JATA新春会見 髙橋会長「海外旅行復活は国としての課題」と訴え、国内旅行「頭打ち」と危機感示す
日本旅行業協会(JATA)は9日、新春記者会見を開き、髙橋広行会長は人数・消費額ともに2019年を上回った訪日旅行と宿泊ベースではほぼ19年レベルまで回復した国内旅行を受け、「(2024年は)旅行マーケットが大きく飛躍した一年だった」と振り返った。
一方、「多くの課題が見えてきた一年でもあった」と語る同氏は、「海外旅行の完全復活が最大の課題」とし、旅行業界のみならず「国にとっても大きな課題と認識すべき」と訴えた。
このほど閣議決定された2025年度の観光庁予算は総額530億3300万円。その中で、アウトバウンド促進に該当する事業は「海外教育旅行を通じた若者のアウトバウンド促進(2000万円)」のみ。髙橋会長は、収入に繋がるインバウンド促進に集中することに理解は示しつつも、国際便の維持拡大とグローバル人材育成の観点から、アウトバウンド促進の重要性を説き、政府に対しては昨年、全国旅行業協会(ANTA)と共にパスポートの無償配布や海外政府観光局と連携したPR、公立校の修学旅行代金の上限見直しなどを盛り込んだ要望書を提出したことを明かしている。
その上で今年は、「高付加価値の商品展開・2国間の相互交流拡大」「海外旅行販売拡大に向けた教育支援」「若者の海外渡航促進」をJATAによる海外旅行復活への取り組みの3本柱とする方針を示した。中でも、髙橋会長が特に重要としたのが3点目。先進国の中で極めて低いパスポート保有率や激減する海外への修学旅行を問題と見ており、若いうちに海外旅行を経験することで生涯で海外に行く可能性が高まるとの考えを示した。JATAとしては今年、昨年も実施した「今こそ!海外キャンペーン」の第2弾を実施するようで、同キャンペーンを通しパスポート取得以上の支援を行うと発信した。
人数ベースでは、昨年年間では19年比7割程に留まったアウトバウンド。髙橋会長は「完全復活の意味するところは、2019年の2000万人レベルに近づけたいという思いで今年一年間取り組んでいく」と意気込みを語った。
国内旅行は「頭打ち」
回復が遅れる海外旅行とともに、髙橋会長が危機感を示したのが国内旅行だ。日本人1人あたりの宿泊を伴う旅行は年1.4回、平均宿泊日数は2.3泊との傾向がコロナ禍を除いて10数年変わっておらず、「人口減少が進む国内旅行マーケットは縮小の一途を辿ることは明白」と述べた。
この状況を打破するために以前より推進してきたのがラーケーション。愛知県などで実践されている平日の子どもの校外学習を支援する取り組みで、同取り組みが進めば需要の分散化やオーバーツーリズム緩和に寄与し、髙橋会長は「ほぼ頭打ち状態にある国内旅行を大きく変えるインパクトを持ち、観光業界のみならず地方活性化の大きな起爆剤にもなり得る」との認識を示した。
同氏によると、現在全国47都道府県のうち39の知事がラーケーションに賛同しているが、まだまだ取り組みの度合いには温度差がある状況。今後は全国ベースで展開されるよう各自治体に働きかける方針で、同時に各経済団体や業界団体へは、親世代が平日に休暇が取れるよう有給休暇の取得促進や、ワーケーションなどの多様な働き方を促進するよう要請していくという。