JNTOが訪日フォーラム、共通課題は「人手不足」、主要国の動向解説も
【韓国】リピーターメインのトップ市場、20代はカフェ気分で訪日
2023年1月~8月の累計訪日外客数が432万4400人(19年比8.6%減)とトップの韓国。コロナ前からリピーターがメインの成熟市場として知られており、訪日マーケティング戦略で設定した3つのターゲットはすべて訪日経験2回以上のリピーター層だ。そんな韓国では出国者数の3分の1が日本を訪問しており、韓国の旅行会社・OTAも人気の高い日本の販売に積極的だ。
ソウル事務所長の清水雄一氏によれば、韓国人の旅行傾向としてはミレニアル世代・Z世代でポイントを絞ってお金をかける「プチ贅沢」が広がっているところ。加えて無計画で日本を訪問する「シャトル日本旅行」も人気だ。20代はSNSへの依存が高く、清水氏は「週末にカフェでお茶をして会話をし、写真を撮ってSNSで共有する、その延長で日本に来る」と解説した。このほか、韓国人全体の人気旅行先としては東京・大阪に加え、北海道も人気だという。
航空便数は地方便の復便が遅れているものの、今年7月時点で19年1月比86%の週約1040便まで回復。清水氏は9月以降に航空各社が仁川/宮崎、佐賀、米子線の運航を予定していることに触れ、「東日本がすかすかなので復便・新規就航増便に注力したい」と話した。
【台湾】台湾:2位の市場はリピーターのFITメイン
コロナ前から訪日上位3市場にランクインしていた台湾。日本旅行を好む傾向が強く、9割がリピーターだ。23年1月~8月までの累計訪日外客数は19年比22.9%減の258万9200人まで回復した。
日本台湾交流協会台北事務所経済部主任観光組長の柏木彩氏によれば、台湾ではリベンジ消費による「報復性旅遊」が盛ん。ただし日本市場については航空券代や宿泊費用の値上がりなどから、競合の韓国などに比べ「割高感」が出ているところ。航空便はコロナ前比で約7割の週422便(23年夏季ダイヤ)まで戻ったものの、訪日旅行に最適な時間帯の座席は埋まっているなど課題もある。とはいえ、今年1月~6月の海外渡航者約490万人のうち36%が日本を訪問しており、日本のシェアは最も高い。
そんななか、現地の旅行会社や航空会社からはチャーター便運航の補助金や支援が欲しい、新しい宿泊施設やスポット、高所得者向けの施設情報が欲しいといった声が上がっているという。
柏木氏によれば、最近の訪日台湾人の傾向としては「久々の日本なのでまずは大都市で、その後地方に行きたい」という旅行者が多い。同氏は具体例としてお祭りや花火大会、アニメ・映画などの聖地巡礼といった特別感や限定性のあるコンテンツをあげ、「今この場所でしか出会えないものに興味が高い」とした。また、50代以上の高所得者層については「知的好奇心のあるストーリー性を重視する」とコメント。文豪の定宿や観光列車など、背景のあるストーリーや上質な体験をアピールすることを提案した。
【香港】リピーターがメインターゲット、食への興味強く
中国本土と異なり入境規制の緩和が早かった香港。訪日外客数は昨年10月以降堅調に回復しており、23年1月~8月の累計では19年比11.5%減の133万2500人まで回復した。
香港の旅行会社も訪日商品の販売に意欲を示しているが、香港事務所長の小沼英悟氏は少子高齢化や移民の増加により香港企業の約7割が人手不足に陥っており、旅行会社も同じ状況であることを説明。加えて航空料金の高止まりや日本側の旅行業界の人手不足も課題とした。
日本/香港間の航空路線については、今年の8月時点で19年冬ダイヤ比8空港減の9空港に便が運航しているところ。小沼氏は空港の人手不足などにより便数の回復が難しいとし、「空港では外国人労働者を受け入れて人材育成を進めているが一気に改善はしない。正常化するのは2024年の見込み」との考えを示した。そのうえで「香港事務所が最も力を入れる事業」として3都市圏以外への直行便再開を支援することを強調。航空会社との共同広告も実施するとした。
香港からの訪日旅行者はリピーターが多く、JNTOの4つのターゲットのうち3つはリピーター。食事やお酒に興味がある層が多く、香港内にはファーストフード店と同じ規模で日本料理店が点在しているという。このため小沼氏はミシュラン掲載店に加え、ローカルフードやフルーツ狩りなど食に関する体験を訴求することを提案した。