観光で地域を活性化するための道筋vol.1~観光の目的と地域経済活性化の4つの方向性-デイアライブ 川口政樹氏

  • 2024年11月26日

 観光領域でのデジタルマーケティングや人材育成を支援している、デイアライブの川口政樹と申します。今回から「観光で地域を活性化するための道筋」をテーマに隔月で執筆させていただくことになりましたので、よろしくお願いします。

 私は、三重県庁職員として観光分野に9年間携わり、そのうち5年間をDMOである三重県観光連盟に出向していました。また、デイアライブにてセミナー講師を務めるともに、観光庁「令和6年度 地域周遊・長期滞在促進のための専門家派遣事業」の登録専門家として全国各地の支援をしています。

 行政・DMO・民間支援会社というそれぞれの立場で、観光による地域活性化に取り組んできた中、特に『地方における観光振興をどのように推進していけばよいか?』が自分の大きなテーマでありましたので、記事を通じて一緒に考えていければと思います。

観光の目的

 まず、そもそも何のために観光に取り組むのか?ということを考えてみたいと思います。民間事業者であれば、利益を確保してステークホルダーに配分する、という分かりやすいゴールがありますが、地域で観光振興に取り組む際の分かりやすいゴールとは何でしょうか?

 ここのゴールを明確にして、関係者全員が腹落ちすることが「観光で地域を活性化する」ためのスタートラインとなりますが、これがなかなか難しいんですよね。そもそも目的がはっきりしないまま取り組んでいる地域もありますし、「観光振興計画」を策定して目的や目標数値を掲げていても、「地域の中で共有され、関係者全員が腹落ちしているか?」と問われた時に胸を張れる地域は数少ないのが現状です。

 なぜこのような現状になっているのかというと、「観光」がどのようなものなのか、定義がふわっとしているわりに、関係者がそれぞれの立場で自分たちなりの目的で動いている、というところに原因があるように感じてます。

 そこで、まずは「観光の持つ多面的な意義」をご紹介します。

 観光庁の資料では、「成長戦略の柱・地域活性化の切り札」「豊かな国民生活」「自らの文化・地域への誇り」「国際相互理解の増進」という4点を「観光の意義」として列挙しています。

 国としては、このような意義があるからこそ観光に取り組むべきだ、ということですね。「地域活性化の切り札」でもあるので、先日、石破首相が「新しい地方経済・生活環境創生本部」の初会合において、地方創生の交付金を倍増し、観光業の付加価値を高める取り組みなどを支援する考えを示したところです。

 次に、国における基本計画を見ていきましょう。

 令和5年3月に閣議決定された国の「観光立国推進基本計画(第4次)」では、目指す2025年の姿として、次の2点を掲げています。

■ 活力に満ちた地域社会の実現に向け、地域の社会・経済に好循環を生む「持続可能な観光地域づくり」が全国各地で進められ、 観光の質の向上、観光産業の収益力・生産性の向上、交流人口・関係人口の拡大がコロナ前より進んだ形で観光が復活している。

■ 万博の開催地である我が国が世界的潮流を捉えた観光地として脚光を浴び、「持続可能な観光」の先進地としても注目されている。


 さまざまな要素が入っているため、若干分かりにくいところはありますが、「持続可能な観光地づくり」が大きなキーワードとなっていること、目標数値には旅行消費額や旅行消費額単価などを設定しており、「質の向上」を目指していることが分かります。