あなたもホテルオーナーに!宿泊業の始め⽅2-MATCH 松宮英範氏
結論からいうと、どちらも不可能ではありません。これは稼働率の問題と併せて年間ベースで計算しないといけませんが、需要と供給バランス、競争力、様々な要素を加味しながら、私は後者2つを選択し、55㎡×8部屋のコンドミニアムタイプのミニホテルや、87㎡×2部屋だけの小さなホテル、162㎡の一棟貸切ホテルなどをプロデュースしています。
殺到するインバウンドがこのビジネスモデルを支えてくれています。彼らが持ち歩く、小学生位ならまるまる入ってしまう巨大なスーツケースは、10㎡の狭い部屋では開けることさえままなりません。日本人のように1泊中心ならまだしも、4泊も5泊も、時に数週間も滞在する彼らには、キッチンも洗濯機もダイニングテーブルも必要なのです。
年明けの当施設の国別利用者状況をご紹介すると、東アジア39.6%、東南アジア19.3%、北米14.2%、ヨーロッパ9.1%、豪州9.0%で、日本はわずか7.1%です。1グループの平均人数が5.5名、平均宿泊日数は4.7泊です。家族や友人と一緒に、⾧く快適に過ごせる「コンドミニアムホテル」が選ばれているのです。
どうやって集客しているか、脱サラ起業した1人社⾧だと毎日のように尋ねられます。基本は、OTAと自社ホームページです。旅行会社への営業はやったことがありませんが、エージェントさんからもたまにご送客頂きます。
宿泊業は、物販等と比べると比較的、集客しやすいマーケットかもしれません。経営者の会などでECサイトで物販されている方の話を聞きますが、それはそれは壮絶な競争の中、血のにじむ努力を何年も何年もやってようやく売れるようになるか、いまだ売れないかの武勇伝ばかりです。
宿泊業も予約サイト中心で販売することは同じなのですが、供給側は物販サイトほどは多くはなく、民泊はありますが個人で誰でも参画できるものでもありません。不動産という特性上、それなりの資金と、ライセンスのある許認可制(民泊は届け出)の為、それなりの参入障壁があるからです。そして購入者はというと、日本人だけではなく、世界中ほとんどの国の方がターゲットになり、無限大の可能性を秘めています。常に数十か国のゲストを迎えているのは、前述した通りです。
魅力ある施設になっているのが最低限の前提条件ですが、旅行会社26年のサラリーマン時代に揉むに揉まれた経験がとても役にたっているようです。苦労を重ね、新企画を盛り込んでようやく発表したツアー商品が、ほぼ同じ内容で1000円安く、あっけなく翌週に新聞広告で競合他社から販売されてしまう血みどろのレッドオーシャンを泳いできた身からすると、ホテル業は3~4年単位での計画が当たり前ですし、同ジャンルのコンドミニアムホテルも徐々に増えてきてはいてもすぐに倍になるということもありません。また、レビュー商売につき⾧く販売実績のある方が有利な側面もあり1年先の予約も取れるので明日が見えないこともなく、いろんな意味でまだブルーオーシャンと言ってもよく、視界良好で泳ぎやすいのかもしれませんね。
災害やパンデミックには弱いことを理解し、油断大敵と常に足元と将来を見続けられていれば、であることは言うまでもありませんが。
次回は、リゾート地でのヴィラ事業に関して書きたいと思います。
株式会社MATCH代表。大学卒業後、大手旅行会社で26年勤務。主に富裕層向けの海外ツアーを手掛ける。50歳を機に、コロナ禍の2021年に独立起業し、ニッチなホテルのプロデュースと集客支援を行う。インバウンド向けのミニホテルや長期滞在型のコンドミニアムホテル、関東近郊のリゾート地で展開する一棟貸切タイプのラグジュアリーヴィラなど現在12施設の運営や集客に携わる。その他、集客にお困りの施設の宿泊コンサルタントや、神奈川県で第3種の旅行業登録、各種講演や大学の講師なども務める。大阪出身、横浜市在住。