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回復順調のオーストラリア、各州の現況と今後の戦略まとめ(前編)

  • 2024年6月11日
クイーンズランド州政府観光局

ポール・サマーズ氏(日本局長)

ケアンズ観光局

坂本統氏(セールス&マーケティング・マネージャー・ジャパン)

ゴールドコースト観光局

小林芳美氏(マーケティングマネージャー)

(右から)小林氏、サマーズ氏、坂本氏

ケアンズとゴールドコーストという人気デスティネーションを擁するクイーンズランド州。32年のオリンピック・パラリンピック開催が決まっているブリスベンも注目の的だ。

回復状況は、主にケアンズが牽引。ケアンズはヴァージン・オーストラリアが羽田から直行便を就航したこともあってすでに座席数が2019年を3割以上超過しており、それもあって23年7月から24年2月までの8ヶ月間における日本からの訪問者数は9%減となった。教育旅行やインセンティブよりもFITが順調な状況だ。

ケアンズの好調さについてケアンズ観光局(TTNQ)でセールス&マーケティングマネージャー・アジアを務める坂本統氏は、コロナ禍でも地元企業が日本人営業担当者の雇用を継続するなど「諦めない力強い姿勢」が大きかったと指摘。また、州政府の助成金や大幅に引き上げられたTTNQの予算によるプロモーションや独自でPR代理店と契約して露出を増加してきたことも効果を発揮したと分析した。7月からの新年度ではコロナ前の水準への完全回復を必達の目標とする。

一方、ゴールドコーストはジェットスター航空(JQ)が成田からのゴールドコースト線をブリスベン線に切り替えたことで空港からの移動費用が跳ね上がったこともあり回復は足踏み状態。コロナ前には年間22万人程度であった訪問者数が2023年は12.5万人に留まったが、次年度は2019年並みをめざす。

状況としては、教育旅行はすでに戻っている一方でFITやパッケージは伸び悩み。夏に向けて今後の動きに期待しつつ、ファミリー層や低価格志向の層の本格的な回復にはまだ時間がかかると見られることから、ラグジュアリープロダクトの認知向上にも取り組む。

課題としては、他都市と比較して地名の認知度と渡航意欲に乖離があることから、消費者向けのメディア露出や広告展開などに力を入れていく。また、課題のブリスベン空港からの移動費用については日本路線に合わせて混載バスが4月から運行が始まっており、問題解消に期待がかかる。

このほか、「ハートリーフ」が知名度を高めてきているハミルトン島も、今年2月にはTAとの共同サポートが日本テレビの「シューイチ」での合計約50分の露出に繋がり、ハミルトン島のウェブサイト訪問者数が通常の20倍に増加。夏以降の来訪増が期待されているという。

そして、州全体としての方向性としては関西での需要喚起を強化。JQがシドニー線を開設したことで競争が激しくなったことを受けたもので、TAのマーケットプレイスに合わせて大阪で独自のワークショップも開催予定だ。ちなみに、関西圏では教育旅行でもJQの利用が進み始めているという。

また、教育旅行では需要回復とともにホームステイ先の確保が難航するなど飽和状態との認識が一部で広がっているが、実際には7月最終週と8月第1週というピーク期のみの話で、オフピーク期の提案や受け皿の拡充によって状況の改善をめざす。

ブリスベンについては、世間のムードとしてもようやくパリ五輪という段階で盛り上がりはこれからの段階だが、大型の再開発が進んでいた「クイーンズワーフ」が8月末についに開業予定であるほか、来年のATEの開催地にも選定。TAを含めて力が入っていくことが予想される。

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