業界全体の対応強化へ、JATAがカスハラ対策の基本方針を策定 休職に追い込まれたケースも

日本旅行業協会(JATA)は、会員となる旅行事業者におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策として、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、3月12日に会員企業へ発信した。
企業に対して従業員の安全配慮義務が求められる中、厚生労働省は2024年12月に、すべての企業に顧客等からの暴力や脅迫、不当な要求などの迷惑行為から従業員を保護する方針を示し、東京都も2025年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行する。旅行業界においてもカスハラは深刻な課題とされ、JATAが実施した調査では、241社のうち約10%が対応を迫られ、特にコールセンターや店舗等での接客業務、添乗業務において問題が多発していることが明らかになった。
カスハラの具体例として、過剰要求や執拗な主張、暴言、長時間の拘束などが挙げられ、一部の従業員は精神的疾患により休職を余儀なくされたという。一方で、カスハラ対応の基本方針を作成している企業は全体の15%にとどまっている。
JATAはこういった状況を踏まえ、業界全体での対応強化を目的に「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定。カスハラ行為を受けた場合、誠意をもって対応しつつも毅然とした態度で臨むこと、組織として対応を行うことを明記した。また、各会員企業が自社の事情に応じた基本方針を策定し、必要に応じて公表することを提案。企業内での教育・啓発を進めるとともに、被害に遭った従業員が相談できる体制の整備やメンタルケアの強化を推奨している。