北米新興OTA Hopperの日本進出の可能性と影響
みずほ銀行産業調査部は北米新興OTA「Hopper」の日本進出の影響に関するレポートを公開した。
■Hopperのビジネスモデル
Hopperは、2007年カナダのモントリオールを拠点に創業。apptopiaの発表によれば、米国における2022年上半期の旅行系アプリのダウンロード数で、Booking.comやExpediaを抜いて2位を記録し、ユーザーは7000万人に上るとされている。
主要サービスは「Price Freeze」と呼ばれる価格「凍結」サービス。需給バランスによる価格変動が大きいホテルや航空券等の予約に対して、同社独自のアルゴリズムで予測した価格をもって、ユーザーが最大21日間価格を凍結することができるもの。ユーザーはサービス利用時にデポジットを支払うが、凍結期間内で予約に進んだ場合、デポジット相当額は購入費用に充当される。仮に、凍結後に予約に進まなかった場合はデポジットは回収される仕組みだ。
このサービスにより、価格凍結後の予約タイミングで実際の予約価格が凍結価格を下回っている場合、ユーザーは実際の予約価格で押さえることが可能である一方、実際の予約価格が上回った場合は凍結した価格で予約が可能となり、上昇分との差額はHopper側が負担。米国において価格に敏感な若年層を中心に支持を得ている。
また同社は、この価格凍結機能をBtoB向けにも展開している。BtoB向けサービスでは、Price Freezeをホワイトラベル化し、同業他社OTAのTrip.comやagoda等に外販。売上の50%以上はBtoB向けサービスから成り立っているという。Forbesによると、Hopperの2021年売上は1.5億ドル、旅行取扱額は11億ドルと公表されており、収支構造は非開示だが、売上の40%がPrice Freezeなど、いわゆるFintech収益と言われている。
同社は将来的にPrice Freezeによる価格優位性の追求だけでなく、蓄積した顧客データを基にAIを活用し、パーソナライズ化した旅行提案サービスの提供を目指している。従来のOTAでは、旅行者が情報を取捨選択し旅行プランを決定することが前提であったが、提案サービスが実現した場合、情報収集する時間的コスト負担を軽減できるとともに新しい旅行予約の在り方が生まれる可能性がある。
■日本進出の可能性
現在、Hopperのサービスは日本でも利用可能だが、アプリに現状掲載されている宿泊施設をランダムにピックアップし、凍結価格をホテル直接予約および楽天トラベルでの提示価格と比較すると、直接予約価格に対しては勝率40%と価格優位性は劣る。一方、楽天トラベルに対しては勝率70%と、国内大手OTAに対しては一定の価格優位性を有していることが認められる。ただし、楽天トラベルと比較して、宿泊プランが限定的であることや、掲載物件の情報量が乏しく、アプリ上の一部表記が英語といったUIの課題があり、日本におけるプロモーションも実施していないことから、Hopperの認知は国内には広がっていない状況だ。
しかし、同社は将来的には日本への本格進出を狙っていると公表しており、その場合、国内旅行バリューチェーンへの影響が生じる可能性がありそうだ。