【インバウンド】「三越伊勢丹」では7億円の追加徴税も・・訪日回復の一方で横行する不正免税、事業者側の適切な対策とは?

  • 2023年11月13日

■性善説に基づいた日本独自の免税制度が仇に

 免税の不正が続く背後には、「日本独自の免税制度」が存在します。多くのヨーロッパ諸国、シンガポール、韓国などでは、消費税(付加価値税)の免税制度において、購入時に税金を支払い、主に空港での還付を含む「リファンド方式」が採用されています。対照的に、現在の日本の制度は免税店で消費税を免除し、税抜きで販売する世界的に珍しい性善説に基づくものと言われています。

 さらに、百貨店などは免税専用カウンターを設置して免税手続きを行っているものの、こうした窓口スタッフの教育不足や毎年改正させる免税制度に対応できず、免税要件の確認が不十分であることも、不正が拡大する要因の一つとなっています。

■不正転売に対して事業者側が取れる対策とは

 このような理由から、免税店での適切な対応が不正の防止には欠かせません。まずできることとしては、免税制度に対する販売スタッフの理解を深め、従業員教育の強化が必要です。本人確認や書類の不備などにきちんと対応できる人材であることが求められています。

 ただし、これだけではすべての不正を完全に防ぐことは難しいと言えます。そのため、近年の免税電子化システムには、怪しい取引を自動検知できるようなシステムを搭載しているものがあります。

 免税販売の不正は深刻な課題ですが、新たな免税電子化システムの利用や従業員教育の強化など、打てる対策はいくつかあります。しかしながら、問題解決には各事業者によるシステムの導入だけでなく、免税制度自体の改革が必要です。日本の免税制度は独自であり、その特異性を踏まえつつ、国内外からの観光客に信頼性と公平性を提供する方法を見つけることが重要です。免税販売が適切に行われることで、日本の観光業界と経済にとって持続可能な発展の道が拓けるでしょう。

岡部大介
特定社会保険労務士。医療労務コンサルタント。岡部社会保険労務士事務所代表/合同会社Deyコンサルティング代表社員。
東京都八王子市出身。大学卒業後、建設会社、サービス業を経験し、2006年社会保険労務士登録。2011年より岡部社会保険労務士事務所設立。手続き業務、給与計算、規程作成、助成金申請、労務相談を行いながらクライアントに寄り添うサービスを目指す。