生成AI&LLMを導入するコツは?導入したJLはどうなった?今後の展望と合わせて紹介-日鉄ソリューションズがツーリズムEXPOでセミナー
今後の注目は「マルチモーダル」「AIエージェント」「専用LLM」
そんな遅れている日本市場だが、豊島氏は将来的には「マルチモーダル」「AIエージェント」「専用LLM」の3点で盛り上がると予想する。マルチモーダルとは、テキストに加え画像や動画、音声などの複数の種類を扱えること。例えばOpenAI社が5月に発表した「GPT-4o」は音声や動画にも対応しており、動画の要約などが可能だ。
豊島氏はマルチモーダルについて、ECサイトで画像や動画と商品のタグ付けに利用できるとし「旅行商材でもできるのでは」と解説。コールセンターの音声データを生成AIで文字起こし要約し、カテゴリ分けして可視化するなどの活用も可能だという。
AIエージェントは、複数のAIモデルを組み合わせ、一つのモデルでは難しい高度で複雑なタスクを自動で実行できるシステムのこと。豊島氏は、個別のアプリやソフトウェアを使用している現状を説明したうえで、「近い将来はAIエージェントが自律的にタスクを進めるようになる」と予想する。例えば「旅行の日程を決めて」と指示すると、生成AIがカレンダー、天気、顧客の属性・思考を考え、情報収集して旅行日程をアウトプットしてくれるようになるという。
また、将来的には「旅行領域にホテル、フライト、レンタカー等予約を束ねる汎用AIエージェントが現れ、旅行について質問するとすべて予約までしてくれるエージェントが現れるのでは」との見方を示した。
専用LLMについては、現在はLLMのモデルが多様化するなか、モデルの特性に合わせて3つ以上のLLMを使い分ける傾向があることを説明。専用LLMは特定の分野に対し回答精度を高めることができ、社内利用に限定して情報漏洩を防ぐことができることから、セキュリティ面に考慮して専用LLMを作ってほしいというニーズもあるという。
ただし、LLMは運用コスト面など課題もある。このため豊島氏は「大きなモデルではなく、(モデルのサイズが小さい)SLM(小規模言語モデル)で小さく作るのもあり」と話した。
また、生成AIの精度は、LLMに検索技術を組み合わせたRAG(Retrieval-Augmented Generation,検索拡張生成)がトレンドになっているところ。RAGで自社データベースなど特定のデータ領域の検索・抽出を行い、その内容を組み合わせると、LLMに精度の高い回答を出してもらえるようになる。
豊島氏はRAGについて「プラスアルファの知識でLLMが回答できる」とメリットを訴求。同社が3月に発表したLLMアプリケーションプラットフォーム「Alli LLM App Market(Alli)」をもとに、活用方法を説明した。Alliでは業務効率化に活用できる企業向けAI・LLMアプリを100個以上提供し、必要なものを選択して利用できるほか、企業向けのRAG技術も実装済だという。
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