観光立国推進協議会が第11回会合、訪日3600万人に喜び表明 訪日客の地方分散について議論
企業・団体の今年の見通し、訪日客の地方分散が課題、一般財源増への要望も
協議会では各企業団体が今年の見通しを表明したが、訪日客の地方分散を課題として挙げるトップが多かった。日本百貨店協会会長の好本達也氏は、インバウンド業績が過去最高で24年の年間売上が23年比約80%増となる6000億円超だったことを説明。一方で大都市10都市のインバウンドによる免税の売り上げが全体の15%だったのに対し、10都市以外の地方では0.5%であったとし「大きな開きがある。販売している商材の問題もあるが改善していくことが一つの大きな課題」とした。また、販売しているものが高級ブランドや時計などの輸入物の外国製品が多いことから、サブカルチャ-関連商品も含め、日本製品の紹介が必要との考えも示した。
日本旅館協会会長の桑野和泉氏は、大阪・関西万博による地方への訪日旅行者の増加に期待を示した。また、その際の課題として宿泊施設へのアクセスを指摘。「地方の旅館には温泉や自然景観を背景にしているケースが多く、交通拠点から遠方であるため、周辺地域へのアクセスが弱点となっている」と話し、国土交通省に対し、地方交通の充実への配慮を期待した。
日本民営鉄道協会会長で京浜急行電鉄取締役会長の原田一之氏も、人口が減少するなか、いわゆる「地方民鉄」の維持につながると訪日客の地方分散に期待を表明。「観光と地域の足を確保するといった観点からインバウンドを地域に広げていってほしい」と話した。
また、日本商工会議所観光委員会共同委員長の志岐隆史氏は、コロナ化で訪日客の減少が少なかった例として気仙沼をあげ「気仙沼の特色は地域一帯の取り組み。産業別でなく地域で盛り上げていくのが地方誘客の一番のポイントでは」と話した。
日本温泉協会会長で石川県・和倉温泉の「ゆけむりの宿 美湾荘」会長の多田計介氏は、改めて和倉温泉の状況を説明した。多田氏によれば、2024年に一般営業を再開したのはわずか4軒で、25年は5軒が再開する見通し。被害を受けた建物を解体してから建てるため時間がかかるという。ただし「2026年度中にはおそらく8割近い旅館が稼働するのでは」との推測を示した。
そのうえで同氏は訪日客の地方への分散化のアイデアとして、温泉文化のユネスコ無形文化遺産化をあらためて提案。「無形文化遺産に登録されると(温泉は地方にあるので)短期間で訪日客が地方に分散していく」と語り、協議会に対し協力を求めた。
このほか、東京商工会議所副会頭でトラベル&ツーリズム委員会委員長の田川博己氏は観光庁予算について指摘。例年の補正予算の多さに言及し「補正予算はその都度の考え方があって初めて受け入れられること。観光産業が自動車産業と同じレベルの産業であるなら、観光庁の一般財源も経済産業省の製造業と同じように持つレベルでは」と持論を展開した。そのうえで「悲願である観光の基幹産業化に向け、いろいろな問題に対処できるよう最初からきちんと(一般財源での)予算がつくという前提、そういった意識を協議会で求めていく必要があるのでは」と話すとともに観光庁に要望した。
また、日観振理事長の最明仁氏は、7月第3月曜日の祝日「海の日」の固定化の動きが再燃しつつあることを説明。海の日の経済波及効果が2000億円であるとし、ハッピーマンデー制度を「国内の旅行産業の下支えをしている制度」であることから、「観光庁と話し、観光産業をあげて対応をしっかりしていきたい」と話した。
なお、協議会では2025年日本国際博覧会協会副事務総長の髙科淳氏が大阪関西万博の準備状況について解説。「工事はほぼ軌道にのって着々と進んでいるところ。最後までしっかり進めていきたい」と話した。また、日本航空代表取締役会長の赤坂祐二氏も大阪関西万博に向け訪日客の受入体制を強化していることを説明。「グランドハンドリングスタッフの人材不足や航空燃料の安定的な供給の問題はあるが、国土交通省をはじめ航空業界全体で取り組んでいる。万博の足を引っ張らないようにしっかりやっていきたい」と話した。