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ケアンズ、25年に日本人旅行者数を過去最多回復へ、サステナビリティと両立

  • 2023年9月19日

 ケアンズ観光局は9月14日、クイーンズランド州政府観光局の協力のもと在日オーストラリア大使館でメディアイベントを開催し、CEOのマーク・オルセン氏は2025年の日本人旅行者数を過去最多だった25万人の水準に戻したいと意欲を語った。

ケアンズ観光局CEOのマーク・オルセン氏

 25万人は2005年に記録した数値で、当時は1週間あたり25便の直行便が日本から就航し、オーストラリア全体への旅行者のうち3分の1がケアンズを訪れていた。直行便についてはヴァージン・オーストラリア(VA)が羽田線を開設したことで週21便にまで戻しているものの、現在は現地発の需要も大きくなっており目標達成にはより多くの座席が必要となる。

 オルセン氏は「野心的な目標」であると認めつつも、現時点で日本の3空港から直行便を得ているのはケアンズだけであること、2つの世界遺産を含めて2500のアクティビティが体験可能でどんな旅行者にも適したデスティネーションであること、そして実際のデータからも順調な回復が始まっていることなどを列挙。また、空港から10分、コンパクトな街に2万1000室の客室を備える利便性なども強みとして挙げたほか、コンベンションセンターも1億7600万豪ドルを投じた拡張プロジェクトの結果、最大で5000人まで収容可能になったとアピールした。

6月は70%まで回復、関心の高さもデータが証明

会場では観光大使らも登壇しケアンズの魅力をアピールした

 回復状況については、過去1年間の日本人旅行者数がコロナ前に比べて65%減となっているものの、月別でみると昨年の9月が83%減だったのに対して今年2月は58%減そして5月、6月は30%減まで回復。8月と9月も旅行会社からのヒアリングでは順調で、会社によっては増加に転じており、また目的別でもダイビングは20%減まで戻っているという。

 さらに、過去3ヶ月間にケアンズ行きの航空券が検索された件数を集計したデータでは、100以上の出発空港のうちでも関空が1位となり、3位に成田、6位に羽田がランクイン。直行便の飛んでいない福岡と中部もトップ20以内となっており、オルセン氏は「関心の高さを感じている」と語った。

オーバーツーリズムの対策強調、プレゼントキャンペーンも

ケアンズ観光局セールス&マーケティングマネージャー・アジアの坂本サム氏

 イベントはサステナブルツーリズムに焦点を当てたもので、テーマも「ケアンズ観光局が考える、オーバーツーリズムに悩まされない『未来を育む観光のカタチ』」。冒頭で挨拶に立ったクイーンズランド州政府観光局日本局長のポール・サマーズ氏は、自身がケアンズ観光の黎明期であった1980年代に同地で暮らしていた経験を元に、ケアンズでの滞在日数や滞在中の体験内容が大きく変化し、人気も高まっていると指摘。そのうえで、コロナ禍を経て更なる変化が見込まれるとしてケアンズの「将来を見据えた取り組み」に注目してほしいと呼びかけた。

 オルセン氏とケアンズ観光局セールス&マーケティングマネージャー・アジアの坂本サム氏による説明では、サンゴ礁の白化が報じられてきたグレート・バリア・リーフが国連教育科学文化機関(UNESCO)の危機遺産入りを回避するなど環境保全の取り組みが進められていることを紹介。

 また、グレート・バリア・リーフへのツアーの参加料金には環境保護税が組み込まれており、多くの旅行者が参加すればするほど調査や保全が進む仕組みとなっていること、モスマン渓谷などでは以前からアクセスを制限していること、さらに日本の海遊館との共同プロモーションなどが始まることも披露された。

 渡航者が増えれば環境だけでなく地域住民への負担も増えるのが課題だが、それについては非繁忙期の需要喚起に力を入れていく。また、「旅行中にもできることがたくさんある」との考えから様々な情報発信にも取り組んでいく計画で、すでに特設ページ「サステナブル・トラベルハブ」も開設している。

 このほか、9月15日からは「ケアンズ サステナ旅 プレゼント キャンペーン」も開始。Instagramをフォローしてケアンズに行きたい理由を投稿したユーザーのうち当選者に現地への旅行やホテル宿泊券などをプレゼントし、実際に現地でサステナビリティへの取り組みを体感してもらう計画だ。