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世界遺産登録を契機に「持続可能な島」へ、佐渡で進む観光コンテンツの拡充と課題

  • 2024年1月31日

 磨き上げという点では「佐渡島の金山」も例外ではない。金山の運営を行うゴールデン佐渡社長の河野雅利氏によると、23年度は11月までで13万6000人の方が同施設を訪れており通年でコロナ前を超える来場者を見込むものの、ただ坑道を歩くだけではその魅力は伝わりにくい。同社では、来る世界遺産登録に向けて整備を進めており、昨年には坑道内にWi-Fi環境を整備し、日本語と英語による音声ナビを始動した。来場者は各箇所のQRコードを読み込むことで、解説を聞きながら坑道を巡ることができる。

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ゴールデン佐渡 河野氏

今後の最大課題は

 各地域で取り組みが進むなか、島内の観光事業者や市の関係者らが口を揃えて課題と挙げるのが「二次交通」の問題だ。佐渡島までの交通手段については、トキエアが東京~佐渡間の就航を今年秋を目標に準備を進めており大幅な利便性向上が期待される。一方、二次交通に関して、路線バスは島内をほぼ網羅しているものの本数が少なく観光としての利用は大きくは見込めない。現在観光客のほとんどがフェリーを活用した自家用車かレンタカーでの観光となっているが、各観光施設によっては収容できる台数に限りがあるなど、今後多くの観光客が訪れた場合にはオーバーツーリズムなどの問題へ発展する恐れもある。

 そんな二次交通の課題に対する一手として、佐渡市が進めるのがパークアンドライドで、各拠点から主要観光施設への直通バスを運航することなどが検討されている。現在拠点として候補に挙がるのが各港のほか、佐渡金山のガイダンス施設として19年にオープンした「きらりうむ佐渡」。世界遺産としての歴史や価値を映像などを交えながらわかりやすく伝える施設だが、パークアンドライドの拠点とすることで交通の課題を解決するとともにガイダンス施設から金山へと導線を作りたい考えだ。

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「きらりうむ佐渡」では4つの映像などを用い世界遺産の価値を伝える

 先程紹介した屋久島でも交通の課題はあるが、世界遺産登録による観光客の増加を背景にレンタカーや観光バスなどの事業者は増えており、屋久島町役場の岩川氏によると世界遺産登録前の1992年と2012年を比較すると、各事業者はおよそ3~4倍の増加を見せた。

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 ただ、屋久島町が21年に実施した住民へのアンケートでは「観光客が増加することでの地域への悪影響」として、「レンタカーや観光バスによる交通事故の危険性の増加」が34.9%と2番目に高く、佐渡島でも世界遺産登録後に事業者の増加、利便性の向上が期待されるなかで、いかに観光客誘客に対し地域への理解が得られるかも重要となりそうだ。

 シンポジウムに登壇した跡見学園女子大学観光コミュニティ学部の篠原靖准教授は、現在の佐渡市の高齢化率が43.7%と少子高齢化が進む現状を踏まえ、「佐渡の経済をどう蘇らせるか考えるうえで人口減少は致し方ない。外貨を稼ぎながら今ある産業に付加価値をつけてどう稼ぐかが佐渡の未来にとって大切」と、3次産業以外の地域住民を含め観光の重要性を説いた。

 渡辺佐渡市長もシンポジウムで「佐渡の本当の良さを発信するためには、地元の人々が色々なところを見て、気づいて、伝えていく。世界遺産登録は皆様と佐渡を元気にするために思いを一つにする良い機会になると思っている」と集まった島民らに対し観光復興へ参加を呼び掛けており、世界遺産登録を契機に「持続可能な島」として大きな発展を遂げることができるか注目される。