JATA 不正事案受け再発防止策作成、新たに除名処分含めた懲戒規定整備へ
コロナ関連事業での過大請求や雇用調整助成金の不正受給、大手5社による談合疑いなど、昨年相次いだ業界内での不正事案に関し、日本旅行業協会(JATA)が27日会見を開いた。JATAは、昨年12月に外部有識者委員会を設置し、原因分析および年度内に再発防止策をまとめる方針を示していた。
外部有識者委員会では、一連の不正事案に関する検討や、新たな不正事案に関する点検調査、会員等へのヒアリングを通した原因分析などを行い、再発防止に向けた提言をとりまとめた。
報告書によると、新たな不正事案は検出されなかったが、一連の不正事案の主な原因として「受託事業における認識・知識不足」「利益を過度に指向する風土、コンプライアンス軽視の姿勢」「不正防止の業務管理体制の不備」「JATA地区委員会のガバナンス不全」の4点を指摘。
JATAは、同委員会からの提言を踏まえ、"「内部統制」「地域組織」「意識」三つの改革の推進"とした個社毎やJATAとして取り組む再発防止策を策定。
内部統制の改革では、電子的システムの活用などを通した、本社による支店業務管理体制の強化、チェックプロセスの整備を推進する。JATAとしては、当該システムの紹介、導入を促すほか、会員企業の不正事案抑止のため担当部署を開設する。また、今後の新たな不正事案に対する除名処分等含めた懲戒規定を整備した上で、懲戒委員会も設置する方針だ。
地域組織の改革では、支店におけるコンプライアンス・ガバナンス強化のため、支店長クラスへの各種研修の受講必須化を推進する。また、談合の温床との疑いを持たれぬようJATA地区委員会は廃止する。改めて設置する場合には、目的や位置づけなどを明確にした上で、ガバナンスを強化し設置する。
意識改革では、JATAによる受託業務の理解促進を目的として研修や、コンプライアンス研修を実施する。また、旅行業取扱管理者の定期研修にコンプライアンスに関する科目を導入することなどが取り決められた。
観光庁に対し
再発防止策含めた報告実施
会見前には、JATA髙橋会長らが観光庁を訪れ、髙橋長官に報告を行った。観光庁では、昨年5月に近畿日本ツーリストと日本旅行による不正事案を巡ってJATAへ総点検や再発防止に関する指示を行ってきたが、その後も新たな不正事案が発覚したことから、一連の事案に関する防止策の提出は今回が初となった。冒頭の両者コメントは以下の通り。
(左から)観光庁髙橋長官、JATA髙橋会長
JATA髙橋会長「旅行業界におきましては、残念なことながら、不適切な事案が相次いで発生をいたしました。改めてお詫び申し上げます。こうした事態を受けまして、私ども当協会JATAにおきましては、外部の専門家から成る有識者委員会を立ち上げて、様々な角度から再発防止に向けたご提案をいただいたところであります。こうした提案を踏まえ、今般、再発防止策を策定いたしましたので、会員各社に周知徹底を図るとともに、私自らも先頭に立って、不正事案撲滅に努めてまいる所存でおります。どうぞよろしくお願い申し上げます。」
観光庁髙橋長官「昨年5月に観光庁より指示を発出して以降も、相次いで不正事案が発覚したこと。また、観光庁より指示をして、再発防止策の検討に時間をここまで要したこと。さらには今回の(コンプライアンス)遵守策の提出にここまで時間を要したことについて、誠に遺憾であります。令和3年(JATA)髙橋会長就任後も、観光庁よりコンプライアンス遵守の徹底について文書を発出いたしましたが、それ以降も不正事案が多数発生したこと。そのことに対する責任は非常に重大なものであると申し上げざるを得ない。今回の事案は直接旅行業に関わる事案ではありませんが、多数の旅行業者が不正事案を働き、国民からの信頼を失墜させたことは非常に重大な問題であったと認識しております。このコンプライアンス遵守策、徹底的に会員企業に実行してもらうべく、会長として本来果たすべき責任をしっかり果たしていただき、会員企業を指導していただくようにお願い申し上げます。観光庁としても、厳しく監督をさせていただきます。」