TIFS会員インタビューVol.13 世界の中での日本人旅行者の立ち位置とは-G2トラベル・ジャパン 六反隆徳 氏
六反 一方、別の視点にはなりますが、「日本人はチップが少ない」という声はここ5年でかなり耳に入るようになりました。例えばバスの運転手の場合、30名規模のアメリカ人の団体を5日間アテンドしたら500ユーロ以上チップをもらえるが、日本人のツアーだと200ユーロあるかどうか。彼らも生活が懸かっているので、チップの額の違いにより、日本人の仕事が忌避されがちになる傾向が徐々に見えているようです。
アメリカの事例は、チップの額が高すぎるという見方もありますし、ツアーに参加した個々人がその場で出したチップをまとめて支払っているケースもあるなど、国によって対応の仕方も違います。我々ランドオペレーターの立場としてもチップ金額の指標は出していますが、それでも日本人団体旅行の場合は、旅行会社がガイドや運転手、レストランなどにチップを払いますので、最終的にチップの額を決めるのは旅行会社です。
今まで一年を通して旅行をするのは日本人が多かったものの、世界各国の旅行市場が成熟してきた結果、以前より多くの国の方たちが様々な時期に旅行するようになりました。現地での動きやすさや仕入れのしやすさを考えても、チップは旅行客自身が支払うほうが良い時代になってきているのではとも思います。
六反 かつて日本人が2000万人も海外旅行へ行っていたのは、「安かった」というのが理由のひとつでしょう。以前は旅行会社を掛け持ちし、あちこち申し込んで最終的に一番価格や条件が良いツアーを選び他はキャンセルするお客さんも多かったと聞きます。今は事前に申し込んだら、基本的にそのまま変更せず渡航する人が増えたようです。その分、せっかく申し込んでいただいたお客様にはこまめにコンタクトし、最新情報を適時お伝えするのが良いのではと感じています。
何か変更が入る場合は、基本的に良いお知らせではないことが多いです。例えば、パリはパラリンピックが終わったあと交通規制が入るはずです。そうなるとパリの市内観光が従来の予定通りできなくなる可能性が出てきます。ランドオペレーターとしても旅行会社にはお伝えし、出来得る対策は練りますが、特に旅行慣れされている方には、「かつで出来たことが出来なくなっている」というギャップを激しく感じてしまうかもしれません。申込時より状況が変化していっても、細やかなコンタクトを通じ、ギャップを和らげることが大切ではと感じています。
六反 G2グループとしては外資企業として日本に参入してきた立場ですので、基本的にはチャレンジという言葉をモットーにしてはいますが、何でもかんでも手を出すわけではありません。石橋は渡らない訳ではないが、必ず叩きます。行けるところは行く、駄目なときはきっぱり見切りをつけ、お客様である旅行会社と現地、そして我々の三方よしが実現でき、長くビジネスを続けられるかたちを選んでいきます。
また、TIFSへの期待に通ずる点として、最近危惧していることとしては、インバウンド旅行者が増えるのはいいことだが、これだけ自然災害が多くリスクのある国だと、実際のところどこまで対応できる体制になっているのか、という点があります。先日、能登の様子も見に行きましたが、震災時も外国人が滞在しており大変苦労をされたという話を聞きました。インバウンドを受け入れるのであれば、何があっても対応できるように責任を持ってやらないといけません。OTOAでは、海外にいる日本人に有事があった際に備えて、しっかりとしたセーフティーネットを準備していますが、日本においてはどうでしょうか。国だけではなく我々業界人も常に考えるべき課題だと認識しています。
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