travelvision complimentary

グローバル決済プラットフォーマーAdyenが観光業界へのアプローチを加速、カントリーマネージャーに聞く日本市場での戦略

 オランダ・アムステルダムで創業し決済プラットフォームの提供を行うAdyen(アディエン)が、日本国内で宿泊施設を中心とした観光業界への展開を強化している。直近では、宿泊施設向けの予約エンジン「tripla Book」などを手掛けるtriplaへ決済プラットフォームの提供を開始。今年8月からは、Booking.comで日本などの地域ディレクターを務めたアダム・ブラウンステイン氏を日本のカントリーマネージャーに据えている。

アダム・ブラウンステイン氏

 同社はカード決済加盟店の開拓や管理を行う「アクワイアラー」、且つ決済代行サービス会社でもあり、幅広い決済ソリューションを1つのプラットフォームで提供している。とりわけ不正利用防止対策に強みを有しており、購入者情報や決済履歴などから疑わしい決済を検知する機能や、リスクルールを元に不正懸念のある取引をブロックする機能などを持っている。また、不正利用対策としてカード情報に加え更なる本人認証を求める「3Dセキュア」の発動条件を、加盟店の不正傾向に応じた設定を可能にすることで不要な認証プロセスを省き購入者の離脱率を下げない機能なども提供している。

 加えて、同社では加盟店に対するカード決済の手数料モデルとして「インターチェンジ++」と呼ばれる制度を採用していることも特徴的。カード保有者が利用する銀行から請求される「インターチェンジフィー」、アクワイアラーから請求される「アクワイアラーマークアップ」、カードブランドから請求される「カードブランドフィー」の手数料を構成する3種類に関して、現在国内では内訳を明記しないブレンド型が一般的。インターチェンジ++では、上記3つの内訳を明示することで、透明性を確保するとともに加盟店による手数料交渉を助けるメリットがあるという。

日本市場での展開、戦略は?

 日本市場については「非常に大きな潜在機会」があり、同社としても「戦略的な市場」と位置付けていると話したブラウンステイン氏。デジタル決済へのシフト傾向などが追い風となる中で、訪日需要の急速な伸びから観光業界は大きなターゲットの一つ。

 一方で、海外発行カードの決済においてはイシュア(クレジットカード発行会社)側が不正利用の懸念から決済の承認をしない可能性もあり、機会損失につながる恐れもある。これに対し同社では、AIや独自にアルゴリズムを構築することで「不正利用のリスクは回避しつつも、承認率はしっかりと上げていく」ことができるという。

 また、ブラウンステイン氏が日本市場の戦略として強調したのが「ユニファイドコマース」。オンライン・オフラインの複数チャネルでの決済情報を連携し同社のプラットフォームで一元管理することで、顧客インサイトを効率的に把握でき最適なアプローチを可能にするもの。

 宿泊施設を例にあげれば、オンラインでの宿泊決済情報と館内のレストランやバー、お土産店などでの同一顧客の決済情報を統合できる。同氏によると、実際に国内の宿泊事業者もこのサービスに興味を示しており、今後ユニファイドコマースを切り口に訴求を図る考えだ。

 さらに、同氏が他にも強みを発揮できるとしたターゲットが「海外展開を模索する企業」。現在幾つかの国内ホテルブランドも積極的な海外展開を進めているが、グローバルでサービスを展開している同社の決済ソリューションであれば、海外拠点でも「基本的には(国内で利用する)単一のプラットフォームで展開することができる」という。

 ブラウンステイン氏は今後の観光業界への展開として、業界経験有するチームメンバーも在籍していることから「業界の方と同じ言語で会話できるのは非常に強み」とも語ったほか、「個人的にもすごく情熱を持ってる業界」と強調しており、今後決済領域におけるグローバルプラットフォーマーの動向が注目される。