震災から1ヶ月 金沢の今と送客する場合の留意点は?-金沢彩の庭ホテル 髙田恒平氏

  • 2024年1月29日
-地元の方は震災前の生活をどの程度取り戻されていると思われるか、教えてください。
髙田恒平氏

髙田 私も含めて金沢駅近郊などの街中を中心とした市内の方々については、概ね普段通りの生活ができていると感じています。

 ただやはり金沢市近郊でも一部の地域においては液状化による陥没や地割れなどで道路状況が非常に悪い、地滑りが起きる、インフラ設備が復旧しないなど多くの問題に直面していらっしゃる方がおられるのも事実です。一刻も早くすべての皆様が安心して生活できる日が来ることを願って止みません。

-震災から今日までの彩の庭ホテルとしての取組をお聞かせください。

髙田 まずはお客様とスタッフの安全確保を最優先に取り組みました。

 お客様へはお怪我がないかなどの確認はもちろんのこと、突然のことに驚かれた皆様の心と体を守るべく普段は行っていない夕食の炊き出しを即日行いました。この炊き出しは状況が落ち着くまで数日間継続して行い、その間にも日々スタッフから積極的にお声がけをすることで安心してお過ごしいただけるようチーム一丸となって取り組みました。

 スタッフへはメール等での安否確認を行い、本人を含め被災されたご家族・親族の方々がいらっしゃる場合には費用を全額会社負担としてホテルの客室を避難場所に提供しております。

 それぞれが落ち着いたのちに私共ホテルとして何ができるかを改めて検討した結果、現在は石川県からの要請を受けて被災された高校生の2次避難場所の受け入れを行っております。

 また、被災地の復興に観光は極めて重要な役割を担うと考えており、外資系航空会社との観光振興に繋がる施策、インバウンド招致を目的とした営業活動も今出来るところから始めています。

-観光産業の方へのメッセージをお願いします。

髙田 被災地は未来に向けて、辛くとも、厳しくとも前を向いて歩き始めなければなりません。

 観光産業に携わる皆さまには、可能であればご自身が足を運んでいただき、状況をご理解いただきたいと思います。その上でお客様にご紹介していただき、より多くの方にお越しいただければ本望です。

-ありがとうございました。

【取材後記】

 インタビューをさせて頂き「宿」は平時においてはお客様をもてなす場で有ると同時に、被災時においては極めて重要な役割を担うインフラでも有ると再認識いたしました。

 特に「金沢彩の庭のホテル」は経営と運営が同一の為、緊急時における判断が早く、宿泊客の皆さまのみならず、近隣の方や二次避難を余儀なくされる方々への支援をいち早く実施されました。

 本来であればコロナ収束、北陸新幹線延伸と明るい展望に満ちた北陸の観光産業を襲った未曽有の震災、当事者の方々の落胆はいかばかりかとお察し申し上げます。

 我々観光産業として出来ることは、被災された方々に心を寄せ、被災地の状況を十分に配慮した上で、復興の為に一人でも多くのお客様を送ること、我々自身が現地を訪れる事かと思います。