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【コラム】インドネシア最新出張レポート、海外BPOという可能性

 8月上旬、ジャカルタとバンドンにて、人材事業(インドネシア人の教育と日本の観光産業への紹介、活躍支援)の現地提携校との打合せ及びインドネシアでのBPO事業の可能性に関して、現地との意見交換を行いました。

 このコラムでは現地での意見交換にて見えてきた、インドネシアでのBPOの可能性と課題に関して報告します。
※今回は日本の旅行会社の社長及び経営陣とご一緒させて頂いた為、主に旅行会社の視点で記させて頂きます。インドネシア人はじめ外国人材の日本での活用に関してはいずれこのコラムで書かせていただきます。

 先ずはインドネシアの基本情報として、

  • 人口は約2.7億人(日本の2倍以上、世界第4位)、平均年齢は約29歳(日本より約20歳若い)、国全体の平均月収は約3万円。
  • 首都ジャカルタでは全国平均の倍以上と地域差大。
  • 女性の平均収入は男性より約25%低い。
  • 国民の8割強がイスラム教徒。

 また、筆者の私見としては、

  • 語学習得能力が高く(公用語以外にそもそも500を超える言語が使われている)、特に都市部の若年層においては英語に関しては簡単な日常会話に困らない人も少なく無い。
  • 全国民の8割以上がイスラム教徒だが、特に若い世代においてはいわゆる「ソフトムスリム」と呼ばれる戒律に柔軟な姿勢の人が一定数いる。
  • 基本的には穏やかでスローペースな人が多いと言われるが、海外や外国企業で働く事を志向する人にはハードワーカーも多く、上昇志向も高い。
  • そして、日本及び日本人に対しては好感を持ってくれている人が多く、日本で或いは日系企業で働きたいと思っている人は多数いる。

 翻って、日本の観光産業が直面している人事面での主な課題として筆者が認識しているのは以下の通りです。

  • 人手が足りない=採用できない、採用しても定着率が低い・離職率が高い。
  • 給与や待遇、担当業務内容に不満を抱いている人が一定数いる=離職予備軍
  • 雇用側の状況としても給与を上げたくても今の収支構造、コロナの後遺症もあり難しい。

 では、これらの課題が今を乗り切れば、要するに時間の経過とともに自然に解消される課題かと言えば、むしろ時が経てば経つほどベテラン社員の定年、マクロでの人口減等で悪化すると想定せざるを得ないのが現実かと思います。

 トラベルビジョンへの読者の投稿等でも安易な外国人頼みを懸念する声が聞かれますし、場当たり的に「人手」のみを外国に頼るのは誰にとっても望ましいことではないと筆者も思います。

 目指すべきは現社員、力を借りる外国人、雇用企業の三方よしで、その結果として社会(日本の観光産業及び力を借りている外国人やその人の母国)に貢献できる姿だと思います。

 もちろん、簡単ではありませんが、その手段の一つの可能性として海外BPOが考えられると思っています。

 言うまでもなく全ての業務が海外BPOに適しているわけでも、海外にBPOチームを編成すれば直ちに機能する訳では有りません。委託する業務の見極め、これまでの業務フローの見直し、育成のための時間を含めたリソースの確保、そして何よりこの新たな取組を推進する強力なリーダーシップが必須等々、とBPOにて成果を出すためのハードルは少なくありません。

 これらを踏まえた上でも、海外BPOの可能性、メリットは検討に値すると筆者は考えます。

 どの業務を委託するべきかは各企業によって違うでしょうが、分かりやすい例でいうとビザのオンライン申請業務などは適していると思われます。

 今いる日本の社員には単純作業と見なされ、キャリアステップに繋がりにくく、雇用条件の劇的な改善が見込み難い。一方、インドネシアの方にとっては母国を離れることなく、自国での水準に比べ高い報酬が期待でき、BPOチーム内でのスーパーバイザー(SV)等への昇格、日系企業での勤務経験を履歴書に書ける事による新たなキャリア獲得の可能性等、メリットは少なからずあります。

 そして、これらの業務をアウトソースすることにより、これまでそこに従事していた社員には、顧客対応、新たなキャッシュポイント創造、抜本的な業務改革、海外BPOの管掌等、日本語が必須でこれまでの経験も活きる新たなポジションで活躍してもらう。

 企業にとってはインドネシアと日本の人件費やその他販管費の差により生じるコスト削減に加え、他国に一部でも機能を移転することにより、日本における自然災害等への一定の備えにもなり得ます。

 ただし、先にも述べたように、BPOの実現と成果を得るためには、相当な努力と意識改革が必要です。

 例えば、インドネシアにおいて5名のチームを編成する場合、最低でも日本語がある程度できるSVが1名必要となります(日本側から英語での指示が可能な場合は英語話者、この方が圧倒的に採用しやすい)。そして、そのSVへのレクチャーのため、日本に一定期間(業務により数週間~数か月、オンラインで可能な場合もあり)来てもらう必要が生じます。また、SVの教育が終わった後も、スタッフへの教育のために日本から教育係がスタート段階では少なくとも数週間、それ以降も年に数回は現地に赴くことが、関係構築、モチベーション維持・向上のためにも必要になります。

 日本人の新卒でも、ある仕事を一人前にこなしてもらえるようになるまでには相当な時間がかかるのと同様或いは言語の問題もありそれ以上に最初は時間がかかります。

 しかし、一度チームを編成し、機能するまでに育成出来れば、その後はある程度自走するものと期待でき、日本同様にある程度離職者が出てもチーム内で新人の育成が可能になるはずです。

 今回現地との意見交換を基に算定したおおよその費用は、上記5人体制で月額80万円前後(SVを含む人件費及び法定福利、オフィス関連費用、労務等の管理費用等全て含めて)。
※SVの教育費や日本側社員の渡航費、PC等の実費は別。
※スタッフの雇用は現地BPO事業法人が行い、日本企業はそのBPO会社に業務委託をするかたちになります。

 「人手不足」と言う課題の解決にはAI等の技術活用、シルバー人材や外国人の採用、業務分担の見直しや事業そのものの取捨選択等々選択肢は色々と有りますが、その選択肢の一つに海外BPOもなり得るかと思います。

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