JATA、カスハラ実態調査の結果を公表 対策実施25%にとどまる
日本旅行業協会(JATA)は19日、カスタマーハラスメントに対する基本方針の策定に先立ち実施していた、会員旅行会社を対象にした実態調査の結果を公表した。調査は今年1月14日から2月7日まで行われ、241社が回答した。
調査によると、すでに社内でカスハラ対応の体制を整備している会社は25%にとどまり、基本方針と対応マニュアルの両方を作成済みの会社は9.5%だった。一方、今後作成を予定している会社は40%あり、対応の進展が期待される。カスハラ対応の整備状況は企業規模による差が大きく、従業員500人以上の会社では40%以上が基本方針を策定していたが、小規模の会社ほど未整備の割合が高かった。
また、年間を通じてカスハラ対応を迫られている会社は約10%に上り、特に募集型企画旅行を扱う企業で割合が高かった。カスハラが発生しやすい業務は、コールセンターや店頭での接客、添乗業務が多く、過剰な要求や長時間の執拗な主張、暴言が主な問題として挙げられた。
調査では、カスハラの原因として、商品やサービスへの過剰な期待と提供側との意識のギャップ、顧客のモラル低下、スタッフへのストレスのはけ口化、デジタル化によるサービス低下の印象などが指摘された。さらに、昔からの顧客や紹介客からの不当要求を経験した会社も9%あった。
カスハラの発生を防ぐためには、基本方針や対応マニュアルの策定が有効であることも明らかになった。すでに基本方針を策定している会社では、カスハラが減少傾向にあると回答した割合が多かった。カスハラへの対応については、56%の会社で特定の社員が担当し、そのうち70%が管理職であった。
JATAは、今後カスハラ対応の指針となる「カスタマーハラスメント対応モデル・マニュアル(仮称)」の作成を予定しており、調査結果を反映させる方針だ。旅行業界における健全な労働環境の確保に向け、各社の取り組みが求められる。