観光で地域を活性化するための道筋vol.1~観光の目的と地域経済活性化の4つの方向性-デイアライブ 川口政樹氏
地域における観光振興の目的
それでは、国の目指していることを踏まえ、地域における観光振興の目的について考えてみましょう。なお、国が指し示している方針を理解して参考にすることはとても大事ですが、これを鵜呑みにせず、自らの地域の現状を踏まえて自ら考えることはもっと大事なので、自ら考えるための土台として、基本的な考え方を提示します。
観光は、「メリット=プラスのインパクト」だけでなく、「デメリット=マイナスのインパクト」を地域にもたらす可能性があります。プラスのインパクトとしては、「地域経済の活性化」「雇用の創出」「シビックプライドの醸成」「異文化交流」などがある一方、マイナスのインパクトとして、「オーバーツーリズム」「地価や物価の上昇」「環境への悪影響」などが考えられます。
プラスのインパクトを拡大しつつ、マイナスのインパクトを縮小させていくことで、「地域住民がハッピーになること」が、地域における観光の目的と言えます。
ここで重要なのは、観光は「手段」であって「目的」ではない、ということ。
ひと昔前の観光振興では「観光客数が増えること」を目的に、多大な予算をかけてイベントを実施したりしていましたが、むやみやたらに観光客の数が増えればいいわけではないよね、という認識が広まりつつあります。つまり、人にたくさん来てもらうことが目的じゃなく、観光振興することで地域が豊かになることが目的、ということですね。
特に、一部の観光地では「オーバーツーリズム」が課題となっていることから、地域住民をないがしろにする取り組みは本末転倒であり、観光振興は「地域住民がハッピーになる」ための「手段」である、と考えることが大切です。(国において、以前から「住んでよし、訪れてよし」というキーワードを使っていることからも、「住んでよし」=地域住民が住みやすい地域づくりが大事、ということが分かりますね。)