グリーンシーズンの集客を伸ばす長野県白馬エリア、通年でのマウンテンリゾートに向けて続々と登場する新たな仕掛け

 スキーリゾートとして世界的にも人気の長野県白馬エリアは近年、グリーンシーズン(4月~11月)の集客も伸ばしている。需要の季節平準化を目指してプロモーションを強化するとともに、各所で開発が進められてきた。目指すのは、オールシーズンで楽しめるマウンテンリゾートだ。その取り組みの一旦を取材した。

グリーンシーズンを牽引する「白馬岩岳マウンテンリゾート」

 大町市、白馬村、小谷村を管轄する地域連携DMO「HAKUBA VALLEY TOURISM」の統計によると、2023年の3市村への夏期観光客数は、コロナ前2019年比162%の約266万人。その好調な集客を牽引しているのが「岩岳リゾート」が運営する「白馬岩岳マウンテンリゾート」だ。

 白馬岩岳マウンテンリゾートでは、2017年から本格的にグリーンシーズン強化の取り組みを展開。2018年に絶景テラス&カフェの「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」、2019年に「岩岳グリーンパーク」、2020年に「ヤッホー!スウィング presented by にゃんこ大戦争」、2022年に「白馬ヒトトキノモリ」、2023年に「白馬ジャイアントスウィング」を開業するなど次々に新しいアクティビティを打ち出してきた。

 白馬岩岳の標高1289mの山頂にある「白馬マウンテンハーバー」からは、雄大な白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳)を正面に見据え、秋になると「山頂の冠雪」「山の中腹の紅葉」「麓の樹木の緑」が一度に楽しめる「三段紅葉」が広がる。

「白馬マウンテンハーバー」からは雄大な景色を堪能

 山々に向かって飛び出すような感覚が味わえる「ヤッホー!スウィング 」や「白馬ジャイアントスウィング」は、アルプスの少女の世界が実体験できる巨大ブランコとして、SNSでもバズった。さらに、マウテンバイク、マウンテンカート、乗馬などのアクティビティのほか、ウォーキングコースも整備されている。

白馬三山に向かって飛び出すような「ヤッホー!スウィング」

 飲食施設も充実。白馬マウンテンハーバーにはニューヨーク発のベーカリー「THE CITY BAKERY」、デリスタイルのレストラン「Hakuba DELI」に加えて、新たに「Soup Stock Tokyo 白馬店」もオープンし、白馬店限定のスープも提供している。加えて、山頂からリフトで下った「白馬ヒトトキノモリ」では、ティーラテと焼き⽴てスコーンの専⾨店「CHAVATY HAKUBA」が来場者を迎える。

 以前までは、白馬のグリーンシーズンはハイキング需要が中心だったが、岩岳リゾートの開発は、そのハードルを下げ、普段着のまま家族やカップルが楽しめる場所として集客力を高めた。白馬岩岳マウンテンリゾートの2023年夏季シーズン(2023年4月28日~11月12日)の来場者数は22万2000人と冬季の14万7000人を超えた。2024年ゴールデンウィーク期間中の来場者は前年比10%増の約2万1500人となり、3年連続で過去最多を更新した。

 岩岳リゾートは、山頂エリアへの新しいゴンドラを今年12月に開業する。現在の6人乗りから10人乗りになり、スピードもアップ。輸送力が格段に向上することから、山頂への送客強化と来場者の利便性向上に期待がかかる。

青木湖湖畔にはカフェがオープン、多彩なアクティビティも

 ⼤町市北部にある⻘⽊湖の湖畔に、⼤型オールデイ・カフェ「ao LAKESIDE CAFE(アオ・レイクサイド・カフェ)」が7月13日にオープンした。白馬村を拠点にリゾート再生事業を展開する「ズクトチエ」が運営する。ズクトチエ共同代表の太田悟氏は、この場所にカフェをオープンした理由について、「この綺麗な眺めを、美味しい食事やコーヒーとともに、ゆったりと気軽に楽しんでもらいたい」と説明する。

「ao LAKESIDE CAFE」には、広い駐車場も完備している。

 食事では、白馬ハムのソーセージなどを添えた「バターミルクパンケーキ・コンボプレート」、バジルと野沢菜を使った「野沢菜ジェノベーゼ蕎麦の実のニョッキ」など地元の食材を使ったメニューが並ぶ。ドリンクは、青木湖をイメージしたオリジナルの「”ao”レモネードソーダ」がシグニチャードリンクだ。

 太田氏によると、湖畔での朝食を提案するために、オープンは朝8時からにしているという。

「”ao”レモネードソーダ」と「バターミルクパンケーキ」

 「ao LAKESIDE CAFE」では、飲食に加えて、近隣事業者と連携したアクティビティ体験も提供している。青木湖でのアクティビティでは、透明度の高い湖を楽しんでもらうために底か透明になったクリアカヤックを用意。そのカヤックでは、カフェでテイクアウトした食事を楽しむこともできる。また、近年人気が高まっているSUPも体験することが可能だ。

青木湖ではさまざまなアクティビティも

 さらに、カフェは大町市のシェアサイクルステーションとしての機能も備え、電動アシスト付き自転車の貸し出しも行っている。青木湖一周は約30分。湖を横目に、森の中を走る爽快感はグリーンシーズンならではの体験だ。

 このほか、今秋にはカフェの敷地内にサウナもオープンする予定。「サウナから湖にそのまま飛び込むような」(太田氏)施設になるという。