前売り券発売の大阪万博、旅行観光産業の意欲・戦略・期待感は?(前編)

大阪・関西万博のイノベーション

 大阪・関西万博の方向性の一つとして挙げられた「万博DX」では、テクノロジーを活用することで来場者の負担を軽減し快適に楽しんでもらえるようにする計画。具体例のひとつが電子入場券で、入場とパビリオン入館のそれぞれの予約システムと組み合わせて運用する。

 愛知万博でもIC入場券などの新技術が活用されたものの、人気パビリオンの整理券を求めてゲートの前で徹夜する人々がいたり会場内でも歩くのも困難なほどの混雑が発生したりしたとのこと。これに対して電子入場券と事前予約制を導入することで、来場客はより空いている日を選べたりパビリオンの前で何時間も待つ必要がなくなったりし、運営側にとっても効率化が実現することになる。

 加えて会場内では全面キャッシュレス化を決定。「大阪・関西万博を機に日本のキャッシュレス普及率を一気に高めよう」との考えだ。

 イノベーション関連ではこのほかでも、万博関連のサービス提供や運営について企業の参画を求める「未来社会ショーケース事業」も立ち上げ。例えば、実際の会場は訪れることができない人でも万博のメッセージを体験できるような「バーチャル万博」や来場者ごとにパーソナライズしたレコメンドをする機能、言語バリアを解消する同時通訳システム、カーボンリサイクルなども実施・導入が決定。空飛ぶ車や自動運転のEVバス、水素で動く船なども準備が進んでいる。

 またEXPOの企画では、テーマウィークについて「地球の未来と生物多様性」「平和と人権」「食と暮らしの未来」「未来への文化共創」など8つのテーマとスケジュールを発表済み。

 さらに企業や教育・研究機関、政府機関、自治体、NPOなど様々なパートナーに参画を呼びかける「TEAM EXPO 2025」も実施し、すでに1400を超える参加者が集まっているところで、会場内でも参加者が発表できる場を設けている。

機運醸成へ、自らを「レガシー」に

 万博については社会全体で機運の盛り上がりに欠けているのが大きな課題だが、石川氏は万博を経験した人がこれからの日本の未来を形成するレガシーになるとの視点を提起。

 「大阪・関西万博の仕事をしていると、今社会のリーダー層にいらっしゃる方々から、『70年万博が非常に自分の中で大きな出来事だった』『そういったものを次の世代に伝えていきたい』『だから大阪関西万博を応援するんだ』という声をよく聞く」といい、「これから50年たった世の中で『あの大阪関西万博をきっかけにこういう風になったんだ』といった声が聞けるようになればこの万博をやった価値というのは実現できる」との考えだ。

 そのうえで、「せっかくの機会なので一緒に盛り上げて歴史に残る、やってよかったという万博を実現できれば」と呼びかけた。

 なお、入場券については、繁閑の差の平準化も意図して開幕直後の4月26日まで利用可能な開幕券、7月18日までの前期券、超早期・早期割引、夜間券、夏パス、団体・学校団体割引など様々な券種が発表されている