光系専門紙誌のこれから(仮)」と題したアカデミアサロンの開催を予定。ウェブサイトも設立翌日の4月21日より公開した。