地方誘客目指す"地域観光魅力向上事業"、観光コンテンツの販売にフォーカス
観光庁は、国内外の観光客を継続的に地方へ誘客することを目的とした「地域観光魅力向上事業」の一次公募を4月18日まで実施している。本事業は、観光コンテンツの造成や販路開拓、情報発信を支援するもので、前身にあたる「地域観光新発見事業」では今年1月に成果発表会が開催され、津和野町(島根)や宇佐市(大分)などの好事例が紹介された。両事業を担当する豊重巨之氏は、訪日需要の拡大が続く一方で都市部に宿泊が集中する傾向を指摘し、適時適切な地方誘客促進の重要性を強調する。今回は「地域観光魅力向上事業」の狙いや内容について、豊重氏および有識者である跡見学園女子大学観光コミュニティ学部観光デザイン学科の篠原靖准教授に話を聞いた。
早稲田大学大学院理工学研究科修了、同大学院商学研究科修了、博士(技術経営)、2005年総務省入省後、情報通信政策、電波政策等に従事、2020年総務省情報通信作品振興課課長補佐、2022年デジタル庁参事官補佐を経て、2023年7月より現職。
● 篠原靖(内閣府地域活性化伝道師 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授)
30年間の旅行会社勤務を経て現職、全国の観光政策に精通し内閣府、観光庁、総務省、文化庁を始め各省庁の観光政策関連委員を多数歴任。観光地の再生から観光人材育成を手掛けている。
市場動向と本事業の狙い
篠原 2024年の訪日外国人旅行者数は3687万人を記録し、2019年を超え過去最高を記録した。これは非常に大きな成果だが、オーバーツーリズムや、進まない地方誘客など課題も多い。

豊重 昨年はインバウンドの旅行消費額も8兆円を超え、旅行者数とともに史上最高を記録した。2020年に8兆円、2030年に15兆円・6000万人との政府目標があるが、昨年8兆円を超えたことで、2030年の目標も現実的なものとなった。観光庁としては観光立国推進基本計画に基づき、引き続き「持続可能な観光地域づくり」「インバウンド回復」「国内交流拡大」に取り組んでいく。
計543億円となった2024年度の観光庁補正予算の中で、今回の「地域観光魅力向上事業」には40億円を計上しており、適時適切な地方誘客につなげていきたい。
篠原 観光立国推進基本計画では、消費額拡大や地方誘客促進が示されているが、地域が稼ぐ仕組みは未だ不十分。前回の「地域観光新発見事業」は、その礎となるものだったが、今回の地域観光魅力向上事業では新たな目標に取り組んでいく。
豊重 地域観光魅力向上事業の目標は大きく2つ。更なる適時適切な地方誘客促進と観光コンテンツを実際に販売につなげること。現在、訪日宿泊者数の約7割が三大都市圏に集中しており、地方誘客は十分には進んでおらず、しっかりと取り組んでいきたい。特に、本事業では観光コンテンツの販売を強化し、モニターツアーで終わることなく持続可能な観光を実現していきたい。
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