リピーター戦略と地域連携で広がる中小旅行会社の可能性-アルファトラベル森野氏が語る、京都発・旅行業の現在地
森野 欧米の旅行会社と提携し、彼らが航空券や宿泊を確保し、私たちはランドの手配や現地体験、二次交通など、日本側でしかできない部分を担っています。たまに団体旅行の手配もあり、先日は40名規模での日本一周30日間のツアーなどを手がけました。
また、私が理事長を務める京都府旅行業協同組合が京都市と連携して運航している「岡崎さくら回廊十石舟めぐり」もインバウンドに人気です。最大24人乗りの船で、疎水を巡りながら桜や景色を楽しむこの催しは、今では年間1万5,000人が利用し、そのうち3割が外国人観光客です。今では、京都の春の風物詩のひとつになっています。

森野 今後はAIを活用し、顧客データから“次に参加したくなる旅”を提案する仕組みの導入を目指しています。私自身、現在勉強中で、今年度中には試験的に導入して、他の中小旅行会社にも広げていけたらと考えています。
また、オーバーツーリズムの課題にも取り組んでおり、行政や地域と連携しながら、朝・夜の時間帯や郊外エリアへの誘客によって、観光の分散化を図っています。53歳の時に龍谷大学大学院で政策学を学び、「京都における旅行業者の持続可能な着地型観光の可能性」をテーマに修士論文を執筆した経験も、今の活動に活かされています。
森野 私は様々な旅行関連団体の役員や理事なども務めていますが、やはり自分を育ててくれた中小旅行業界の発展、地域社会の活性化に貢献したいという思いが根底にあります。活動を通じて新しい事業者との出会いもありますし、何かを頼まれたらできるだけ応えていきたい。それが自分のポリシーです。
森野 この旅行業界で仕事をさせていただく中で、強く感じたことがあります。それは「自分が何を知っているのか」より「誰を知っているのか」が、大きかったと実感しています。旅行業は専門知識も必要ですが、世界中すべての情報を一人でカバーするのは不可能です。だからこそ、人とのつながり、信頼できる人脈を築き上げることが、この複雑で変化の早い業界を生き抜く上で不可欠だと痛感しました。すべてを一人でやろうとせず、互いの得意分野を活かし協力し合うことで、質の良いサービスを提供できるはずです。人と人との繋がりを大切にしてくだい。微力ながら、私もその一翼を担えるよう、日々精進してまいります。