生成AI&LLMを導入するコツは?導入したJLはどうなった?今後の展望と合わせて紹介-日鉄ソリューションズがツーリズムEXPOでセミナー
日本航空がAlliをトライアル導入、いったいどうなった?事例を紹介
続く第2部では、日本航空(JL)デジタルテクノロジー本部運営企画部デジタル活用推進グループアシスタントマネージャーの山田将平氏が、「企業における業務効率化/BPRの新しい姿」をテーマに講演を実施した。
JLでは2015年から「ワークスタイル変革」として部門ごとに年間労働時間1850時間の達成をめざしているところ。山田氏は「実現には残業をほぼせず、有休を全部消化して達成するレベル」と説明。実現のために業務プロセスの見直しと再構築(BPR)に取り組み、「既存の業務を泥臭くなくす・減らす・変えるを考え、業務の見える化からスタートした」と話した。
JLでは本部やグループリーダーのトップダウンでの改革に加え、現場からの要望にボトムアップで対応するため、2022年によろず相談窓口を設置。BPRに取り組み、2023年度では67組織で年間3万1034時間を効率化し「小さいながらも手応えを感じている」という。
また、JLではこのほど「Alli LLM App Market(Alli)」をトライアル導入したところ。財務部や広報部、調達部、貨物本部、空港本部などで40アカウントを活用し、問い合わせ対応や文書検索・作成アプリなど、業務の効率化で利用できそうなアプリを作成した。
Alliは実装している生成AI・LLMアプリのカスタマイズや新しいアプリの生成がノーコードでできる。マニュアルと口頭での説明で早ければ5分程度でアプリが作れるため、各業務担当者がアプリづくりにチャレンジした。ただし、業務に生かすために検討を進めた結果、生成AIを使わないアプリを作った課もあったという。
山田氏は「業務を見直して課題を確認し、解決を考えたときに必要なら生成AIを利用すればいい」とし、個人的な意見としながらも「技術は目的でなく手段で結果を出すのが目的。使わなくて済むなら使わなくてもいいし、使えるなら徹底的に使って効果を出していきたい」と話した。
Alliのトライアルについては「BPRの効果が出た。社員の考え方や見方を変えるきっかけにもなった」と評価。一方で「魔法のツールではない、サポートも必要」と語り、「サポートは受けるが、最終的には自社でどう使いこなすかを考えなければならない」とまとめた。
生成AIはEX導入がトレンド、社員のモチベーション維持が重要
第三部では豊島氏と山田氏がパネルディスカッションを行い、導入の際の工夫などについて解説した。山田氏は生成AI導入を主導した立場から、社員のモチベーションを保つことが重要であると指摘。「生成AIを活用できそうなところをひたすら探すのと、やりたいところで生成AIを使うのではアプローチが違う。何を実現するかから入っていかないと、『便利になっていない』とがっかりされることが多い」と話した。また、豊島氏も「生成AIは不確実性が高いプロジェクト。それを認識して小さく実績を積み上げて大きくする、プロジェクトマネジメントが必要」と話した。
また、豊島氏は生成AIはもっともらしい誤情報を提供してしまうハルシネーションを起こすことがあるため、CX(顧客体験)の事例は少なく、EX(従業員体験)での導入がメインであることを指摘。コールセンターで生成AIが過去の問い合わせ実績を探し、問い合わせへの回答に利用できる情報を提供するなどの事例を紹介し、「正確性はある程度大切だが、100%でなくても運用者が咀嚼して活用できるケースと相性がいい」と解説した。
山田氏もCXでの実施を検討したものの、リスクの高さからEXでの活用にとどめたとし、「CXに(生成AIを)どう入れていくのか悩んでいる。間違った答えがあるので品質が維持されるのか、それが許容されることはあるのかが悩み」と今後の課題を挙げた。