前売り券発売の大阪万博、旅行観光産業の意欲・戦略・期待感は?(前編)
2025年の大阪・関西万博まで500日となり前売り入場券の販売が開始された大阪・関西万博。度重なる経費増などでネガティブな印象が日毎に強くなっているが、10月末にその大阪で開催されたツーリズムEXPOジャパンでは万博に関する企画も複数盛り込まれ機運醸成がはかられた。フォーラムの基調講演とテーマ別シンポジウムをもとに大阪・関西万博の意義や現状、旅行観光産業の取り組みの可能性などについてまとめる(全2回の第1回)。
基調講演では、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会で会場運営プロデューサーを務める石川勝氏が「新たな時代の万博を共に創ろう」と題して万博の誕生からの歴史を振り返り、今回の万博にかかる期待や会場運営の方針などについて説明した。
歴史の振り返りから見える万博の3類型
そもそも万博は1851年にロンドンで第1回が開催されたイベントで、世界中の国々が半年間同じ場所に集って共通のテーマについて議論し合いメッセージを発信していく場として位置付けられた。
石川氏は、この初期の万博を国家の繁栄を誇示する「第1世代万博」と位置付け。一方、20世紀に入ると企業がこぞって出展しはじめて豊かな暮らしを示す「第2世代万博」となり、さらに2000年のハノーバー万博からは1994年の博覧会国際事務局(BIE)総会決議を受けて「現代社会の要請にこたえる今日的なテーマ」、特に「自然環境保護の必要性から諸問題を浮き彫りにするテーマ」に焦点を当てた「第3世代万博」と変化してきたと分類した。
2005年の愛知万博もこの課題解決への道を示す第3世代万博として「自然の叡智」をテーマに開催されたが、大阪・関西万博ではさらに「万博DX」「未来社会ショーケース」「テーマウィーク」などの事業に力を入れていくという。
イノベーションこそ万博の根幹
石川氏によると万博の大きな意義の一つは「イノベーション」で、例えば第1回のロンドンでは建築手法に革新がもたらされたほか、産業革命や植民地からの商品流入などによる商業のイノベーション、鉄道による観光のイノベーションが実現。
同様に日本では国内開催の博覧会に合わせて京都で路面電車が開業したり、フランスでもエッフェル塔やグラン・パレ、プティ・パレといったパリの重要な観光素材が万博を契機に誕生したりしたほか、そもそも日本については1867年のパリ万博に渋沢栄一が使節団の一員として参加。そこで見聞きした物事が日本の近代化に大きく貢献したと考えられる。